
【 解 題 】
平安時代後期の絵巻物の名品。清和天皇(856~876年在位)の治世下、貞観8年(866年)閏3月10日の夜、内裏の朝堂院の正門である応天門が不審火で焼け落ちるという不穏な事件が起こった。
いわゆる「応天門の変」で、制作当時流布していた説話文(「宇治拾遺物語」114「伴大納言応天門を焼く事」とほぼ同じ内容のテキスト)を詞書に採用して、鑑賞絵巻と成したもの。
事実関係は別として、出世を願って政敵の抹殺を計った一人の野心家の野望と失墜を描いたドラマ。すなわち、策略家大納言伴善男(とものよしお)はみずから応天門に火を放ち、
その罪を左大臣源信(みなもとのまこと)に着せる。が、実は目撃者があって、真相は子供のけんかをきっかけに露見、事態は急転直下解決に向かい、ここに罪が確定した伴大納言は流刑に処せられるというもの。
3巻本であるが、全体は起承転結を踏まえた5段構成で、絵巻としても、巧みなデッサン、豊かな色彩感覚、体系だった画面展開は、「鑑賞絵巻」と呼ぶにふさわしい。

当館所蔵は、「国書総目録」によれば写本。近年、貴重書整備計画に基づき、折本3巻として書棚にあったものを、外箱を購入し、ラベル等の表装を整え、貴重書室に収納した。
旧分類730/16、キャビネット内に在中。残念ながら当館所蔵は表紙の付番に間違いがあり、ストーリーの展開で言えば、3→1→2の順に見ていくと符合する。