学習院大学 法学部 | 法学科|政治学科

教員紹介Messages from Professors

法学科 教授

小出 篤Atsushi Koide

専攻:商法

出身地
愛知県
最終学歴/学位
東京大学法学部卒業/法学士
所属学会
日本私法学会、金融法学会、信託法学会
研究テーマ
会社法・金融法・信託法
担当科目
商法演習、特設演習、会社法1(法科大学院)など

法律学は「社会で役に立つ」?

 私の担当する「商法」とは、ビジネス活動のプレーヤー同士の関係について規律する法制度を研究する科目です。たとえば会社のしくみを規律する法制度(会社法)や、ビジネスの場面で使われるいろいろな取引のしくみを規律する法制度(商取引法)がその対象となります。また、私は、金融法、証券法、信託法といった領域にも強い関心を持っています。「ビットコイン」とか「フィンテック」とか、最近は特に注目すべき動きがいろいろとある分野です。商法で扱ういろいろな制度はいずれも、ビジネスを円滑に進めていくために工夫されてきた実務の叡智の結晶といえます。したがって、商法を勉強するということは、その背後にあるビジネスの考え方、いわゆるビジネスセンスを学ぶということでもあります。

 ところで、私は、大学を卒業した後、研究者の道に進む前、3年ほど銀行で勤務していた経験があります。3年働いたくらいでは、到底「実務経験がある」などと胸を張っていうことはできませんが、それでも仕事をしている中で、ビジネスパーソンとして(あるいはより広く社会人として)必要とされる能力、役に立つ能力とはどのようなものなのかということは、何となくわかりました。そこで思ったことは、世間でしばしば語られる「大学での勉強なんて社会では役に立たない」などということは決してないということです。

 これは私が商法という(上で述べたような)実務に近い分野を専攻しているから言っているわけではありません。

 確かに、商法のような実務に近い科目で学んだ知識は、それ自体がビジネスの現場で役に立つこともあるかもしれません。しかし、実務は日々変化していくものですから、大学で学んだ知識はすぐに陳腐化してしまいます。そして、知識は必要なときにはいつでも最新のものが学べますし、また、逆に言えば必要にならない限り本当の意味で身につくものではありません。得られる知識の面だけを見れば、なるほど「大学での勉強なんて社会では役に立たない」のかもしれません。

 しかし、社会において真に求められるのは、そういった小手先の知識ではなく、「問題を分析し、必要な情報を収集し、論理的に解決を導き、それを他者に伝えるという能力」なのです。

 たとえば、営業の仕事を見てみましょう。営業担当者は、顧客の直面している状況や問題を把握・分析し、その問題に自社がどのような商品を提供できるか、競合他社にはどのような商品があるか、などの情報を収集し、そうした情報をもとに自社の商品のセールスポイントを論理的に導きだし、そしてそれをお客さんに伝わる言葉で説明することが要求されます。

 このようなプロセスは、(専門分野を問わず)まさに大学での勉強において必要とされるプロセスと何ら違いはないのです。たとえば法律学では、ある紛争について当事者同士の主張やそれを取り巻く事実を分析し、それに関連する裁判例や学説を収集し、そこから論理的な解決を導いた上で、文章などの形で当事者が理解できるように説明する、といったプロセスを学んでいきます。大学、特に法学科は、このような本当の意味で「社会で役に立つ」能力の訓練を積むには最適な場所だと私は思います。

著書・論文紹介

「『分散型台帳』の法的問題・序論—『ブロックチェーン』を契機として」

『江頭憲治郎先生古稀記念・企業法の進路』(有斐閣、2017年)

『数字でわかる会社法』(共著)

(田中亘編著、有斐閣、2013年、担当した章:第5章「会社法のための会計入門」)