研究活動実績

01 ワーク・ライフ・バランス GEMの活動例として、ワーク・ライフ・バランス(WLB)プロジェクトを紹介します。

プロジェクトの意義と事業内容

「生活(ライフ)とのバランスがとれる働き方(ワーク)をつくる」というのがワーク・ライフ・バランス(WLBと省略することにします)です。
活力ある社会をつくるうえで重要であるということで政府の重要な政策になっています。少子高齢化のなかで労働力不足が懸念され、多くの女性や高齢者に労働の担い手になってもらう必要がありますが、そのためには女性等にとつて働きやすい職場環境を整備する(つまりWLBを実現する)ことが求められているからです。会社にとっても、WLBが重要な経営課題になっています。出産や育児との両立が難しいために多くの女性社員が退職するようでは、長い時間かけて育成してきた貴重な人材を失い、競争力の低下につながるからです。
このような社会あるいは経営上の課題の解決に貢献するために、WLBプロジェクトを組織化しました。プロジェクトの第一の事業は、WLBをどの程度実現できているかを自己評価するための「自己診断システム」を企業等に提供し、活用してもらうことです。これまで多くの企業に活用してもらっていますが、そのさいには、自己診断システムの使い方にとどまらず診断結果の分析方法等についての協力も行っています。なお、同システムは資生堂、ニチレイ、IBM等のWLB先進企業で組織するワーク・ライフ・バランス塾と共同開発したものです。
第二の事業は、自己診断システムを活用した企業からデータを収集しデータベースを構築することです。このWLBデータベースは、自己診断システムを活用した企業に対してWLBの社会的相場を知ってもらうためのベンチマーク・データを提供するために活用されています。第三の事業は、出版や会議の開催等を通してWLBの啓蒙活動を行うことと、WLBデータベースを活用して研究成果をあげることです。

自己診断システムの概要について紹介します

アンケート票

企業がWLBに取り組み、成果を実感するには、育児休業等の施策を立案し、それを社員が活用することによって仕事と生活のバランスが実現し、それを通して経営パフォーマンスが向上するという一連の流れを体系的に評価することが必要になります。自己診断システムはそれを可能にする仕組みとして開発されています。ですから、会社が同システムを活用して自己診断すれば、自分の強みと弱みは何で、WLBを改善するには何をすべきであるのかが分かります。

 自己診断は会社と社員を対象にしたアンケート調査の結果に基づいて行われますが、そのためのアンケート調査票はつねに改善されています。さらに会社等の多様なニーズに対応できるように大企業版、中小企業版など複数の種類が用意されています。看護士等の特定の職種や業界に対応した調査票も作られています。

自己診断システムはこれまで多くの企業等で活用されています。大企業はニチレイ、資生堂など、中小企業は東京都WLB認定企業など多数ですし、日本看護協会等の医療機関にも活用されています。

WLBを知ってもらう本を出版しています

経営戦略としてのワーク・ライフ・バランス
経営戦略としてのワーク・ライフ・バランス
ワーク・ライフ・バランス推進マニュアルワーク・ライフ・バランス推進マニュアル

WLBの重要性と自己診断システムについて社会に広く知ってもらうために書籍を出版しています。一つは、WLBが企業経営にとって重要な戦略分野であることを理解してもらうこととともに、自己診断システムの活用方法を知ってもらうための『経営戦略としてのワーク・ライフ・バランス』(第一法規㈱、2008年)です。自己診断システムは内容を全て公表し自由に使ってもらうという考え方で開発されているので、この本を読めば誰でも自己診断システムを利用することができます。

自己診断システムの結果をみて企業は何を、どのようにすればいいのか。とくに中小企業からは、WLBの重要性は分かるが、具体的にどうすればいいのかが分からないという声が多く寄せられてきました。そこで、『ワーク・ライフ・バランス推進マニュアル』(第一法規㈱、2010年)を出版しました。自己診断システムを活用しながら、ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、どのような手順で何をすればいいのかが簡潔にまとめられています。WLBのための管理活動マニュアルといえる内容です。とくに多くの中小企業の方々に活用していただけると期待しています。

なお、WLBデータベースを活用した研究論文がプロジェクト・メンバーによって公表されています。学習院大学はWLB研究のセンターの一つになりつつあり、この面からも社会で注目されています。

WLBの先進的経験を共有するためのカンファレンスを開催しています

公開カンファレンス

社会のいろいろな分野でWLBを実現するための取組みが行われています。その先進的な経験を多くの方に知ってもらい、それを通して日本全体のWLBの底上げをはかる。こうしたねらいをもって、年1回の頻度で公開カンファレンスを開催しています。
2008年は『経営戦略としてのワーク・ライフ・バランス』の出版を記念して、日本労働組合総連合会長の高木剛氏等をお招きして開催しました。2009年は「中小企業のWLB」、2010年は「勤務医・看護士のWLB」がテーマです。いずれの年も数百名と多くの方に参加いただき、活発な議論が行われています。
さらに小規模ですが、研究者を中心にWLBの研究セミナーを定期的に開催しています。WLB研究について、学外の研究者と交流をするための貴重な場になっています。

「ワーク・ライフ・バランスを実現する企業支援システムと雇用システム」プロジェクト成果報告一覧

  • 「アンケート調査」実施・分析グループ
  • 「海外調査」実施・分析グループ
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    学習院大学