学習院大学 法学部 | 法学科|政治学科

教員紹介Messages from Professors

法学科 教授

林 圭介Keisuke Hayashi

専攻:民事訴訟法

出身地
兵庫県
最終学歴/学位
東京大学法学部/法学士
所属学会
民事訴訟法学会、仲裁ADR法学会
研究テーマ
民事訴訟法、倒産法、ADR(裁判外紛争解決手続)、交渉
担当科目
民事訴訟法、特設演習(民事紛争解決における法律家の役割)、「交渉と法」演習(以上、法学部)、民事手続法演習、法文書作成指導(以上、法科大学院)

興味が尽きない民事紛争解決手続

 民事訴訟法は民事紛争を解決するための手続です。民事の争い事をどのように解決するのか。民事裁判による判決が代表例です。しかし、実際の民事紛争の解決は判決以外によって解決される割合が圧倒的に多いです。ただ、色々な解決を試みてどうしても解決に至らない場合があります。判決は民事紛争解決の最終手段です。

 民事訴訟法を学ぶと民事紛争解決の全般的かつ基本的な理解が得られます。民事紛争解決について理解したいときは、まずは民事訴訟法を学ぶと良いと思います。ただ、民事訴訟法は民事手続法と総称される法律の中の1つです。

 民事紛争解決の手続を定める民事手続法は、民事訴訟法のほかに民事執行法、倒産法、民事調停法、仲裁法、ADR(裁判外紛争解決手続)などの法律があります。また、手続に関与する人々も裁判官、弁護士のみでなく裁判所書記官、鑑定人、専門委員、調停委員、司法委員、執行官、評価人、管財人、監督委員、仲裁人、ADRの手続実施者など多種多様です。これらの人々がより良い紛争解決を目指して、日々奮闘しています。

 色々な民事紛争がどのような手続を経てより良い紛争解決に向かっているのか。民事紛争を解決して明るい未来を切り開くためにあるのが民事手続法です。このことに少しでも関心がある人は、是非とも、民事訴訟法をはじめとする民事手続法を履修してみて下さい。

民事紛争解決手続の実践経験

 私は、約36年間、裁判官として民事紛争の解決に携わってきました。当然、判決もしましたし、和解や調停などにも関与しました。紛争解決手続に関与する人々の真剣かつ熱心な態度に感銘を受けることが多かったです。最近の民事紛争は社会生活の複雑化・専門化がそのまま反映されています。以前と比較して紛争の問題点を把握するだけでも極めて困難な事件が増加しています。そのために専門家が民事手続に関与する制度が完備されつつあります。この傾向は、今後、さらに強まってくると感じています。また、最新の紛争解決事例に接する機会が得られるために弁護士登録(弁護士法人大江橋法律事務所に所属)もしています。

講義と演習の内容

「民事訴訟法」は、数多くの民事手続法の基礎となり基本となる法律です。授業では、民事紛争解決の具体的な過程をイメージしながら民事裁判手続がどのように進められていくのかについて学びます。

「特設演習(民事紛争解決における法律家の役割)」では、毎回、具体的な紛争事例について、グループ分けをして紛争解決に向けた議論をします。各グループによって異なったアプローチになります。予想もしない新たな視点からの解決案が提案されたりもします。多様な紛争解決方法があることを実際に体験しながら、実践的なより良い紛争解決のあり方を学びます。

「交渉と法」演習は「特設演習」の内容を発展させたゼミです。国内の主要大学と海外の大学も参加する「大学対抗交渉コンペティション」(2017年は23大学が出場)に出場することを目標としています。

「民事手続法演習」は、法科大学院における演習であり、紛争解決事例について法曹になった場合に要求される知識や技量を習得することを目標としています。

研究テーマ

 私は、裁判官時代に比較的長い期間、事業再生の手続に関与してきました。事業再生というのは瀕死の事業を再生させるための手続です。これは医療に例えれば、救命救急医療です。ある意味で、通常の法律的な感覚では対応できない場合もあります。瀕死の患者を前にして、今は、あの薬やあの器具が揃ってないので何も手当が出来ない。こんなことを言っていたら患者は死亡してしまいます。「あの薬やあの器具が揃ってから手当する」のが通常の医療では最善の処置です。このことに異論はありません。しかし、瀕死の患者を前にしては、完全な準備をしてから「最善」の手当てを始めようとすると患者の死亡という「最悪」の結果が生じます。現在の状況で何が出来るか。それは「次善」「三善」どころか「六善」「七善」のことさえあります。しかし、それにより「最悪」の結果が回避できるのです。

 事業再建の現場ではこのような緊迫した状況に直面します。裁判所と倒産手続に関与する弁護士や当事者などが一体感をもってあらゆる知識を総動員して対処します。これにより数多くの難局を乗り越えることができました。この感動は忘れられません。この緊迫感と緊張感は通常の民事事件ではなかなか経験できない異質なものでした。このような貴重な経験が事業再建に関する研究意欲の根源になっています。

 このことを通じて、実体法の適用のみによっては実現できない交渉による紛争解決や裁判所の手続を利用しないADR(裁判外紛争解決手続)に関する理解と関心も深まりました。

著書・論文紹介

『破産法大系第1巻〔破産手続法〕』(共著)

(青林書院、2014年)

『現代民事法の実務と理論〔下巻〕』(共著)

(金融財政事情研究会、2013年)