- 算数科の目標
- 自分の考えを表現し、友だちの考えを理解しようとする子どもの育成
- 最後まであきらめずに粘り強く考える子どもの育成
初等科の算数の授業
基礎的・基本的な内容の理解と充実
高い山ほど、その裾野は広く広がっています。算数も、学習した内容を用いて積み上げていく教科ですので、土台となる基礎的・基本的な内容を、じっくり、しっかりと身につけさせていきたいと考えています。そのために、教員は、子どもたちに何を考えさせ、何を教え、何を習熟させるのかを常に意識しながら授業を組み立てています。
数学的な考え方や問題解決力の育成
数学的な考え方や問題解決力を育成するためには、単に知識を詰め込むのではなく、考えさせたり、話し合わせたりすることが大切です。そして、そのようにして身に付けた数学的な考え方や問題解決力が後の学習の基礎・基本となり、また、粘り強く考えるための道具ともなるのです。
学びあい
友だちに自分の考えを理解してもらえた時や、自分が友だちの考えを理解することができた時の喜びは、学ぶことの楽しさにつながります。そして、学びあいの活動を通して、自分の意見に対するほかの子どもたちの反応に気づいたり、自分が考えつかなかった見方、考え方に触れたりすることによって、子どもたちの算数の力が高まります。
基礎的・基本的な内容の理解と充実の授業
「1分間に歩ける距離はどれくらいだろうか。」
と、問いかけてみました。子どもたちは、「長さ」の学習や体育の授業で行われた50m走などの経験から考え始めます。
ノートには、
「1分間に歩ける距離はどれくらいか。」
という問いに対して、様々な数値が並びました。いちばん短い距離が「3m60cm」で、いちばん長い距離が「600m」です。
教室の黒板の横の長さが約4mなので、
「これだけ歩くのに1分かかりますか。」
と言うと、もう少し長く歩けることに気づきます。
また、初等科の正門から四ッ谷駅までは約500mの道のりがあるので、
「正門から1分間で四ッ谷駅に行けますか。」
と言うと、1分間ではこれほどは歩けないことにも気づきます。
今回、「距離」と「時間」という異なる単位の量を同時に扱いました。「距離」は目に見えますが、「時間」は目には見えません。このため、混乱した子どももいました。

そのあと、新幹線やロケット、カタツムリや亀が1分間にどれくらい移動できるのかということを子どもたちに話しました。
また、北京オリンピックの水泳競技で2つの金メダルを獲得した北島康介選手の話をしました。北島選手は、平泳ぎで100mを約1分間で泳ぎます。これは、言い換えると、10秒間で約16m70cm泳ぐことになります。
この長さを子どもたちに10秒間で歩かせてみました。3年生ではかなりの早足が必要となります。この体感をした後、子どもたちは北島選手の泳ぎの速さに驚いていました。
このようにして、実際に体験することで子どもたちの量感が育っていくのです。

棒グラフでは、人数を読み取ることはできますが、それぞれの割合はすぐにはわかりません。そこで、全体を100%にそろえた帯グラフを作り、割合を考えていきます。
それぞれの割合を求めるために、
「割合 = くらべられる量 ÷ もとにする量」
の式に当てはめて計算をします。そこで出た割合を百分率に直し、帯グラフにかき入れていきます。基本的なグラフのかき方は、すでに4年生までの棒グラフ、折れ線グラフを通して学習しています。しかし、5年生のこの単元でも、目盛りのよみ方や線の引き方、項目の書き方などといった基礎的・基本的な事項をもう一度確認していきます。また、棒グラフや折れ線グラフ、帯グラフ・円グラフのそれぞれの特徴を考え、どのようなときにどのグラフを使うと便利かということも判断できるようにします。
このように基礎的・基本的な学習を徹底していくことが、有意義な学びあいや、数学的な考え方を伸ばすことにつながるのです。
数学的な考え方や問題解決力の育成の授業
「3本の直線で囲まれた形を三角形という」という学習をした後、図のような9つのドットの書いてあるプリントを配り、
「この中の点と点を結び、3本の直線で囲まれた形を作ってみましょう。」
と問いかけました。点がたくさんあるので、結び方によっていろいろな三角形ができるはずです。子どもたちは、目を輝かせて、いくつもかいていきます。
しばらくして、子どもたちが考えたものの中から1つを発表します。皆、自分の順番がまわってくるのをどきどきしながら待っています。
「あれとあれは、同じ形じゃない?」
「場所が違うだけ。すーっとずらせば同じ形。」
「僕のは、くるっと回すとあれと同じになるような気がする。」
「裏返すとこれと同じ。」
「ぱたんと倒せばいいんじゃない……?」
全部出そろったところで、また新しいことに気づきました。

二等辺三角形に気づいています。
「この三角形を2つ合わせるとこちらの三角形になります。だから親子みたい。」
「これのこの部分をぐーっとひっぱるとこちらの形になります。だからこれは兄弟みたい。」
「これは、この三角形の4つ分じゃない?」
「この三角形とこの三角形は、形は同じだけど大きさが違う……。」
こうしてまた新しい観点を見つけ、発表しあい、だったらこれとこれも……と言いながら、皆で仲間分けをしていきました。
辺の長さや角の大きさという観点だけでなく、裏返しの合同や対称性、相似など、低学年児童でも各自がそれぞれの観点から自分なりに考えています。説明し、互いに認めあう中で、数学的な考え方が育っていくのです。
×
=
から、
を求めるために、
÷
をしようとしているところです。「
倍が
ℓだから、
倍を求めるために3で割ります。それを4倍すれば、答えが出ます。」という発言がありました。
「それは、
÷3×4という式で表せます。」と別の子が言いました。
けれども、その考えがよくわからない子どももいます。
「式を図で説明することはできませんか。」
ときいてみると、
「あっ、わかった。その式のやり方が、図にかいてある!」
と、何人もが気付きました。図で考えた子どもの図を使うと、式の意味がわかったのです。
「3で割る、というのは、
ほかの子どもも、
「元の量は、その4つ分になります。」
と付け加えます。すると、多くの子どもたちが、
「わかった、わかった。」
と声をあげました。
この後、ほかの図や数直線が発表され、式と図を結びつける発表がいくつもありました。
図や式を使って、自分でわけを説明しようすること――これも、数学的な考え方です。
考えを共有するために、話し合いをします。話し合いの中で、いくつかの考えが結びつき、子どもたちの考えはより高度に、そして論理的になっていくのです。
学びあいの授業
■1年生の「たしざん・ひきざん」の授業です。
公園で遊んでいる子どもたちの絵を見て問題を作り、解いていきます。子どもたちは、どのような問題を作ろうかと一生懸命考えます。足し算の問題を作った児童は、次は引き算、と楽しそうに問題を作っていきます。そして、友だちが作った問題について、どのように解いたらよいかを考えます。
「バドミントンをしている人が4人います。ドッジボールをしている人が8人います。ちがいは何人ですか。」
「ちがいは」という言葉で、引き算だということはわかりましたが、「4-8」「8-4」と2つの式が発表されました。
「初めに出た数を先にもってくるから。」
「引き算は数字の出てくる順番は関係ない。」
「でも、引けないと式にならない。」
など、いろいろな意見が出てきて、
「ちがいは、大きいほうから小さいほうを引く。」
「8-4が正しい。」
という結論になりました。
これでできたかと思えば、答え方でも意見が分かれました。
「ドッジボールをしている人の方が4人多い」と答えるか、「4人」と答えるか。
「丁寧に答えたほうがいい。」
「長く答えるときは、『どちらがどれだけ多いでしょう』という問題のときだけだ。」
「教科書の前のところで、『ちがいは』の問題は『4人』というように簡単に答えていた。」
など、具体的に例を出しながら意見を発表する子どももいました。
友だちの考えを聞き、自分の意見を述べるという学びあいの活動を通して、理解を深めていきます。
「バドミントンをしている人が4人います。ドッジボールをしている人が8人います。ちがいは何人ですか。」
「ちがいは」という言葉で、引き算だということはわかりましたが、「4-8」「8-4」と2つの式が発表されました。
「引き算は数字の出てくる順番は関係ない。」
「でも、引けないと式にならない。」
など、いろいろな意見が出てきて、
「ちがいは、大きいほうから小さいほうを引く。」
「8-4が正しい。」
という結論になりました。
これでできたかと思えば、答え方でも意見が分かれました。
「ドッジボールをしている人の方が4人多い」と答えるか、「4人」と答えるか。
「長く答えるときは、『どちらがどれだけ多いでしょう』という問題のときだけだ。」
「教科書の前のところで、『ちがいは』の問題は『4人』というように簡単に答えていた。」
など、具体的に例を出しながら意見を発表する子どももいました。
友だちの考えを聞き、自分の意見を述べるという学びあいの活動を通して、理解を深めていきます。
「道が通っている畑があります。畑の部分だけの面積を求めるにはどのようにしたらよいでしょう。」
という問題を考えています。道を寄せて考えたり、土地の面積から道の面積を引いたりといったいろいろなアイデアが出てきました。自分が考えた方法を熱心にとなりの友だちに伝えています。ただ式を見せるだけではなく、その式の意味についても説明をしています。
その後、面積の求め方をクラス全体で発表しあいました。
「全体の長方形の面積は7×11で求められます。

とある子どもが説明したところ、
「なぜ、11+7は道の面積になるの?」
という質問が出ました。そこで同じ解き方をした子どもが、
「7は縦1m、横7mの長方形の道の面積で、11は縦1m、横1mの長方形の道の面積だからです。」
と補足の説明を加えました。すると、別の子どもが、
「2つの道には重なりがあるから、畑の面積を求めるには、長方形の面積から道の面積を引いた後で、2回引かれている重なりの部分の面積を足さなくてはいけない。」
という意見を出しました。
ひとつの問題を解くにも、意見を交わしたり、協力して説明したりするなど、活発な学びあいが行われています。


