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教員メッセージMessage from Professors

紙谷 雅子

法学科 教授
紙谷 雅子
Masako Kamiya
専攻:英米法

出身地
東京都
最終学歴
東京大学大学院法学政治学研究科博士後期課程修了/法学博士
所属学会
日米法学会、比較法学会、日本公法学会、国際人権法学会、日本社会法学会、法とコンピュータ学会、ジェンダー法学会、司法アクセス学会、法情報ネットワーク学会
研究テーマ
表現の自由、議会特権、最高裁判所の役割
担当科目
英米法、英米法演習、特殊講義(比較法)、アメリカ法(1)、(2)

グローバルな世界でも「アメリカ法」って存在しない?

グローバリゼーションのおかげで世界は狭くなり、同じようなことが世界のあちこちで起こっている。同じようなことには同じように対処しないと、抜け穴を使う狡い人たちが得をするし、まじめな人たちが損をする。だから、犯罪組織やテロリストが簡単に資金を集められないよう、どの国でもマネー・ロンダリング(金銭洗浄)を規制する。
そこで、日本はATMを利用した送金には制限を設けた。これは国内的に「振り込め詐欺」の送金手段をユーパックや宅配便に移行させ、結果として受取人を炙りだすのに役に立っている。法は文化の一部であるというけれども、グローバリゼーションというからには、やがて、どこの国の法も同じようになる?
クール・ジャパンとか、日本のソフト・パワーの輸出というけれども、結局、ハリウッドを中心とするエンターテイメント産業がグローバル・スタンダードという話も聞く。だから、アニメーターもアメリカに行きたいらしいし、俳優だって、歌手だって、アーティストはアメリカで「修行」したりする。スタイリストも、ヘアやメイクの人も、世界に飛躍するというときの目的地はアメリカだし…。
この分野の法といえば、知的財産法。アメリカではコピーライトの保護を「死後70年」にしたから、日本も…という話が進んでいるらしい。いっそのこと、全部、アメリカと一緒にした方が、世の中、簡単?
そこで、アメリカ法を勉強しておくと日本のことを理解するにも役に立ちそう…と思って、「英米法」の最初の授業に出てみると、「アメリカ法」というのは存在しないと先生はいう。ついでに、「イギリス」法というのも存在しないらしい。
英語がわかれば世界で通用する(そんなことは噓です!)ように、アメリカ法がわかっても世界で通用する法の知識は獲得できない。大学では、すぐには役に立たないことが重要らしい。この授業を聴いたから、英米法の単位を取ったからといって、アメリカの弁護士になれるわけではない。法学部の中でも一二を争うほど、役に立たないと先生ははっきり言う。
法は、その国の歴史,文化…「国の姿」と密接に関連しているらしい。1842年から1997年までの英国植民地という歴史を背負ったイングランド法を基礎とする法制度が、共産主義による支配に対する民主主義の防波堤になっていると、香港の人たちは語る。南アフリカ共和国では、オランダ法の影響を受けた地域とイングランド法の影響を受けた地域では、権利と自由に関する受け止め方がちょっと違うと、南アフリカ出身の法律家はいう。
日本は、1868年をきっかけに、ヨーロッパ近代法を「継受」し、1945年以降はアメリカ法をモデルにしている、「ハイブリッド法」と考えている人も多いが、「ハイブリッド法」ではない、根本的な発想が違うと、先生はいう。どこが…というのは、授業でのお楽しみだそうである。

著書・論文紹介

  • 「イメージ1枚で4億円? チャイルド・ポルノフラフィ抑止の値段と表現の自由」『スターバックスでラテを飲みながら憲法を考える』第4章
    (2016年)

    日本でも、児童ポルノの単純所持が処罰されるようになりましたが、刑罰だけではない抑止効果を狙った、被害者による損害賠償制度が導入されたアメリカ合衆国の事例があります。法律を制定しただけで満足せず、どのように制度を設計すると法律の目的が達成できるのかという観点から、制度を検討することも重要です。

  • 「金の卵を生む鵞鳥を殺すのは誰? ——— デジタル時代の消尽の法理 ———」学習院大学法学部法学会雑誌 50巻1号411頁
    (2014年)

    英語の本は世界中で購入できるが、地域ごとに価格設定が違う。安く販売されている国で大量に購入し、高額な価格の市場に並行輸入すれば、かなりの収益が上がることは間違いないが、販売元は「外国で出版された」ことを理由に販売時に消滅(消尽)したにもかかわらず、その書籍に対する権利を主張できるのだろうか。

  • 「法執行は合憲,訴訟では違憲―行政機関が制定法の合憲性を支持しないとき―」 『憲法の基底と憲法論 ——— 思想・制度・運用  高見勝利先生古希記念論文集』第27章
    (2015年)

    国家に対して違憲訴訟を提起するとき、通常、行政機関は「法律は合憲」という反論をしますが、法律の違憲性を認めているにもかかわらず、その法律を執行するという矛盾した立場をとることがあるという事案を取り上げました。

  • 「懲罰的損害賠償とデュー・プロセス The Story of Philip Morris USA v. Williams」『アメリカ憲法判例の物語』第8章
    (2014年)

    煙草訴訟では、高額の損害賠償のニュースが新聞などで報じられますが、原告がそのような金額を手にすることは実際にはないようです。高額な損害賠償が出現する仕組み「懲罰的損害賠償」についての物語です。