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教員メッセージMessage from Professors

林 幹人

法科大学院 教授
林 幹人
Mikito Hayashi
専攻:刑法

出身地
北海道
最終学歴
学士
所属学会
刑法学会
研究テーマ
刑法
担当科目
刑法

チャーチルと私

若いころ、権力のあり方に関心をもち、刑法の研究を志した。刑法全体に関心をもち、40代で、刑法各論、総論の執筆を完成させた。
50代になると、世の中は法科大学院に関心が集まったために、その中で、研究者は何をするべきか悩み、そういう中から、「判例刑法」という本を出版した。
現在では、関心はさらに広がり、20世紀全体の歴史に及び、最近、「チャーチル─日本の友人」という著書を完成させた。
刑法は、国内の刑事権力の行使にかかわるものだが、現実の世の中は、世界の権力のあり方に大きく規定されている。この現在の世界の権力のあり方の基本的な枠組みをつくったのが、第一次世界大戦であり、第二次世界大戦である。
その中での最大の英雄がチャーチルである。この本を読めば、チャーチルと日本、そして、現在の世界権力と日本とが、いかに深い縁で結ばれているかを知ることができるであろう。
学生には、私の刑法総論、各論の教科書だけでなく、ぜひ、この「チャーチル─日本の友人」(上智大学出版会)を読んでほしい。そのことによって、現在の日本人、そして君たち自身の本当の立ち位置が理解できると思う。
君たちには別の世界に見える刑法や第二次世界大戦がいかに君たち自身を規定しているかは、次の事実に思いを致せばよい。
人類の運命を決定した二つの死を選ぶとすれば、ソクラテスとイエス・キリストの死であろう。この二つはどちらも、「刑罰権力」によって引き起こされたものである。
また、君たちの祖父の多くは、この戦争に駆り出され、九死に一生を得て君たちの父母を生んだのである。
とはいっても、学部生は、とりあえず、刑法総論、各論の授業に真剣に取り組むべきことはもちろんである。人を死に追い込む戦争をする権力と、死刑を科する権力とは、同じもので、戦争で権力のあり方が決まる側面があることは確かである。
しかし、我が国の刑法は基本的に明治時代に作られたものであり、しかも、現代にいたるまで、基本的に変わっていない。このことは何を意味するのであろうか。
それは、第二次世界大戦のような大きなできごと(世界で5千万人、日本で3百万人が命を落とした)の底流には、紀元前にもさかのぼるような、刑罰権力行使のあり方についての人類の模索があった、ということである。
現在の刑法には、紀元前後のローマ法に起源をもつものがある。さらに、フランス革命、産業革命、資本主義の発展、それに伴うさまざまの文明の発展に淵源をもつものもある。要するに、刑法総論、各論は、権力行使のあり方についての人類の叡智の結晶なのである。それを完全に理解するには、大変な意思と能力を要する。
しかし、それを一応学んだ後には、社会の本当に重要な真実が見えてくるであろう。それは人として価値ある行いである。労をいとわず、謙虚に努力してほしい。

著書・論文紹介

  • 『判例刑法』
    (東京大学出版会、2011年)

    刑法の判例について研究したものをまとめたもの。

  • 『刑法各論(第2版)』
    (東京大学出版会、2007年)

    刑法各論の教科書。

  • 『財産犯の保護法益』
    (東京大学出版会、1984年)

    財産犯の保護法益の内容について検討したもの。

  • 『刑法総論(第2版)』
    (東京大学出版会、2008年)

    刑法総論の教科書。

  • 『チャーチル─日本の友人』
    (上智大学出版会、2015年)