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法学科Department of Law

講義レポート

英米法(イングランド法【信託】)

紙谷 雅子 教授

法を通じ、外国の社会を知っていくことで考える力を養う

法を社会の一部や文化としてとらえ、法を通じ外国の社会を見ていきます。今回は信託に対するイングランド法のアプローチが対象です。

いうまでもなく、窃盗や殺人が犯罪だというのは世界的に共通した認識です。しかし、財産の継承などの民事は、それぞれの国で異なる工夫がされることも珍しくありません。
今回、英米法で取り上げるイングランドの信託法は、日本と異なる面も多く、興味深い事例が数々出てきます。
イングランドで信託法が成立したのは13世紀。日本では鎌倉幕府の頃です。当時のイングランドは戦乱が相次ぎ、支配階級や貴族階級には、土地=財産を没収されずに子孫に受け継ぐための手段を、制度化する必要がありました。日本に「勝てば官軍」という言葉があるように、イングランドでも敗者は反逆者扱いで、財産を没収されるのが当然の流れだったのです。
いわば「負け組」になるかもしれない場合を想定して作られた法制度として、没収を防ぐため、争いに関与していない第三者に預ける方法が考え出されました。土地自体を所有・管理するのは第三者ですが、土地からの収益は、元の持ち主やその人が指示した人が受け取る仕組みで、財産を継承する子どもが成人するまでを一つのサイクルとして、見直しをするというシステムも生まれました。また、女性が結婚しても彼女が親などから受け継いだ財産を夫が自由にできない仕組みや血のつながりのある子どもだけが継承する方法も工夫されました。
いずれにしても、イングランドでは、財産は爵位と同じく一族内に留めるべきという考え方が前提にあり、その行方をコントロールする手段として信託法は使われてきたのです。
日本でも、大正時代にイングランド法を手本にした信託法が導入されましたが、財産を他人に管理させるスタイルはなじまず、最近まで活用する人は少なかったようです。
このように、その国の法律の成り立ちを調べていくと、社会的背景や文化を知ることにもなりますし、日本との共通点や違いもあぶり出されてきます。
講義は、教科書を用いず、毎回、授業の見取り図と資料を配付して進める形式。時折「なぜでしょうか?」と質問をしますが、それは常識を鵜呑みにせず、疑問点を追求する姿勢や、自ら考える力を養うことを趣旨としているためです。英米法をきっかけに、なぜ、どうしてと尋ねる習慣を身につけていってほしいと思っています。

その他の講義紹介

憲法Ⅰ/村山 健太郎 教授
憲法の授業は、憲法総論、統治機構論、人権論の3分野から成り立っていますが、憲法Ⅰは、憲法総論と統治機構論を対象とします。憲法総論では、憲法全体の基礎にある原理について、統治機構論では、日本の議会、政府、裁判所などの基本的な成り立ちを学びます。憲法Ⅰを受講すると、政治を憲法の視点から考察できるようになります。
刑法Ⅰ/鎮目 征樹 教授
刑法は、犯罪と刑罰について考察する学問分野です。それは、総論・各論という2分野から成りますが、刑法Ⅰでは、このうち、前者を主として扱います。それは、殺人罪や窃盗罪といった個々の犯罪類型毎の違いを超えた犯罪の一般的な成立要件、すなわち、「犯罪とは、そもそも何か」「どのような場合に、国家が人に刑罰を科すことが許されるのか」について考える学問です。

特殊講義信託法

山下 純司 教授

社会に出てから役立つ実践的な知識の習得

金融実務において重要な信託法。その基本的な仕組みを理解すると共に実社会でどのように活用されているかを学ぶ講義です。

信託法という名前から、どんな法律なのかを具体的にイメージできる人はそう多くはないと思います。そこで、かいつまんでご説明をしましょう。信託はもともとイギリスで、自分の子孫のために、信頼できる別の人に自分の農地や住居などの財産を託して、管理を依頼する際の仕組みとして発達したものでした。まさしく、「信」頼して「託」すという意味合いです。
現代の日本社会においても、遺産相続をはじめとした財産の継承に関わってくることの多い法律ですし、財産の運用…いわゆる財テクを考えるのであれば、知っておくべき法律といえるかもしれません。
「老後に備えて」といったニュアンスの信託関連の金融商品も多いので、今はまだ、ご自身にあまり関係ないと思われるかもしれませんが、日本はいうまでもなく高齢化社会であり、所有する土地の開発や財産の継承・相続といった点で重要な法律であることは間違いないのです。信託サービス自体、金融制度における経済活動やインフラとして活用されていますが、さらに高齢化が進む中、財産管理の有効な制度として、福祉的な側面も大いに期待されています。これからの時代に求められる法的な知識と位置づけられるでしょう。
また、学習院では金融関係の分野に進む卒業生が多く、そちらを志望する人にとっては、将来の仕事に役立つ知識や考え方を身につけるためのカリキュラムともいえます。さらに今後、ますますニーズの拡大が予想される信託関連のサービスや商品を企画・設計していく上でも欠かせない知識です。
法学科の講義である反面、経済学にも密接な関係を持っており、実際に信託銀行や弁護士事務所で実務を行っているエキスパートの生の声を聴く機会も用意してあります。
2014年からスタートした新しい講義ですが、信託法のリアルタイムな判例も含めて、暗記するのではなく、信託法の全貌を把握・理解し、国内はもとより、アメリカをはじめとした海外での例も交えながら、実社会ではどのように用いられているのかを学んでいってほしいと考えています。

その他の講義紹介

商法Ⅰ/小塚 荘一郎 教授
「商法Ⅰ」(と「商法Ⅱ」の前半)では、会社に関する法律を勉強します。アベノミクスを支える「攻めのガバナンス」とは何のことなのか、取締役会の中で女性の比率を高めることは本当に望ましいのか、会社が地球環境に貢献するために利益を減らすことは許されるのかなど、学生には少し難しそうな「会社をめぐる疑問」にチャレンジしましょう。
知的財産法/横山 久芳 教授
知的財産法は、人間の知的活動の成果である情報を保護する法分野のことです。知的財産法には、発明を保護する特許法、著作物を保護する著作権法、デザインを保護する意匠法、商標を保護する商標法などが存在します。講義では、特許法や著作権法を中心に知的財産法の概要を解説し、知的財産法が我が国の産業や経済、文化の発展にどのような形で寄与しているかを明らかにしていきます。