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政治学科Department of Political Studies

講義レポート

政治学Ⅱ野中 尚人 教授

 現代政治を理解するための基本的な考え方や概念を整理するために、自由民主主義の構造的な仕組みやその作動のメカニズムについて、他国との比較を交えつつ、日本を中心に検討します。政治的自由主義と狭義の民主主義が組み合わされた政治制度としての自由民主主義とはどのようなものであるかを、様々な側面から検討することによって、現代の政治の基本的な仕組みを理解し考察できるようになります。また、比較的な観点に触れることにより、日本政治の基礎的な特徴にも理解が深まります。

政治学の講義で伝えたいこと-
自由? 民主主義? それとも?

今の学生は「幼稚化」している?

 日本でも選挙権は18歳からに引き下げられました。これで先進国の仲間入り、といったところです。ところで、最近の傾向として、若者は保守政党、自民党を支持する人が多く、40年近くも前に学生だった人間からするといささか隔世の感あり、といったところです。何と言っても、左翼政党支持ならまだしも、保守政党支持などというのは、とても「恥ずかしく」、例えそういう気持ちがあったにしても、なかなか口外できない、という雰囲気だったように記憶しています。私よりも前の世代の人は、学生時代にはおそらく、もっと激しく左だったのではないでしようか。
 他方で、ここ20年ほど大学で講義やゼミを担当していると、率直に言って、「欧米の主要な国に比べて、日本の大学生はだいぶん幼稚なのではないか」と、いう感想を持っていたのも事実です。例によって、自分のことは棚に上げて、ですが。とすると、最近の保守化は学生の「幼稚化」と関係があるのだろうか。かなり乱暴な議論ですが、こういったことを考えないではなかった、という訳です。
 さて本題に戻ると、政治学という講義で何を伝えようとしているのでしょうか。それを言うのに、なぜこんな前置きが要るのか。お叱りを受けそうです。でも、やはりこれらのことは重要な背景です。たぶん、幼稚かどうかという言い方は正しくありません。そうではなくて、抽象的な概念や、考え方、といったものに触れる機会が極端に少ないのでしょう。また逆に、現実の紛争や惨劇を目の当たりにすることもほとんどないのでしょう。そうした環境の中で育ってきた人間に、「政治とは何か」ということを考えてもらうことはなかなか難しいものです。そしてそれは考えようとする学生にとっても、また考えてもらいたいと思う教員の側にとっても同様です。

「自由」と「民主主義」について深く考える

 私の講義では、政治的な自由主義ということについて、かなりの時間を割いてお話しをしています。特に議会と政治的自由との関係についてだいぶん突っ込んでお話しをします。もっと根本的に言えば、「自由ってなんだろう」ということです。でも、自由とは何かを本格的に考えてもらうのは、結構大変なことです。自由というのは、無くなってみてその有り難さが分かるものの1つの典型のようなものだからです。「皆さんは自由ですか?」 と問いかければ、どうお答えになるでしょうか。私自身、ずいぶんと長い間、こうした問いかけに向き合ってきたようなものですが、依然として十分な答えがあるとは言えません。
 その理由は何でしょうか。それを考える1つのきっかけは、政治(学)においてもう1つの重要な概念である「民主主義」との関係を整理するのがなかなか厄介だからです。自由主義と民主主義を一緒にして、「自由民主主義」と言い、これが一般的な捉え方での民主主義とほぼ一緒である、とまとめてしまうことも確かに可能です。しかし、少し慎重に考えてみると、そんなに「ヤワ」な問題ではないことが分かります。民主主義の定義自体、極めて多くのバリエーションがあります。実態として、民主主義が何を表すのかはさらに複雑で、むしろ、奇怪としか言いようのない使い方もされています。北朝鮮の正式な国家名称は、「朝鮮民主主義人民共和国」です。立派に民主主義が入っていますね・・・。
 もっと考えてみると、問題はさらに複雑になるようです。民主主義は、平等性を追求することに重要な意味があるとされていますが、この平等さと自由との間には難しい、本質的な相性の悪さが横たわっています。平等さを追求したのが社会主義だったとすると、その決着はもう着いた、と考える人がいるかもしれません。しかしどうでしょう。今、21世紀のグローバル化した世界に色濃く見え始めているのは、新たな格差の時代の到来ではないでしょうか。
 さらに問題を見えにくくしているのは、秩序の問題です。自由と平等が相対立するといっても、それはともに追求すべき価値であることは否定できません。しかし、秩序の問題は、さらに深刻な人間社会の根源を問う対立を映し出している面があります。戦争や内乱、そしてテロは一体なぜ起こるのでしょう。

政治学が向き合う「難問」に向き合う

 自由と平等の両立、そしてそれらの前提としての秩序の維持。これらの3つのバランスと質の問題はどう考えればよいのか。これが政治学に求められるのかもしれません。
 そうですね。でも、こうした難しい問題に向き合うのが政治学だとすると、それは、「難しすぎるのではないの? 」ということです。講義では、政治学の基礎的な概念について説明し、また各国の歴史や日本の実態に触れながら、できるだけ多くの学生の皆さんが理解できるように心がけているつもりです。でも、きっと「それでも、絶対、難しすぎるよ」という声も聞こえてきそうです。では、結局何を講義しているのでしょう。それは、皆さんに目を見開いて日本と世界を見て欲しい、ということです。なかなかうまく行きません。でも、教える側も、また学ぼうとする側も、目を見開いて、そして考えてみること。それがこの講義の本当の目標かもしれません。

この講義を履修している先輩の声

 先輩に履修の相談をしている時に、政治学の根本的な部分である「政治とは何なのか?」「政治における正しさとは何なのか?」について考えさせられる講義だと、強くオススメされたのが、受講のきっかけです。
 講義で学んできて、今起きている政治的現象を理解するには、そこに至るまでの歴史や、背景、価値観を理解しなければ本質的な理解は得られない。政治学を学ぶ欲求が尚更掻き立てられたように感じます。
 将来は、政治に寄り添い、政治を良くしたいと思います。政治は、目的でなく手段であるべきだと考えます。その先に、どういった理念があるのか。どのような社会を成し得たいのか。今だけでなく、未来の国民の可能性を守るために、いわば志をこの大学生生活で模索したいです。

この講義のオススメはここ!

 現代の政治の基本的な価値となっている、政治的自由主義や議会制民主主義などについて学べます。現代の政治で台頭しているポピュリズムは我々に何をもたらすのか。今の政治に対して「何が問題なのか?」を掴み取る材料の宝庫です。

先生に一言!

 経験豊富で政界との繋がりも多い野中教授の講義には、90分間に溢れんばかりの情報が注ぎ込まれています。気づきの連続の、密度の濃い授業に感謝感謝です!

政治学科1年(取材当時)
正生 雄大Yudai Masao