学習院大学 法学部 | 法学科|政治学科

教員紹介Messages from Professors

法科大学院 教授

神前 禎Tadashi Kanzaki

専攻:国際私法

出身地
東京都
最終学歴/学位
東京大学大学院/法学修士
所属学会
日本国際法学会、(日本)国際私法学会、日本私法学会
研究テーマ
国際家族法
担当科目
国際私法

国際私法って自分とは無関係?

 私は、「国際私法(こくさいしほう)」という法律を研究しています。

 今、この文章を読んでいる方々の中で、「国際私法」という言葉を聞いたことがある方は…たぶんいないでしょう。

「国際法みたいなもん?」…そうそう、そんな感じ。でも「国際」と「法」の間に、「私(し)」って言葉が入っています。国際法とはちょっとだけ違います。

「私」… 英語で言えば、" private " 、その反対語は「公(public)」。ですから、「国際私法」は、「国際的」で「私的」なものを対象とする法、というわけです。つまり、「国際法」が主に国と国との関係を問題にするのに対し、「国際私法」は、「国際的な私的な活動」たとえば日本人と外国人との結婚(国際結婚)とか、日本企業と外国企業との契約といったものを問題にするのです。

「うーんそうすると、国際私法って、自分とは関係なさそうだな。自分は国際結婚をするつもりもないし、将来は地元の県庁に就職したいと思っていて、外資系企業とか商社とかに就職するつもりもないし。」…そう思った方もいるかもしれませんね。

 でも、本当にそうでしょうか。

 残念ながら/幸いなことに、今の世界は互いに強く結びついています。日本国内でごく普通に日常生活を営んでいるあなたも、日々国際私法に囲まれて生活をしているといえるのです。

 たとえば、あなたはスマートフォン(スマホ)を使っていますか? 高校生の9割以上がスマホを使っているという調査結果もあるくらいですから、あなたも、毎日のように使っているのではないでしょうか。

 そんなあなたなら、スマホを使い始めたときや、OS(プラットフォーム)のバージョンアップをするときなどに、そのOSの「使用許諾契約」といったものに「同意する」「同意しない」のどちらかを選ぶ画面が出てくること、知ってますよね。

 まぁ実際のところ、そんな契約の条項をひとつひとつ読んでいる人なんてほとんどいないでしょう。私も、知り合いの弁護士さん何人かに聞いたことがありますが、今のところ、「使用許諾契約の条項、いつも読んでるよ」という弁護士さんとは出会えていません。どうせ「同意する」を選ばないとスマホは使えないわけですから、読んでも仕方ないと考えるのが普通でしょう。

 では、あなたが「同意する」を選んだ、その使用許諾契約に何が書いてあるか、ご存じですか? iPhone のOS である、「iOSソフトウェア使用許諾契約」には、みなさんが iPhone上で iOS などを使う際の利用条件について様々な規定がおかれていますが、その中には、こんなことも書いてあるのです。

 本契約は、カリフォルニア州法…が適用され、これに従って解釈されるものとします…

 そう、あなたは、スマホを、カリフォルニア州法に従って使用しているのです。これはiPhoneに限りません。もうひとつの代表的なOS、Androidを開発したGoogleも、同じく、カリフォルニア州法の適用を定めています。

「そんな馬鹿な。ここは日本なのに、外国の法律が適用されるなんて!」と思った方もいるかもしれません。確かに、ここは日本ですから日本の法律が適用されます。

 しかし、その「日本の法律」のひとつである「法の適用に関する通則法」の中には、次のように定めている条文があるのです。

 法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。(7条)

 この「法律行為」というのは難しい言葉ですが、とりあえずは「契約」だと思ってください。すると、↑の条文によれば、契約については、当事者が契約で選択した場所の法が適用されることになる、ということが理解できると思います。iOSソフトウェア使用許諾契約ではカリフォルニア州法が選択されていますから、「日本の法律によれば」この契約にはカリフォルニア州法が適用されるのです。

 これに対してあなたは、「そんなこと言われたって、『同意する』を選ばないとスマホを使えないから仕方なくそうしただけで、カリフォルニア州法が適用されるなんて知らなかったんだよ。」と反論するかもしれません。

 なるほど、確かにそうですね。そして、上で紹介した「法の適用に関する通則法」にも、「契約に定められていたら同意するしかないような人々」を保護するための規定も置かれているのです。

 それは、…と、これ以上の説明は止めておきましょう。ここでは、日本国内でごく普通に日常生活を営んでいるあなたも、日々国際私法に囲まれて生活をしているということが分かっていただければ十分です。

著書・論文紹介

『プレップ国際私法』

(弘文堂、2015年)

『演習国際私法 CASE30』(共著)

(櫻田嘉章=佐野寛=神前禎編著、有斐閣、2016年、担当した章:No.1-3)

『国際私法(第3版)』(共著)

(有斐閣、2012年)