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大石慎三郎先生の思い出

 

学習院大学史料館 生     

 

 

大石慎三郎先生は,大学史料館が開設された昭和50年から9年間にわたり,館長をおつとめになりました。経済学部教授として多忙を極めていらしたにもかかわらず,創設期にあった史料館の研究基盤を確立すべく,史料収集,研究紀要や史料集の刊行,展示の開催と文字通り奔走され,館としての活動を精力的に進めて下さいました。

史料館が一般的な歴史史料だけではなく,経営史料,法制史料,博物資料,大学関係者史料と多岐にわたり収集保存することになったのも,この時期の大石先生のご尽力によるものです。昨今の大学博物館設立ブームが起こる25年以上も前に,大学関係者の史料やコレクション,学校教材等を積極的に収集し,大学博物館の先駆けとなる基礎を学習院大学が築いたことは,大石先生の先見の明によるところが大きいと思います。

余談になりますが,大石先生は大変美食家であり,ゼミ旅行も巡見も「おいしいものを食べる」という嬉しいおまけがついていました。そんな大石先生がある日おっしゃった「太平山のつくねはおいしい」との言葉に,疑問を抱きながらも皆で連れ立ってつくねを食べに行き,さすがは大石先生と感激したことが昨日のことのように思い出されます。

大学附置研究施設として,また学内唯一の博物館相当施設として,今後史料館が必要とされる役割をきちんと果たしていくことが大石先生への恩返しになろうかと思います。何事に対しても真摯に取り組んでいけるよう,遠くから見守って下さることを願ってやみません。

最後になりましたが,大石先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。