修了生座談会2011 | 学習院大学 法科大学院

修了後のこと - 修了生座談会

修了生座談会 2011

司法試験合格者 座談会 2011

平成23年度新司法試験合格者が野坂泰司教授を囲み、
法科大学院での日々を振り返るとともに、法曹としてのそれぞれの展望を語り合いました。

一流の教授陣が施す
密度の濃い少人数教育が魅力

野坂
平成23年度新司法試験合格者のうち、5名の修了生がお集まりです。法科大学院で勉強に励まれた日々を振り返り、合格に至った要因を分析していただきたいのですが、まずは皆さんが法曹を志された動機、また学習院大学法科大学院で学ぼうと思われた理由についてお聞かせください。
中野
高校時代に、将来は人のためになる仕事に就きたいと漠然と思うようになりました。ちょうどその頃、司法制度改革による法曹人口の拡大がなされようとしていることもあり、じゃあ弁護士を目指そうかと法学部へ。自分が法曹に向かないようなら普通に就職をすればよいという軽い気持ちでしたが、大学で法律を学んでみると、実際に社会で起きている問題を分析して解決策を導く民法が特に面白く、本気で弁護士になりたいと考えるようになりました。学習院を選んだのは、一流の教授陣による少人数教育を受けられるからです。同じキャンパスで学部時代を過ごしたこともあり、自分にとって最適な学習環境だと思いました。
石藤
私は一般企業で働いていたのですが、女性にはなかなか裁量が与えられない職場で、補助的な業務が多いことに不満を感じていました。たまたま親戚に弁護士がいたことから、男女の別なく自分の力を存分に発揮できる法曹の仕事に魅力を感じるようになり、会社に勤めながら予備校に通った後、法科大学院への進学を決めました。学習院には、法学部出身ではない私でも法律書の著者などとして存じている高名な教授がたくさんおられ、そのような先生方から親身な指導を受けられることに期待しました。駅から近くて通いやすく、緑豊かなキャンパスが快適そうだったことも、この大学院を選んだ理由のひとつです。
松井
小学生の時にテレビドラマで見た弁護士や検察官の姿に憧れを抱いて以来、将来の職業として法曹を意識するようになりました。高校時代に刑事裁判の傍聴をしたところ、弁護士が被害者の分身となって戦い、検察官が被告人の心情を汲みつつ刑事処分を考える様子に感銘を受け、法曹になりたいという思いをさらに強くして法学部に入学。法科大学院では、個々の学生に先生の目が行き届き、いやでもしっかり勉強せざるを得ない環境に身を置きたいと考えました。他力本願的ではありますが、それが少人数制の学習院を選んだ一番の理由です。
川竹
大学卒業後に就職した会社を辞めた後、法律関連の本を読んでみたらとても面白く、旧司法試験を受験しようと予備校に通ったのですが、結婚を機に勉強を中断。育児もあってしばらくは普通の主婦をしていたのですが、再び一から勉強するつもりで法科大学院への進学を決めました。この大学院で学ぶことにしたのは、私も少人数教育に魅力を感じたからです。
栗田
私は大学のゼミで会社法を学び、人々の経済生活の基盤となる企業の法律問題に関心を抱くようになりました。企業は多くの人との様々な法律関係を有するので、その法律問題を解決することは、広く社会の役に立つことにつながります。そこで、将来は企業に関わる多くの人々のニーズに応える仕事をしたいと思うようになり、弁護士を志すことを決めました。学習院の大きな特色は、全国的にトップクラスの教授陣による少人数教育です。この二つの条件を備えた法科大学院は、他になかなか探せません。また、先端的な法律分野を学べることをアピールする大学院が多い中、学習院は基礎を徹底して教えることを謳っており、実務家になってからも活かせる法的思考能力がしっかりと身につけられることに期待しました。
野坂
皆さんがおっしゃるように、少人数教育は学習院大学法科大学院の最も大きな特色の一つです。法律学の勉強ではとりわけ積み重ねが大切なので、私たちは学生ができるだけ教員に近いところで、常に自分の理解度を確認しながら学べる学習環境を提供したいと考えています。栗田さんが挙げられた基礎の徹底については、発展的な分野に取り組む前にまず基本科目をきちんと学んで欲しいということです。基礎を固めずして応用的な分野は理解できませんし、法律実務家となってからも力を発揮できないでしょう。ここにおられる皆さんが私たちの意図する教育方針をよく理解されてこの学習院大学法科大学院を選ばれたことを、大変嬉しく感じます。

法律実務家としての
基礎能力を高めるカリキュラム

野坂
どんな授業が皆さんの印象に特に強く残っていますか。まずは未修者として入学された川竹さんにおうかがいします。
川竹
入学直後は岡孝先生の「民法」がほぼ毎日あり、各自が民法をひと通り勉強していることを前提に、先生から鋭い質問がなされました。私を含め多くの学生はせいぜい教科書を一読している程度なので満足に答えられず、授業時間外に集まってみんなでわからないところを話し合ったりしながら最初の1カ月を乗り切ったことを覚えています。とても大変でしたが、そのおかげで民法のみならず、法科大学院での勉強のしかたが自然と身についた気がします。1年次の「刑法」も思い出深く、西田典之先生はご自身の著された教科書に沿って一から解説してくれ、学生の理解度が足りないところがあれば授業時間内に復習の時間も設けてくださいました。発言機会が均等になるよう15人の席順が毎回入れ替えられるため教室には常に緊張感が漂い、民法とはまた違う形で1年次に基礎固めをすることができました。
野坂
私たちには、未修者の皆さんが出来るだけ早く既修者と肩を並べるレベルになって欲しいという思いがありますが、急いで詰め込み過ぎてついてこられなくなる学生が出ることを防ぐため、今は川竹さんが入学された当時ほど1年次で「民法」を集中的に履修するようにはなっておらず、法律を初めて学ぶ学生を前提としたカリキュラムが組まれています。最近は法学部出身の学生が未修者コースに入学するケースが増えていますが、例えば「起案等指導1・2」では法律書や判例の読み方から手ほどきし、本当の意味での未修者が安心して学べ、なおかつ1年間でかなりのレベルアップができるように工夫をしているつもりです。
栗田
「起案等指導」は、法律家に必要な論理的な文書をまとめる能力を高めるための実践的な訓練の場となっていたという点で、非常に印象深いですね。論点の整理の仕方、表現法など、先生から指摘されて初めて気づく自分の多くの欠点を改善することができました。
中野
「起案等指導」は半期ごとに異なる先生から指導を受けられるのが魅力です。例えば渡部晃先生の授業では、民法を中心にたくさんの判例を巡って全員でディスカッションを繰り返しました。法科大学院で厳しい議論を経験することは、実務家となってからもためになるはずです。
石藤
私は3年次の後期に能見善久先生の「起案等指導」で民法の基本的な概念についての質問を受けて端的に答えられず、大きな危機感を抱きました。先生に相談したところ、「あなたのようなレベルの学生を合格させるのが私の使命だ」とおっしゃり、親身になって具体的な助言をくださいました。そうしたフォローを受けていなければ、新司法試験合格はなかったかもしれません。
松井
私が最初に履修した「起案等指導」は、野坂先生のクラスでした。その授業では、課題に従って各自まとめたレポートの内容を全員で議論し、考えを深めてから書き直します。野坂先生はそれを添削し、さらに個人面談の際に改善すべき点を指摘してくれるという、実に丁寧な指導をしてくださいました。自己流だった勉強法を改めることにもつながり、入学直後にそのような授業に巡り合えたのは本当に幸運だったと思います。
野坂
「起案等指導」と並ぶ学習院ならではの特長的な科目として、「公法演習」を挙げることができます。憲法が専門の教員と行政法が専門の教員が2名同時に教壇に立って教えるという授業は、他の法科大学院ではまず見られないものだと思いますが、こちらはいかがでしたか。
川竹
憲法と行政法は学問としては分かれていても実際の裁判では分かれておらず、両者のつながりをよく理解することができました。また、授業では憲法と行政法の先生の意見が微妙に違っていて、そのことによっても公法というものについて深く考えさせられました。
松井
憲法だけを勉強していると抽象的な議論になって具体的な事件から離れがちですが、憲法問題が持ち出されるのはたいてい行政事件においてです。ある行政事件の全体を「公法」という視点で見通す機会は、他ではなかなか得られない貴重な機会でした。
石藤
「公法演習」ではよく「判例を一審から読め」と言われました。『判例百選』に載っているような最高裁の判旨だけでは、事案の具体的な内容まではわかりません。新司法試験の「行政法」では提示された事情から何を拾い上げ、憲法上どのような権利があって、行政法上どう救済されるべきかが問われますが、判例を一審からしっかり読む訓練をしていたからこそ対応できたという気がします。本番の試験中、「公法演習」の授業風景が脳裏をよぎりました。
栗田
私が履修した授業でも、判決文を緻密に読むことが重視されました。裁判官が練りに練ってまとめた判決文は、表現の一つひとつに重要な意味や意図が含まれているはずです。判決文をしっかり読む、言葉を大事にするという法曹に欠かせない姿勢を、「公法演習」によって培えました。
野坂
公法系の授業は司法研修所でもほとんど行われないようなので、その意味でも法科大学院で公法をきちんと学んでおくことは大切だと思います。他に印象に残っている授業があれば自由にご発言ください。
中野
私が法学部時代に民法を勉強した時に読んだのが、四宮和夫先生の書いたものを能見先生が改訂した『民法総則』でした。その能見先生の「起案等指導」や「民法判例研究」を履修したことは意義深く、特に3年次の「民法発展研究」では先生と学生による対話形式の授業が行われ、毎回発展的な議論を経験することができました。
栗田
長谷部由紀子先生と大島崇志先生(退任)が共同で担当された民事訴訟法の「判例演習」には、毎回ケースブックに記載された設問を各自が解いてきて臨みました。多くの文献にあたらなければならない設問ばかりで非常に苦労しましたが、そのために多くの基本書を熟読し、結果的に有効な試験対策ともなりました。その時の試行錯誤のプロセスが記されたノートは、自分にとって宝物となっています。
松井
元検察官の馬場義宣先生(退任)が担当された「刑事訴訟法」では実務家ならではの視点に触れられ、法学部出身の私には新鮮でした。全体として理論と実務のバランスがほどよく配されているカリキュラムも、この法科大学院の特長だと思います。
石藤
草野芳郎先生の「和解と交渉」では、裁判例をもとに問題が設定され、学生が両当事者やオブザーバーの役割を担当するロールプレイング形式で妥当な解決案を導き出しました。草野先生はかつて和解で有名な裁判官だっただけに、具体例を交えて説得力のある解説や指導がなされます。新司法試験に直結する内容ではないかもしれませんが、実際の法廷では和解も多く用いられるので、実務家となってから必要な力が養われる授業だと感じました。

自主ゼミが有効な
新司法試験対策となる

野坂
この法科大学院では正規の授業内で予備校で行われるような、機械的な答案練習は行いません。全ての授業が法律家として求められる基礎的な能力を養成する目的のもとに行われます。純粋な意味での試験対策については、授業とは別に個々の努力で手当てをしなければならないという一面がありますが、その部分についてはどのように対応されましたか。
中野
法学部出身の既修者といえども、入学時には基礎的な法律知識が不十分で、そこを自らカバーしなければ法的思考力を高めるための法科大学院の授業にはついていけませんし、事案から何が問題となっているのかを把握し、それを文章で表現する能力を問う新司法試験にも対応できません。実際の試験では定められた時間内で問題を解かなければならないので、そのための訓練をすることも不可欠で、それらが私にとっての中心的な新司法試験対策となりました。
松井
各科目は回数が限られているので、授業の内容は要点が絞られています。漏れてしまう部分がどうしてもあるので、私はそこを自分で補うことに気をつけました。また、中野さんが指摘されたように、試験時間に慣れるため2時間で答案を書くという練習を自主ゼミで行いました。もっとも私は授業についていくだけで精いっぱいだったので、自主ゼミへの参加は3年次の夏休み頃からと、かなり遅い時期になってからでしたが。
石藤
諸先輩の話を聞いて、合格するために押さえておくべきいくつかのポイントがあることがわかりました。自分の弱点を知り、それを修正する能力を身につけること。試験問題の出題意図を正しく読み取ること。何が出題されても即応できるように頭の中の引き出しを整理しておくこと。5月半ばの試験時期に体調もメンタルもピークになるよう調整することなどです。そのために自主ゼミを組織し、過去問の答案練習を中心に行って、普段から知識を整理しておくようにしました。
栗田
私も複数の自主ゼミに参加し、学内の定期試験や新司法試験の過去問を時間内に解いて答案を作成する訓練などを行いました。その年の新司法試験に合格した先輩や、既に法曹として活躍されている修了生の方たちに答案を見ていただけることもあるので、そうした機会を積極的に利用することも重要です。また、期末試験対策用に作ったノートに自分の弱点等を書き加えて発展させた新司法試験対策用ノートを設け、本番直前までそのノートを活用していました。
川竹
私も同様で、過去問を解いて答案の内容を検討するゼミなどに参加していました。合格された先輩などに答案を見ていただくことも多かったです。無事に合格することができたので、今は後輩を指導する側に回っています。
野坂
この法科大学院には、先輩から受験指導を受け、合格後は後輩の手助けをするというよい循環がありますが、実務家となった修了生をチューターとして迎え、もっと組織的な指導がなされる体制を構築できないかと検討しているところです。ところで、在学中は遅くまで学校で自習をされたと思いますが、自習室等の使い勝手はいかがでしたか。
松井
ほぼ毎日、閉館時間まで自習室を利用しましたが、不便や不自由を感じたことは全くありませんでしたね。
栗田
自習室は23時とかなり遅い時間まで使えます。24時間オープンの学校もあると聞きますが、逆に「閉館まであと1時間だからもうひと踏ん張りだ」というように、めりはりのある勉強ができた気がします。
中野
自習室のデスクに備え付けのパソコンで判例検索ができ、プリントアウトが無料で行えるのはありがたかったです。図書館の蔵書も非常に充実しており、貸出中の本があればわざわざ購入してくれることもありました。
野坂
法科大学院の主な機能は、中央研究棟の9~11階に集約されています。2010年に完成したばかりのこの建物が優れた学習環境を整えているのも、この法科大学院の特長の1つだと言えるでしょう。

法曹として実現したい
それぞれの夢

野坂
新司法試験に合格された皆さんは、司法修習を経て法曹としてのそれぞれの道を歩まれることになります。どのような法律家になりたいのか、抱負をお聞かせください。
栗田
弁護士として、倒産法や金融法など経営に直接関係する分野を扱えればと考えています。また今後は個人の相続問題が増加するはずなので、そのような分野にも関わりたいですね。いずれにせよ、より多くの人のニーズに応える法曹になることが私の目標です。新司法試験に合格するまでにいろいろな人に支えてもらったので、今度は自分が社会に恩返しをする番だと思っています。
川竹
私は利用者にとって敷居の低い弁護士活動、具体的には地域密着型の「悩み事相談」的な仕事をすることを考えています。あまりビジネスライクにならず、小さな問題なら相談をしたことで依頼者の気が晴れてくれればよい、法的な救済が必要であれば適切なアドバイスするという、そういう弁護士になりたいですね。
松井
私は検察官になることを志望しています。起訴・不起訴や量刑の決定については悩むことも多いと思いますが、法と証拠に基づいた公正な判断を貫くつもりです。検察が国家権力を乱用するところではないことを証明し、世間からの信頼回復に寄与したいという思いもあります。
石藤
私は大学の学部で中国語を専攻し、会社員時代は海外商品部に勤務しました。その知識や経験も活かして、例えばアジアに進出する日本企業をコンプライアンスや契約書の面でサポートするといった弁護士活動ができればと思っています。
中野
人のためになる仕事をしたいという思いで法曹を志すようになった私は、一般民事をはじめ幅広い事案を扱う事務所で、さまざまな案件を扱えるような弁護士になるつもりです。と同時に、法科大学院で学んだ倒産法にも強い関心を抱いたので、そちらの方面についても手がけてみたいと考えています。
野坂
皆さんがご自身の未来をしっかりと見通されていることを心強く感じます。今後は、後輩の指導にもぜひ力をお貸しください。これからのご活躍を心よりお祈りしております。

MEMBERS

司会進行
野坂 泰司 教授

東京大学法学部卒。東京大学法学部助手、立教大学法学部教授を経て、1994年より学習院大学法学部教授。2004年より学習院大学法科大学院教授。新司法試験考査委員。
石藤 紀子 2011年学習院大学法科大学院修了。東京外国語大学外国語学部卒。
一橋大学大学院言語社会研究科修了。
川竹 佳子 2011年学習院大学法科大学院修了。東京大学教養学部卒。
栗田 泰吉 2011年学習院大学法科大学院修了。一橋大学法学部卒。
中野 智輔 2010年学習院大学法科大学院修了。学習院大学法学部卒。
松井 拓弥 2011年学習院大学法科大学院修了。中央大学法学部卒。2009年学習院大学法科大学院修了。
鈴木 伸治 東京大学法学部出身。2010年学習院大学法科大学院修了。