学習院大学 法学部 | 法学科|政治学科

教員紹介Messages from Professors

法学科 教授

小塚 荘一郎Soichiro Kozuka

専攻:商法

出身地
愛知県
最終学歴/学位
東京大学法学部/博士(法学)
所属学会
私法学会、海法学会、比較法国際アカデミー(AIDC)
研究テーマ
商法、会社法、宇宙法
担当科目
商法演習、特設演習(Transnational Commercial Law)

コンビニ契約から宇宙法へ:商法研究の旅

 大学の教授という肩書を持っていると、「先生のご専門は何ですか」と質問されることがあります。実は、これを聞かれると、私はいつも非常に困ります。

 大学では、「商法Ⅰ」「商法Ⅱ」といった授業を担当しています。その内容は、他の大学では、「会社法」という題名になっていることもあります。ですから、普通に答えるのであれば、私の専門は、「商法、会社法」ということになります。

 ところが、研究をして論文を書いたり、社会で発言したりしているテーマは、「宇宙ビジネスと法」「テレビ放送とインターネットの利用」「グローバルな法制度の普及」などさまざまな分野にわたっています。最近では、自動運転や仮想通貨をはじめとするAI(人工知能)の法律的な問題についても研究するようになりました。自分でも、どうして研究対象がここまで広がってしまったのかと思うこともあります。

 20代で研究者になったとき、最初に書いた論文は、フランチャイズ契約に関するものでした。いまでも、コンビニ業界については、法学部の他の先生方よりも詳しく知っていると思います。そんな私が、宇宙ビジネス法の分野に足を踏み入れたきっかけは、まったくの偶然でした。それは、自分が知らないことに手を出さないという堅実な選択ではなく、未知の領域でも、面白そうならば飛び込んでみようという度胸で勝負してきた私の研究者人生における小さなドラマだったのです。

 フランチャイズ契約について研究を始めたものの、うまくまとめることができず、苦しんでいた20代半ばの私に、あるとき、依頼が舞い込みました。国際条約(正確に言えば私法統一条約と呼ばれる条約)を日本の裁判所が適用した判決を英語で紹介してほしいというのです。依頼主は、私法統一国際協会(ユニドロワ)として知られる国際機関でした。ユニドロワは、1926年に、当時の国際聯盟の附属機関として設立された歴史のある組織で、日本人が歴代の理事として選出されるなど、日本も重要な役割を果たしてきています。

 英語もおぼつかないまま(留学生に直してもらったりして)、依頼に応えた私のところに、今度は、ユニドロワの年次活動報告が送られてきました。それを見た私は、思わず声を挙げました。その年度の活動内容に、「国際フランチャイズ契約のガイド」作成という項目があったからです。どんな活動が行われているのか、早速(当時はメールが一般的ではなく、FAXで)問い合わせた私のところに、しばらくして、数冊の英文資料が送られてきました。こうして、いつのまにか、ユニドロワのフランチャイズ契約に関する活動に参加することになってしまいました。

 数年後、いまや日本政府代表として、フランチャイズ・モデル法を作成するユニドロワの会議に出席していた私のところに、事務局の方が来られました。近々に、宇宙ビジネスに関する条約づくりの活動が始まる予定だけれども、日本からの参加者がないので、誰か適当な人を推薦してほしいというのです。ちょうど2000年頃で、日本は金融機関の不良債権問題に苦しんでおり、どこの企業も、直接には利益につながらない国際的な条約作成の会議に人を派遣するゆとりはありませんでした。そこで、私は、「とりあえず」適任者が見つかるまでのつなぎとして、自分が参加しようと決心しました。それが、宇宙ビジネス法の世界に関与していくきっかけでした。

 学生時代、あるいは受験前の高校時代から、「将来はこうなりたい」という目的意識をはっきりと持つことは、とても素晴らしいことです。しかし、10代や20代のうちに見えている世界は、実は、とても限られています。人生の中で、まったく偶然の出会いから、新しい世界が開けていくこともある。そして、そういう場面で、未知の世界へと誘われたとき、おそれずに飛び込んでいく勇気が、自分の人生に新しい可能性を開いていくことがあります。そういう度量のある皆さんを、大学のキャンパスで、少しでも応援できればと思っています。

著書・論文紹介

『支払決済法』

(商事法務、2018年に第3版予定)

『宇宙ビジネスのための宇宙法入門』

(有斐閣、2018年に改訂版予定)

『Implementing the Cape Town Convention and the Domestic Laws on Secured Transactions』

(Springer, 2017)