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ゼミ教育:社会保障論

社会保障の課題を学ぶ 日本社会の現実に直面

経済学科の鈴木亘教授は、経済学の視点から長年、社会保障を研究している。社会保障や社会福祉制度が抱える課題を知るため、学生たちとともに、生活困難者が多く住む地区でゼミ合宿を毎年続けている。

1994年に上智大学経済学部経済学科卒業後、1998年まで日本銀行で勤務。1999年に大阪大学大学院博士前期課程修了、2000年に同後期課程を修了し、2001年に経済学博士号を取得。
東京学芸大学教育学部総合社会システム専攻准教授、学習院大学経済学部経済学科准教授などを経て、2009年より同教授。専門は社会保障論、医療経済学、社会福祉の経済学。

あいりん地域は大阪市南部の西成区にある。地下鉄、JR、私鉄が走り、交通の便は良い。地域のすぐ近くには、大阪の観光スポットの一つである通天閣がそびえ立つ

あいりん総合センターを見学する鈴木ゼミ一行。手前に並ぶペットボトルや缶は、臨時夜間緊急避難所(通称シェルター)に入るための順番取りのために置かれ、一つひとつに持ち主がいる

「百聞は一見に如かず。住民たちとの触れ合いを通して、日本社会が抱える課題を知ってもらいたい」

経済学科の鈴木亘教授は、大阪のあいりん地域でのゼミ合宿の意義をこう語る。鈴木ゼミでは毎年9月に同地域でのゼミ合宿を実施している。

あいりん地域とは、大阪市西成区のJR大阪環状線・新今宮駅の南に位置するドヤ(簡易宿泊施設)街のこと。日雇い労働者の就労する場所(寄せ場)があり、今も「釜ヶ崎」とかつての地名で呼ばれることもある。生活保護受給者やホームレスなど、生活困難者が多く住む地域だ。

鈴木教授は「今の学生はお金に困った経験が少ないでしょう。そんな学生にこそ、日本にはその日の生活にさえ困る人々がいることを忘れないでほしいのです」と言う。

住民が案内する見学ツアーに参加

2012年9月10日、鈴木ゼミの3年生のメンバーが、あいりん地域にある大阪市立大学西成プラザに集合した。「大阪・釜ヶ崎(あいりん地域)のまちスタディーツアー」と銘打ったツアーはまず、財団法人西成労働福祉センターの元職員であり、釜ヶ崎のまち再生フォーラムの事務局長も務める、ありむら潜せん氏による事前学習から始まった。

ありむら氏は、「犯罪率は大阪市内で5、6番目で、最も危険というわけではない」「最盛期は2万人の労働者が集まっていたが、現在は1300人程度に減っている」など、あいりん地域の基本的な知識を学生に解説した。

そしていよいよ、学生たちはスタディーツアーに出掛ける。まずは、求人の場であり多くの住民が集まる「あいりん総合センター」を訪問。住民が日雇いの仕事を得る方法、仕事に役立つ技能講習の受講の仕方の説明に耳を傾けた。

その後、臨時夜間緊急避難所(通称シェルター)、「こどもスポーツ広場」を見学し、炊き出しが行われる四角公園と三角公園も見学した。

現場を見て、話を聞いて問題意識を持つ

声を掛け、話を聞くのが関係を築く第一歩

この日は最後にサポーティブハウス「おはな」に集まった。サポーティブハウスとは、元ホームレスの人々などが入居するサポート付き共同住宅のこと。あいりん地域の住民は高齢化が著しく、また単身者が多い。このため、自立した生活を確立するために、サポートを必要とする人も多い。そこで、スタッフがさまざまなサポートを提供し、そのうえで入居者同士でコミュニケーションが取りながら、安心した生活を実現してもらうために設けられた。

ここで学生は、街を案内してくれた3人の住民が、これまでどのように生きてきて、この街に住むようになったのかについて説明を受けた。半生を語ってくれた3人に対して学生は活発に質問し、予定時間を大幅に超えてようやく終了した。

翌9月11日はまず、あいりん地域に住む元ホームレスの住民が結成した紙芝居劇団「むすび」の公演を鑑賞。むすびは、紙芝居に歌と踊りを取り入れた画期的なスタイルで知られ、年間30回以上の公演をこなし、2007年にはロンドンでの公演も果たした実力派劇団である。鑑賞後、ゼミ生全員が「熱い演技に元気をもらいました」「予想外のところで笑えたのが生の演技ならではで、面白かった」と熱心に感想を述べていたのが印象的だった。

鈴木教授は対話を深めることの重要性を説く。「あいりん地域の住民たちは孤立しがち。まず声を掛け、話にじっくりと耳を傾けることが、関係を築くための第一歩です」。


紙芝居劇団「むすび」は、歌と踊りも織り交ぜて見る者を作品の世界へと引き込む(上)。 サポーティブハウス「おはな」では、あいりん地域になぜ住むようになったのかを住民に聞いた(下)


あいりん総合センターの近くにあるシェルターで、実際に利用したことがある元ホームレスの住民の説明を聞く学生たち。最近、若い人の利用が増えているという

現場に行き、話を聞き、真実を知る

ゼミ生の田中章友さんは、今回のツアーをこう振り返る。「両親が大阪出身で、あいりん地域については昔から話を聞いていました。例えば三角公園が話題に出たり。『近づいてはならない』とさえ言われたこともありましたが、実際に街に入ると、びくびくしていると逆に不審感をもたれると感じました。ある住民の『親や親戚から勘当されたのでやむなくこの街に来た』という話に胸が締め付けられました。
皆さん一生懸命に生きているんだなと」。

影山鉄さんは、「『四角公園での炊き出しは、昔は並んでももらえないこともあったが、今は必ずと言っていいほどもらえる』と教えてくれました。実際に現場を見て、そこに暮らす人々の話を聞いて真実を知ることの大切さがわかった気がします」と感想を述べ、今後の学び方のヒントを得たようだ。

木村吏那さんは、旅行で大阪を訪れたことはあるが、あいりん地域のことは知らなかったという。「あいりん総合センターに若い人が少なからずいたことに驚きました。また、外国籍の住民もいると聞きました。一人ひとりがこれまでどのような人生を歩まれてきたのか、もっと色々なことを知りたくなりました」。

鈴木教授は西成区の課題解決のため、大阪市の特別顧問として「西成特区構想」を率いている。「今後も社会の隅を照らす研究を続けていきたい」。鈴木教授はきっぱりと言う。

「貧困は経済活動の結果から生じる現象ととらえられます。社会保障が充実していれば、ホームレスが増えることはないはずです。しかし現実は違いました。どうしてそうなのかという疑問が、社会保障論を経済学の視点から研究しようと思ったきっかけです。学生にも、問題意識をもって勉強をしてほしいですね」


ゼミ生たちはありむら潜氏による事前学習を受けてから、スタディーツアーに出た。ありむら氏は漫画家としても活動しており、「カマやん」というキャラクターを使ってわかりやすく説明した



スタディーツアーの感想を語る鈴木ゼミの田中章友さん、木村吏那さん、影山鉄さん(上から)。3人ともあいりん地域を訪れたのは初めて。日本社会が抱える問題に直面し、それぞれが衝撃を受け、考えさせられるツアーになったようだ

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