学習院大学 法学部 | 法学科|政治学科

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法学科 教授

阿部 克則Yoshinori Abe

専攻:国際法

出身地
東京都
最終学歴/学位
東京大学大学院学術修士、ケンブリッジ大学大学院法学修士(LL.M)
所属学会
国際法学会、日本国際経済法学会、Society of International Economic Law
研究テーマ
国際経済法、国際紛争処理法
担当科目
国際法Ⅰ、国際法演習、特設演習(日本外交と国際法)、演習(応用国際法)

国際法で世界を広げよう

 みなさんは国際関係に興味がありますか? もしそうだとしたら、国際法は、みなさんが国際問題を考える際に強い味方になるでしょう。私は国際法を専門に研究し、学習院大学法学部で教えていますので、その魅力はどこにあるのか、ご紹介したいと思います。

 そもそも「国際法とは何か?」を簡潔に説明することは非常に難しいのですが、あえて一言でいえば、「国際法とは国際社会の法」です。そして、国際社会は、基本的には複数の主権国家から成り立っていると考えられ、したがって「国際法とは、主権国家間の関係を規律する法だ」ということができます。このような国際法は、国際関係が緊密化し、グローバル化したといわれる現代世界において、あらゆる国際問題に関係しているといっても過言ではありませんし、日本政府も「国際法の支配」を重要な外交政策としています。

 それでは、国際法が関係する問題には、いったい何があるのでしょうか? 実は様々なものがあるのですが、例えば、尖閣諸島や竹島、北方領土をめぐる領土問題、TPPなどの貿易問題、地球温暖化問題、北朝鮮情勢や集団的自衛権といった安全保障問題などなど、国際法上の問題は多岐にわたります。まさに国際法は、国際関係を理解するために必要不可欠なのです。

 それでは、例えば、尖閣諸島問題については、どのような国際法があるのでしょうか?

 尖閣諸島は、石垣島の北北西約170キロメートルの東シナ海にあり、沖縄県石垣市の一部です。1895年(明治28年)に尖閣諸島は、正式に日本の領土に編入されました。当時の日本政府は、尖閣諸島にはどの国の支配も及んでいないことを確認しています。このように、どの国の支配も及んでいない島などの陸地を、国際法上は「無主地」と呼ぶのですが、「無主地」に対して実効的支配を及ぼした国は、その陸地を自国の領土とすることが認められます。これを「先占の法理」と言います。つまり、尖閣諸島は、1895年の時点では「無主地」であり、日本は「先占」を行い、自国領土とした、ということになります。

 この日本の動きに対して、当時の中国(清)は、何も抗議をしませんでした。もし中国が尖閣諸島を自国の領土だと認識していたならば、当然に反発したはずです。しかし日本は、その後尖閣諸島に移民を送り、鰹節工場をつくるなど、島を平和的に利用していました。このことからも、少なくとも第二次世界大戦前は、尖閣諸島は日本の領土であることが明らかであり、何も争いはなかったと言えるのです。

 ところが中国は、1970年代以降、突然に尖閣諸島が自国の領土だと主張し始めました。そのきっかけは、尖閣諸島周辺の東シナ海海底に石油資源が存在する可能性が、国連の機関によって指摘されたことでした。それまで、まったく問題になっていなかった尖閣諸島に対して、突如中国が領有権を一方的に主張したのです。

 しかし、この中国の主張は、国際法上は根拠がありません。中国は、日本が尖閣諸島を「盗んだ」ので、それを返すべきとの立場をとっていますが、国際法の一つである条約を見れば、その主張が誤りであることがわかります。日本が第二次世界大戦後に締結したサンフランシスコ平和条約においては、「台湾及び澎湖諸島」に対する権利を、日本がすべて放棄すると定められていますが、「尖閣諸島」の領有権を放棄するとは書かれていません(ちなみに澎湖諸島というのは台湾のすぐ西にある島々で、尖閣諸島とはまったく別物です)。台湾は、日清戦争の結果、日本が中国から譲り受けたもので、サンフランシスコ平和条約によって、日本は中国に「返す」ことを約束しましたが、尖閣諸島についてはそのような約束はしていません。なぜなら、先ほど説明したように、尖閣諸島は、もともと日本の領土であり、中国から譲り受けたものではないからです。サンフランシスコ平和条約は1952年に結ばれたものですが、1952年当時には、中国も含めて誰も尖閣諸島を中国の領土だとは考えていなかったことがわかります。それが1970年代になって石油資源の埋蔵可能性が指摘されると、急に中国は領有権を主張し始めたのですから、ほとんど「言いがかり」に近いものでしょう。

 以上のような領土に対する権利は、国際法によって認められるものですので、日本は自らの立場がなぜ正しいかを国際法に基づいて明確に示す必要があります。国際法に基づかずに、感情的に他国を批判するだけでは、説得力がありません。また、国際法に基づいて、外国と冷静かつ合理的に交渉することによって、国際紛争を平和的に解決し、戦争を回避することもできます。

 このように、国際法は国際社会にとって不可欠なものですが、みなさんが大学で国際法を学ぶとして、その魅力はどこにあるのでしょうか? それは何といっても、国際問題という非常にスケールの大きな課題に対して、法という道具を持って切り込んでいけることです。実は私自身、大学に入るまで国際法とは何かについて全く知りませんでした。ところが、大学の授業で国際法に触れ、さらに学者として国際法を研究するにつれて、いわば「ただの紙切れ」に過ぎない条約の条文が、現実の外交の場面で極めて重要な役割を果たしているのだということを実感するようになりました。

 つまり、国際法は「国際社会のルール」であり、日本が今後進むべき道や国際社会のあるべき姿について、様々なヒントを与えてくれるのです。国際法を学ぶことで、国際問題をより深く理解でき、その解決の方向性が見えてくるだろうと思います。みなさんも国際法を手にして、世界を読み解きましょう!

著書・論文紹介

「WTO対抗措置仲裁における法廷経済学」

学習院大学法学会雑誌52巻2号(学習院大学法学会、2017年)

『国際投資仲裁ガイドブック』(共著)

(阿部克則監修、末冨純子他著、中央経済社、2016年)

  • 『国際投資仲裁ガイドブック』(中央経済社)