修了後のこと - 修了生座談会

修了生座談会 2016

司法試験合格者 座談会 2016

念願の司法試験に合格した法科大学院修了生4名が青井未帆教授のもとに集結。学習院で過ごした充実した日々を振り返りながら、これから法曹をめざす学生たちに向けてのアドバイスや、自身の将来の夢などについて熱く語り合っていただきました。(インタビュー実施日:2016年10月6日)

法曹への夢、
「少人数制」への期待

青井教授
本日は今年の司法試験に合格したばかりの修了生4名にお集まりいただきました。皆さん、合格おめでとうございます。まずは、法曹をめざしたきっかけと、本法科大学院を選んだ理由を聞かせてください。
河野
中学で法律に興味を持ち、高校時代に弁護士になったOBの講演会を聞き、法曹が目標となりました。本法科大学院を選んだのは、「少人数制」であることがいちばんの決め手です。というのも私は未修者ですので、法律に関する知識不足など、不安はいろいろとありました。そんなときに法科大学院の合同説明会で本学の方とお会いし、「少人数制で先生たちとの距離がすごく近いので、不安はすぐに解消できますよ」という一言にとても魅力を感じました。入学してみて、まさにその言葉の通りだったな、と今では実感していますね。
福嶋
高校時代、友人がトラブルに巻き込まれた際、弁護士さんが法的根拠に基づいて友人を励ますと、安心してすぐに元気を取り戻したんです。その出来事が印象的で、「法律知識で人に安心を与えられる弁護士ってすごい」と将来の目標になりました。私がロースクールを選ぶ際に重点を置いた要素のひとつに、先生方の顔ぶれということがありました。学習院には、大学時代に愛用していた基本書の著者もいて、ぜひ、そういう先生方の授業を受けたいと思ったのが選んだ一番の動機です。
藤井
私の親は子供の私にも、身の回りで起こるトラブルに関して、包み隠さず教えてくれました。そのためか、子供の頃より自分なりにトラブルを解決して人の役に立ちたい、という思いがありました。中学で初めて弁護士という職業を知ったときに、「これだ」という直感めいたものがあって法曹をめざしました。私は大学も学習院なのですが、学部時代の先生方がそのままロースクールでも教鞭をとられています。先生方の授業がすごくわかりやすいことは、学部時代に体験していましたので、学部から一貫して引き続き教えていただきたいと本法科大学院を選びました。また、少人数制であることも重要なポイントでした。
青田
私はボランティア活動を通じて障がい者などと接していくうちに、社会には「法律でしっかりと守ってあげる必要のある方がたくさんいる」ということを痛感し、法曹をめざすようになりました。私は説明会の場でかなり多くの質問をしたのですが、先生方はとても親身になってくださり、すべての質問に丁寧にお答えいただけたことがとても好印象として残ったんです。そして「この先生方を信じて、自分の人生を預けてみたい」、そんなふうに強く感じて本法科大学院を選びました。
青井教授
多くの方が本法科大学院を選んだ理由にあげてくださる「少人数制」は、マンモス校にはない、大きな特徴のひとつです。「少人数制」を採用しているのは本法科大学院に限ったことではないと思いますが、重要なのはその成果だと思います。例えば、今年の司法試験の結果を合格率で比べてみますと、首都圏の少人数の私学では間違いなくトップクラスです。つまり合格率で評価するなら、本法科大学院の「少人数制」はとてもうまく機能していると自負しています。そして今年も皆さんをはじめ、多くの合格者を輩出できたことを、教職員一同、とてもうれしく思っております。

添削指導もマンツーマンで
きめ細かに

青井教授
では次に、皆さんが実際に入学してからの率直な感想を教えていただきたいのですが、まずは印象に残っている授業やゼミなどありましたらお聞かせください。
河野
私は人前で話すことがとにかく苦手でした。そのため本法科大学院が採用している、教授と対話形式で授業をする「ソクラテスメソッド」は、最初は正直、嫌だったんです(苦笑)。少人数ですから毎回発言しなければなりませんし。でも、そのおかげで徐々に苦手意識を払しょくできたことがありがたかったし、自分の成長につながったと感じています。この点は私にとっての少人数制の大きなメリットでした。また、課題に対する答案を先生に提出してご指導いただく「起案等指導」では、自分の文章に対して本当に細かくご指摘をいただきました。自分では伝わるだろうと思って書いていても、直さなければいけないことがいかに多いかを実感し、相手に伝わる文章作りをしっかりと学ぶことができました。
青井教授
印象に残った授業として「起案等指導」(現:法文書作成指導)をあげてくださる修了生が多くいます。現在の教育では、大学で卒論を書いた方は別にしても、論理的にしっかりとした文章を書くという機会は、小・中・高時代から考えても決して多くはないんですね。また、先生が学生の書く文章に対して、きめ細かな添削指導をするという機会も同じく少ないと思います。その点で本法科大学院は少人数制ですので、教員が中間や期末も含めたすべての学生の提出物に対してしっかりと目を通し、一人ひとりに対してきめ細かく指導していく体制、平たく言えば、“面倒見の良いロースクール”であると私も思います。
福嶋
答案に対する先生方の添削は大いに役立ちましたし、文章力がアップしたことは司法試験でも生きたと思っています。また授業では、大橋洋一先生の「行政法2」が印象に残っています。「行政法」は学部時代にも一応学んだのですが、よくわかっていませんでした。大橋先生の授業は進め方が特徴的で、理論から入るのではなく、まず「こういう困った方がいたとします」と実例から入っていきます。その困った人のケースデータで実際に行政法をどう使うのか、という判例ベースのスタイルで教えてくださいますので、学部時代はピンと来なかった行政法のイメージがすごく鮮明に描けるようになりました。授業展開も、学生の疑問を解決させることを優先した方式ですので、授業が終わる際にはいつも充実感がありました。
藤井
そうですね、大橋先生の授業は予習が前提で、あとは一問一答でどんどんあてられていきますよね。その場ですぐに自分なりの考えを説明するという、思考の瞬発力が養われましたね。その意味で私も、「ソクラテスメソッド」という授業スタイルは本法科大学院の特徴であり良さだと感じています。あと、能見善久先生の「債権法改正」も印象に残った授業です。能見先生は学生に質問をするとき、学生が自分で答えを導き出すまですごく粘り強く待ってくださいますし、学生の発言がややズレていても頭ごなしに否定しないんですね。もちろん間違っていれば、それを修正できるように一緒に考えてくれますし、発言する際に萎縮せずに自信を持って発言できる雰囲気を作ってくださっていることが素晴らしかったです。また、青井先生もおっしゃられましたが、中間・期末の答案なども添削されたものが返ってきますので、自分が文章作成において気を付けるべきポイントがわかりやすく、すごく勉強になりました。
青田
私にとっていちばん役立ったのは「模擬裁判」の授業です。学習院には民事・刑事の両模擬裁判があり、そこでは学生が弁護士役や被告人役を担当し、その発言等に対して先生からの指摘・指導がなされます。民事・刑事の両訴訟を実際に体験することで、その流れを体で覚えていけることがこの授業の大きなメリットになります。それまでに座学で得ていたやや抽象的だった裁判に関するいろいろな知識が、この授業を通してより確かな知識となって結実していくのを感じました。またこの授業においては、ケースの設定等のやや面倒な部分は先生方がお膳立てをしてくださいますので、学生側は問答等の裁判の実務的な部分に思考を集中させて取り組むことができるのも、すごくありがたかったなと思います。

学習環境の良さは
大きなメリット

青井教授
皆さんが日々、学習院で勉強していて、ここが良かったと感じた学習環境や設備などにはどのようなものがあったでしょうか?
河野
ロースクールでは、授業の予習も含めて「判例を読む」ことが勉強の要ですので、いかに多くの判例にアクセスしやすい学習環境か、ということが学校選びのひとつのポイントかと思います。本法科大学院の場合、自習室の自分専用のパソコンから学校が提供する判例のデータサービスにアクセスすることで、かなりの判例情報や掲載雑誌等が検索できました。また、図書館も充実しています。書庫にも入れますので、法律に関する膨大な資料に直接触れることができました。こうした環境のおかげで、気になったらすぐに調べるというリズムが生まれ、勉強がとてもスムーズにできたなと感じています。
福嶋
そうですね、自習室に関しては自分専用の机があることもあって、私もすごく愛着を持っていました。朝7時から夜11時まで利用できるのですが、在学中ほぼ毎日、朝から晩まで、まるで自宅のように使っていましたね(笑)。自習室は校舎の9階にあり、ロビーに出ると窓から眺める景色もきれいなので気分のリフレッシュもできます。そして10階、11階には先生方の研究室があります。本法科大学院の良いところは、少人数制で先生との距離が近いところですが、自習室と研究室の距離も近い。自習室で勉強していてわからないことがあれば、気軽に研究室に出向くことができたのも、とても良い環境だと思いました。基本的にはアポイントを取りますが、「いま来ていいよ」と言ってくださることも多く、時間の許す限り個人授業のように教えてくださった先生方には、本当に感謝しています。
青井教授
自習室や図書館など様々な環境は、いま福嶋さんが言ってくださったように、皆さんに十分活用してもらえるよう、快適に利用できる充実した施設であることを心がけて整備しています。法経図書センターは、法学部・経済学部・法科大学院の附属図書館ですが、蔵書数60万冊以上で学習院にしかない資料も入っています。実はすごい図書館。ですからロースクール選びをする学生さんたちには、ぜひ、本学の環境を見学会などを活用していただき、その目で見てほしいなと思います。
青田
「いつでも気兼ねなく先生に質問ができる」という、先生との距離の近さは、大きな特徴であり、学生にとって、とても大きいメリットだと実感しています。私もよく、青井先生のところに、ついアポなしで行ってしまいましたが、先生はいつも喜んで迎えてくださいました。また、自習室も快適でしたが、自主的にゼミを行う部屋も使い方のルールが明確になっており、自習室同様に快適に使えたことでゼミでの学びがはかどったなと感じています。あと、学部は他大学出身なのでわからなかったのですが、学習院にはOBが後輩に勉強を教えるという伝統のようなものがあるのを感じました。というのも、OBの弁護士さんがよくロースクールに来て「僕が教えてあげるよ」と、疑問点に答えてくださったことが何度もあったからです。先生だけでなくOBの皆さんまでもが「面倒見が良い」ということは、入学して初めて気づいた本法科大学院の大きな特徴であり魅力でした。
青井教授
学習院には「法務研究所」というOBの法曹による組織があります。そのメンバーの方々が勉強面の世話だけでなく、人脈づくりや進路に関して相談に乗ってくれます。皆さんも今後は、さらに「法務研究所」を活用して、法曹として羽ばたいてほしいと思います。
藤井
本法科大学院には、春季・夏季プログラムがあります。先生方がそれぞれ工夫をして、通常の授業とは独立した補助的な内容のことを教えてくださいますので、学びに新鮮さがあり、特に夏場のちょっと勉強がだれ気味になるのを回避するのにも大いに有効だったなと感じています。自習室の快適さに関しては、私も皆さんと同じ意見ですね。おそらく、学生一人当たりが使えるデスクの大きさも都内のロースクールでは、かなり大きい方ではないでしょうか。それが快適さにつながっていると思いますね。

モチベーションを高める
充実の制度

青井教授
ほかに学習院で学んでみて感じたメリットなどがあれば教えてください。
福嶋
少人数制ということで先生との距離も近いし、同時に、同じ目標を持つ同級生との距離も近いですよね。だから、いい意味での緊張感を保ちつつ、切磋琢磨できる友だちと出会える良さがあったなと感じています。最初はライバル意識から少し距離を置いていました。しかし競い合うように自習室に早く来るようになり(笑)、そのうちどんどん距離が近づいて、気がつくとゼミを組んで議論を戦わせていました。同級生の存在は、勉強のモチベーションを高く保つための励みになったと思います。
青田
私も「ロースクールはひとりで学ぶものだ」と思っていました。でも入学してみると、同じ目標に人生をかけている仲間であるだけに共感する点も多く、同級生の存在がいい刺激になることを実感しました。また、私の場合「ほめられるとダメになるタイプ」でした(笑)。そうした性格を先生方はよく見抜いてくださり、最後まで厳しく指導していただいたことも、モチベーションを保つことにつながりました。
青井教授
学生同士が切磋琢磨し、変にギスギスしないことも学習院の校風であり伝統ですね。また本法科大学院は、成績優秀者に対して経済的な負担を軽減させるための支援金制度・特待生制度なども充実していますが、その点はいかがでしたか?
河野
私は実家が大分で、大学4年間に加えてということで学費もかなり負担でした。その点では、ロースクールの2年、3年次の2年間、授業料の半額免除をいただいたのはとても助かりました。
藤井
3年次に1年間の授業料半額免除をいただきました。この制度は、勉強面でより努力をするためのひとつのモチベーション、目標になるという良い効果もあります。私は3年次での免除取得を目標に、2年次にかなり勉強量を増やしましたので、経済+学力の双方に有益な効果がある制度だと実感しています。
青井教授
最後に皆さんの今後の目標などを聞かせてください。
河野
弁護士として、どんな分野で専門性を高めていきたいのかを今はまだ模索している段階ですので、早く自分の目標を見つける、ということが目下の目標です。
福嶋
「人助けがしたい」という思いから弁護士をめざしてきましたので、いわゆる町弁として一つでも多くの紛争を解決し、一般の方に安心感を与えられる弁護士になれたらと思います。また、「弁護士に相談する」ということは、未だに一般の方に敷居の高さを感じさせているところがあると思います。この点も改善し、「気軽に相談できる弁護士」を実現することも目標のひとつです。
藤井
今は企業法務に関心があり、その分野をめざそうかなと考えています。将来的には、幅広くいろいろな分野に精通した弁護士になることが目標です。
青田
福嶋さんと同じように、「人に寄り添える弁護士」が目標のひとつです。一方で、本法科大学院に在学中に教えていただいた実務家の二人の先生、裁判官だった植村立郎先生と検察官の髙橋理恵先生なのですが、お二人がとても素晴らしい先生だったのと同時に、それぞれの役職にも憧れを抱いてしまったのも事実で(苦笑)、これからの進路に関しては、検察官や裁判官も含め、今真剣に検討しているところです。
青井教授
皆さん、今日はどうもありがとうございました。皆さんの今後のご活躍を、教職員一同、楽しみにしております。

MEMBERS

司会進行
青井 未帆 教授(専門分野:憲法)

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得満期退学(修士(法学))。2003年7月信州大学経済学部専任講師。2006年4月信州大学経済学部助教授(2007年より准教授)。2009年4月成城大学法学部准教授。2011年4月学習院大学法科大学院教授(現在に至る)。日本公法学会、全国憲法研究会、憲法理論研究会に所属。
福嶋 勇介 明治大学法学部法律学科出身。2014年学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。
2016年司法試験合格。
藤井 真沙美 学習院大学法学部法学科出身。2014年学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。
2016年司法試験合格。
河野 梨絵 日本大学法学部政治経済学科出身。2015年学習院大学法科大学院修了(法学未修者コース)。
2016年司法試験合格。
青田 直洋 東京工科大学メディア学部出身。2015年学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。
2016年司法試験合格。