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大石慎三郎先生を送る

 

学習院大学経済学部長 杉     

 

 

故大石慎三郎教授は昭和38年に当時の本学政経学部に赴任され,その後31年間の長きにわたり本学の教育,研究に携われた。昭和58年からは2期,4年にわたって経済学部長・経済学研究科長の要職を勤められた。また,昭和50年に学習院大学史料館が開設されると,10年間の長きにわたって館長の職にあたられた。

大石先生の研究対象は主に江戸中期であり,この時代の農業政策,貨幣政策,市場構造,商品流通などを多面的に分析され,幕藩体制の解体と動揺の過程を明らかにされた。また,これまで通説として理解されていた諸改革や治世について,ひとつひとつ検討され,江戸時代の全体像把握に新たな視点を提起された。

先生は,数多くの著作,論文を執筆のかたわら,地方史編纂にも従事され,さらにはNHK大河ドラマの時代考証なども勤められた。その活躍はきわめて幅の広いものであった。先生の学術研究,教育の業績については社会的にも高く評価され,安倍賞(学術賞),愛媛県教育文化賞などを受賞された。

本号は,故大石慎三郎教授の本学のみならず,広く学界,社会に貢献された遺徳をしのび,ここに特別号として刊行するものであります。