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学習院大学法科大学院の授業をご紹介します

教育内容・教員紹介 - Visit Our Classes

民事訴訟法演習1長谷部 由起子 教授

民事訴訟法演習1

民事訴訟法の知識を確実なものとしつつ、豊富な判例研究で法曹に必要な応用力を養う。

 2年生を対象に開講される「民事訴訟法演習1」は、民事訴訟法についての基礎的な知識を定着させるとともに、豊富な判例研究を通じて応用力を養うことを目的とする必修科目です。3年次第1学期開講される「民事訴訟法演習2」と組み合わせれば、1年間かけて民事訴訟法に関する重要な問題を多角的に考察していくことができます。
 「民事訴訟法は司法試験の必修科目であるだけではなく、法律実務家としての基礎ともなるものです。法廷弁護士はもちろんのこと、企業法務等を担当したとしても、事件が訴訟になった場合に手続がどう進められ、どのような書証や証人を用意しなければならないのか、審理の流れを熟知していなければなりません」と説明するのは、担当教授の1人、長谷部先生。

 授業の基本テキストとなるのは、民事訴訟法の概説や重要判例がまとめられた『ケースブック民事訴訟法[第4版]』(弘文堂/2013年)ですが、ほかに法曹を目指す学生が押さえておくべき判例や学説を精選してまとめたオリジナルの資料集も配布。履修生は毎回の授業に先立ってこれらにしっかり目を通し、論点を理解しておくことが求められます。
 先生による一方的な講義に終始せず、学生が逐次発言を求められるのもこの授業の特色です。この日の授業では、当事者に対して裁判所が釈明を促す権限である「釈明権」に関して、釈明権と釈明義務の違い、釈明義務の存否の判断にあたって考慮すべき諸要素などについて確認しながら、長谷部先生がさっそく次々に質問を投げかけました。

「釈明権の範囲と釈明義務の範囲は同一ですか?」
「留置権以外の権利抗弁にはどのようなものがありますか?」

 長谷部先生は学生の返答に対してさらに質問を重ねることもあり、教科書の知識を頭に詰め込むだけではなく、あらかじめ自ら深く論考していなければ対応できないケースも少なくありません。それだけに教室には常に独特の緊張感が漂いますが、まさにそれこそが少人数制・双方向型授業の特長だといえます。高度な内容の授業をどれだけ理解できるかは、いかに入念な予習をしているかにかかっており、法科大学院では授業以外の場での主体的な学習が非常に重要になるわけです。

 回を重ねると先生と学生、あるいは学生同士の議論も活発に行われるようになり、そのことを通して法律家らしい考え方が養われるのだと長谷部先生。
 「ロースクールとは司法試験合格だけを目的とする場ではなく、法曹となるのにふさわしい資質と能力を養うための教育機関です。法律家として必要な知識を吸収し、文章力を磨き、議論する力を身につけるという、一つ一つのプロセスをしっかりたどることにこそ意味がある。そういう意識をもって欲しいと思います」
 長谷部先生はロースクールの本質をそう説き、少人数制教育を重視する学習院には、そのプロセスを確実に踏むために理想的な環境が整っている、と語ります。

民事訴訟法演習1
長谷部 由起子

法科大学院教授
長谷部 由起子

MESSAGE 教授からのメッセージ
2年生以上を対象として、民事訴訟法の重要問題についての理解を深め応用力を養うことを目的としています。2年次第2学期の「民事訴訟法演習1」では、釈明権、処分権主義、弁論主義、判決の効力、3年次第1学期の「民事訴訟法演習2」では、多数当事者に関する論点などを扱います。 授業では、講義と対話方式(ソクラティック・メソッド)を組み合わせているので、きわめて密度の濃い内容になっています。

民事訴訟法入門1稲田 龍樹教授

民事訴訟法入門1

民事訴訟手続と民事司法制度の概要を理解し、訴訟活動に必要な知識と能力を養成する。

 稲田龍樹先生が担当する「民事訴訟法入門1」は、未修者である1年次生が第1学期に履修する必修科目の1つです。「司法制度・裁判所」、「民事紛争の解決方法」、「民事訴訟」、「第一審判決手続の流れ」、「当事者」、「訴え」、「口頭弁論」、「判決」、「共同訴訟」という流れで民事訴訟手続や民事司法制度の概要を理解し、当事者が複数いるケースをはじめ、より応用的な問題を扱う第2学期の「民事訴訟法入門2」につなげるための基礎を養います。  入門科目であるため、毎回の授業はテキスト『民事訴訟法』(岩波書店、2014)の解説が主体となるものの、適宜学生に問いを投げかけ、履修者がそれぞれに理解していることを発言させるのが方針です。全体の学習内容のガイダンスが行われた新学期の初回の授業でも、稲田先生はさっそく「真実は当事者の主張と証拠のいずれにあるか」という質問を発して学生たちに議論を促しました。「主張は主観的で当人が誤解や偽証をしている可能性もあるが、証拠は事実しか示さない」という理由から大半の学生が真実は証拠にあると考えましたが、「民事訴訟においては言い分こそが立証活動を尽くして真実かどうかを確定する対象となる」と稲田先生。私たちは通常、言い分の中に真実はないと思いがちですが、ある事実に支えられた法的効果があるかどうかを権利義務の問題として決定し、その法律上の主張を支える事実を確定する作業が民事訴訟手続です。実際の事件では事実認定をして紛争を訴訟物や請求原因、抗弁として構成する作業に大きな労力が割かれますが、ロースクールにおける民事訴訟法は事実認定をする訓練を行うことにはウェイトを置かず、既になされた事実認定を前提にして、原告あるいは被告の代理人弁護士として訴訟をどう運営するかを多角的に理解することが学習の中心となります。そのため「民事訴訟法入門1」では、まずは処分権主義と弁論主義をしっかりと把握し、訴訟物とは何であるのか、請求原因はどういう作用を持つのかを、訴訟法上の基本原則として理解してほしいと稲田先生は考えています。

 このような授業に臨むには、各人が事前にテキストをしっかりと読み込んでいることが前提となりますが、主テキストの『民事訴訟法』(長谷部由起子著)は適切な分量で最新の情報がまとめられている教科書ですので、年に最低2回以上ていねいに通読することを勧められています。そのほかに、毎回の授業はシラバスに沿って進むので、教科書の該当部分と関連部分を読んでこれにのぞめば、おのずから民事訴訟手続のイメージが固まるようになり、また、先生の問いかけと学生による発言のフィードバックが繰り返されるうちに民事訴訟法の基本概念が正しく身についていきますから、予習復習を徹底することが大切。くわえて、なによりも、テキストを読むときは必ず条文を繰り返し読んでほしいと稲田先生。「肝心の条文を民事訴訟法の理論を補助するものとして捉える学生もいますが、それは間違いで、学説は条文を理解するためにあります。条文が学説ではどう解釈されているのか、条文のある文言に関しての学説の議論がどうして分かれているのかを、条文そのものを深く読みながら考えなければなりません。したがって、条文とテキストを常に並行して読み、条文を見れば授業で触れられた内容や、さまざまな学説がひとりでに思い浮かぶレベルに到達していただきたいですね。そうすれば、おのずと法的な問題を的確に処理できるようになるでしょう」(稲田先生)。

 さらに、民事訴訟法の勉強をする際、民法の教科書にもしっかり目を通すことを求めます。民事訴訟法だけを勉強しても上滑りになり、かといって民法がわかれば民事訴訟法もおのずとわかるようになるわけではありません。実体法の考え方と手続法の考え方は異なるのだという認識を持ったうえで、両者に十分に目を配る勉強法が求められるのです。  第2学期の「民事訴訟法入門2」では判例も多く取り上げられるようになるため、第1学期のうちから自主的に『判例百選』にも目を通してほしい。求められる学習量は相当なものですが、2年次以降の発展的な学習についていくためにも、未修者は1年次で基礎を徹底的に固めておく必要があるのだと稲田先生は考えています。

民事訴訟法入門1
稲田 龍樹

法科大学院教授
稲田 龍樹

MESSAGE 教授からのメッセージ
民事訴訟法は、人のあらゆる紛争を解決する目的を持ち、その安全な生活や活動を保障する基幹的な制度の一つですから、紛争当事者と協働して解決をめざすこと自体が社会貢献になるのだと考えます。法曹として豊富な知識を蓄え、法的なセンスを磨き、幅広い好奇心と瑞々しい感性を備えて、積極的な姿勢で新しい課題を自ら見つけ出して、これに情熱をもって息長い活動をしていただきたいと期待します。

刑事訴訟法2植村 立郎教授

刑事訴訟法2

刑事訴訟における公判手続を、理論・実務の両面から理解する。

 植村立郎先生が教鞭を執る「刑事訴訟法2」は、2年次生を対象とする必修科目です(第1学期と第2学期に同じ内容の講義が開講され、2年次生の半数ずつがいずれかの学期に履修)。授業では主として公訴提起後の公判手続に焦点が当てられ、刑事訴訟における主要な理論的・実務的な問題を取り上げて検討。「被告人、弁護人」、「黙秘権」、「公判の準備と証拠開示」、「挙証責任と推定」、「証拠の関連性」、「自白の証拠能力」、「補強証拠」、「伝聞証拠の意義」、「伝聞例外」、「違法収集証拠の証拠能力」、「共同被告人」、「裁判」について、『ケースブック刑事訴訟法第4版』(有斐閣)をメインテキストとしながら理解していきます。  新学期2回目となる授業では、「黙秘権の対象は何か」という問題を巡っての議論が行われました。憲法第38条1項の規定するいわゆる黙秘権とは、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」とする自己負罪拒否特権のことですが、その権利が文字通り事実を述べる供述のみにかかかっているのか、それとも捜査過程での血液・尿・呼気検査等にも及ぶのかという問題があります。テキストには、自己負罪拒否特権は純粋な供述に限定されるとする最高裁の判例が載っていますが、供述以外も自己負罪拒否特権に加えるべきとする考えもあり、仮にそのように自己負罪拒否特権が広がれば証拠が得られにくくなって、実体的真実の解明が阻害されてしまう恐れがあります。その結果、捜査機関が自白を強要するようになる危険性があり、自己負罪拒否特権の広がりは必ずしも被疑者・被告人に有益に働くとは限らない一面があることを植村先生は説明。法律の制度の議論はこのように多面的に利益考慮をしながら行われなければならないので、判例を読む際にも常にそのような視点を忘れてはならないと語りかけました。

 この授業では、自己負罪拒否特権に絡んで、米国在住の米国人に刑事免責を与え司法取引的に嘱託尋問が行われたロッキード事件を巡る裁判例にも言及。その争点は、不起訴の宣明に自己負罪拒否特権を消滅させる効力があったか否か、もしも消滅していなければ憲法に違反して供述を強制したことになるという点と、刑事免責を与えて証言を得るのは日本の刑事司法の伝統的根本理念に反し、憲法違反かどうかの問題は別としても、刑事訴訟法上の適正手続に反する可能性がある点にあることが解説されました。
 「刑事訴訟法2」を学ぶ過程では、テキスト記載の豊富な判例に目を通すことになりますが、「その事件において裁判所は最終的に何を判断することが求められているのか、そのためにどのような議論がなされているのか」という点に着目しながら読むことが大切、と植村先生。仮に被告人が犯人か否かが最も重要な争点だとすると、全体の各議論がそのこととどのような関わりを持っているのかという視点を持つことが大事で、判例には議論された分量が多くても争点ではないということがあるので、そのポイントを見誤ってはいけないと語ります。「直ちには理解できなくても、多くの判例に触れながら勉強するうちに、その争点が判決理由に関わるのか、傍論なのかが自然にわかるようになるでしょう。刑事訴訟法については、そのレベルに達することを目標に学んでほしいと思います」(植村先生)。

 植村先生は、法律家らしい法的議論ができる能力を養うべく、授業内で活発なディスカッションをすることも重要視しています。「私は他大学の大規模校でも教えていますが、少人数制の学習院では個々の学生の顔が見えるので、教員と学生間のコミュニケーションの密度はおのずと濃いものになります。その恵まれた環境を活かして、さまざまなテーマについて多角的に議論をするつもりです。授業時間外に個人的になされる質問の中には非常に建設的なものもあるので、そのような質問はできるだけ授業内で発して、履修生全員で共有することも大切だと思います」と植村先生。法的な問題には唯一絶対といえる正解が存在しないことが多いからこそ、他者の多様な考え方に触れる議論を行うことが重要なのだと植村先生は考えています。

刑事訴訟法2
植村 立郎

法科大学院教授
植村 立郎

MESSAGE 教授からのメッセージ
法科大学院生は自力で勉強するのが本来の姿で、授業は自分で法的思考ができるようになるための手助けに過ぎません。最近は法的情報が氾濫しているので、必要な情報を的確に得る一方で、リーガルマインドを育み、法的議論として自分で発信できるようになることが重要です。次々と新たな情報を追うより、基本的な事項を正確に理解し、それを基盤に知識を着実に増やしていく手法が手堅く、実りも多いと考えています。

憲法入門1青井 未帆教授

憲法1

憲法が国内法秩序の最高位にあることの意味を踏まえながら、統治の仕組みを理解する。

 憲法入門1は2年生を対象に開講されています。
 憲法で学ぶ内容は、大別すると、憲法総論・統治機構・人権と三つに分けられます。本学では、この順番で憲法1・2が展開されています。憲法1では、憲法総論と統治機構を主として扱います。
 総論や統治機構の分野は、人権と比べて判例が少なく、法律や政令の定めている仕組みを暗記すればよいと思われている節もあります。しかしながら、この分野でそれだけにとどまらず、公法に関わる、法律家として備えているべき「常識」や「相場観」を養うことが求められています。そのためには、学説の理論や歴史的展開過程、そして今の政治のありように関する知識が必要です。
 そのような「常識」・「相場観」は、憲法2で扱う人権に取り組む際にも、前提となるものです。裁判過程を通じて人権問題を提起し、そこで憲法論を主張しうる力をロースクールでは養います。国会を通じてではなく、裁判所で解決しようという以上、裁判所・国会・内閣といった機関相互のバランスを頭に入れながら立論しなければ、とうてい説得的な議論にはなりません。

 授業の基本テキストとして指定されているのは、芦部信喜『憲法』です。この本は、定番中の定番で、現在日本で法に携わる仕事に関わろうという人は、少なくとも一度は目を通したことのある書物です。現在は第6版が出版されています。
 授業では、学生がこのテキストを予習してきていることを前提に、関連判例や理論の背景を学びます。芦部テキスト以外に使いやすいテキストがあるなら、それを使って自ら学んでも、もちろん構いません。基本論点は何かということを押さえていれば、学修上、問題はありません。

 憲法総論や統治機構の「常識」・「相場観」を育てるには、国会法、内閣法等の法律や政令、規則、条例などについても、十分な知識が必要です。テキストや判例で扱われている条文は、六法で必ず確認しましょう。知識が身についているかを確認するには、アウトプットも重要です。短答式の問題を解いて、わからなかった部分は教科書や判例を読み直すことをおすすめします。
 憲法入門1は、10名弱という少人数で開講されています。この人数だと履修生がどのあたりで躓いているか、どのくらい理解しているかを、教員が把握しやすいため、教育効果は非常に高いといえます。

憲法1
青井 未帆

法科大学院教授
青井 未帆

MESSAGE 教授からのメッセージ
憲法は、ほかの科目と比べて勉強がしにくい、分かりにくい、ということをよく聞きます。確かに、立論の「お作法」というようなものが、学説でも必ずしも共有されていませんから、勉強しづらいのはわかります。でもこのことは、逆に言えば、憲法論を主張するうえでの自由度が高いということです。総論・統治機構で憲法のセンスを磨きましょう。