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教員スタッフ紹介

川嵜 克哲 教授 臨床心理学

<主要著書・論文>
「夢の読み方 夢の文法」講談社 2000
「風景構成法の事例と展開」誠信書房 2002
「臨床心理査定技法2」誠信書房 2004
「夢の分析-生成する〈私〉の根源」講談社 2005
「セラピストは夢をどうとらえるか」誠信書房 2007
「心理療法と因果的思考」岩波書店 2001
「箱庭療法の事例と展開」創元社 2007


<研究分野>
 心理療法の実践と理論化が研究分野ということになるでしょうか。具体的には夢分析、箱庭療法、描画などを「通路」として、心理療法というものを探求しています。その根っこのところにある関心は「心理療法とはそもそもなんなのか?」ということです(さらなる根底にあるのは「人が生きるということはどういうことなのか?」になるかと思います)。これらのことがらの具体的な立ち現れは、私の専門分野の中では、まず来談者の方の悩みや症状という姿をもって現象することになります。もちろん、オーソドックスに考えるならば、心理療法とは、そのような悩みや症状の解消を目指すものということになります。実際、うまくいった心理療法では来談者の方の悩みが解消したり、症状がなくなります。しかし、むずかしいのは(また、そこがかつ魅力であり、さらにいえば、人の生がそもそもそういうものであるとも思うのですが)、心理療法の場合、そういった変化を目的としてそれを目指そうとすること自体が心理療法のプロセスにリフレクトしてくる構造にならざるをえず、それゆえ、単純でリニアなプロセスを考えるわけにはいかないことです。簡単に言えば、悩みなり症状なりを消し去ろうとするこころの動き自体が、目指している方向の邪魔をするということです。
 最初に述べた、「通路」としての夢や箱庭、描画などといった「イメージ」に私が関心がある理由もそのあたりにあります。来談者の方(の悩みや症状)を対象化し客観化することで、クリアな輪郭を得て、操作的に手を打っていくというパラダイムに心理療法はなかなかなじまない。どうしても、そこに、(来談者と心理療法家との)「関係性」という、はなはだやっかいなことがらが入ってきてしまいます。でも、そこがまた魅惑的でおもしろいところではないかと思っています。

<私の授業・ゼミ>
 臨床心理学という学問は、そもそも、実際の治療という実践から生まれてきた学問です。ですので、講義では、まず、具体的、個別的、実際的なことがらを検討し、その中から普遍的、理論的なことをつかんでいきたいと思っています。臨床心理学の歴史的・方法論的な特徴や、それが生まれてきた文化的、人類学的な経緯も含めて、その諸概念や諸体系を概観しつつ、実践的な側面についても触れたいと思ってます。
 ゼミはある程度少人数で構成されるので、上に述べたような、具体的、実際的なことがらをできるだけ、受講生の方に体験してもらった上で、その体験から見出される意味、構造、理論などを検討していきたいと思っています。具体的には、実際の事例などの素材を使用したり、また投影法的な心理テストや描画、箱庭、ロールプレイをしていく予定です。
 具体的で体験的な関わりと、そこから抽象化し、理論化していく方向性が相互交流的に互いを深め合っていく、そのような「運動」が個々の受講生の方の内に生じるとよいなと思っています。
 臨床心理学は〈私〉という個別的な側面が重要になってきますが、狭い意味での主観に陥るのではなく、また、〈私〉という個別性を消し去った上での普遍性にすぐに移行してしまうのでもなく、〈私〉という個別性を保ちつつ普遍性を探っていくという作業をそれぞれの受講生の方が探求していけるような授業になればと思っています。

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