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教員メッセージMessage from Professors

元田 結花

政治学科 教授
元田 結花
Yuka Motoda
専攻:国際開発協力論

出身地
茨城県
最終学歴
University of Sussex/MPhil in Development Studies
所属学会
日本政治学会、国際開発学会
研究テーマ
開発援助の政治性
担当科目
国際開発協力論Ⅰ・Ⅱ、国際開発協力論演習など

国際開発協力論で何を学ぶのか:安易な解決方法の提示を超えて

私は国際開発協力論という科目を担当しています。主たる題材が開発援助政策であるため、「この授業を履修すれば、途上国の貧しい人々を助ける方法を知ることができる」と期待する学生も少なくないようです。開発途上国が抱える問題への対応を自分で調べて、現在盛んに取り組まれている「開発援助のアプローチ」がいかに途上国の人々を助けているのか、もっと知りたいと思って履修する学生も見うけられます。
残念ながら、私の授業を履修することによって、「途上国の人々を助ける方法」が分かるわけではありません。むしろ、援助を通じて途上国の開発を実現することが、いかに難しいのかを知ることになるでしょう。
ここでの「開発」は、開発途上国の現状に問題があるという認識から出発し、何らかの基準で「望ましい」とされる変化を促すことを目指して、そのための理論や方法論を考え、実践に移していく一連の試みを指します。望ましい変化をもたらすには外部からの介入が必要であるとされることから、開発をめぐる活動は、交渉や対立、協力を引き起こす極めて政治的な性質を帯びています。さらに援助という形で、「協力」の名の下に、そこに所属しない「他者」である援助供与主体(ドナー)が対象国・地域の開発過程に介入すれば、開発をめぐる行為主体間の関係は二重三重に複雑化していきます。現地に不案内な「他者」の介入によって、途上国側に負の副作用が及ぶことも珍しくありません。開発援助の歴史は、先行する政策の失敗を受けて「解決策」が提示されるものの、それも失敗に終わり、新たな「解決策」が提示されるというサイクルの繰り返しでもあるのです。
以上から、援助を供与すれば必ず相手国の開発に貢献するわけではなく、また最先端のアプローチを採用していることが優れているわけでもないことが分かるかと思います。むしろ、こういった議論の立て方から一歩引いて、援助政策がどのように形成・執行され、それが受け手側にいかなる影響をもたらしているのかを検討する作業こそが求められるべきであると考えられるため、国際開発協力論の授業もこのような視点に立って進めています。
なお、社会全般に関わる事象が「変化すべき対象」であり、開発の議論は学際的なものとなることから、授業では、政治学に軸足を置きつつも、他の領域での議論にも適宜触れていきます。政治学科が提供する授業との関係では、国際開発協力論Ⅰ・Ⅱを受講する前に、政治学・行政学・ 国際政治・国際政治経済・国際政治史等を履修しておいた方が、講義内容をより深く理解することができるでしょう。
専門演習では、特定のテーマを取り上げ、それに関連する事例研究を扱った英語文献を用いながら、当該テーマを多面的に分析する能力を養います。私の方から適宜説明を入れるので、英語だからと変に構える必要はありません。大学にいる間に、英語の専門書を最初から最後まで読破することに、是非挑戦してみてください。

著書・論文紹介

  • “Who Governs Policies towards the AIDS Crisis in Africa?: Comparing the Approaches of the US,the UK and Japan”University of Tokyo Journal of Law and Politics Vol. 7
    (東京大学大学院法学政治学研究科、2010年)

    国際経済、テロとの戦い、援助協調へのシフトといった要因を考慮しながら、米国・英国・日本の援助政策が、アフリカにおけるHIV/AIDS政策にどのような影響を及ぼしているのかを比較・分析しました。

  • 『知的実践としての開発援助:アジェンダの興亡を超えて』
    (東京大学出版会、2007年)

    私の助手論文に加筆・修正を施したものです。「現在の開発援助のあり方はどこか的外れなのではないか?」という疑問点を出発点として、開発援助の理論と実践を批判的かつ体系的に分析した本です。

  • 『EUの規制力』(共著)
    (遠藤乾・鈴木一人編、日本経済評論社、2012年)

    第11章「EUの国際開発援助政策に見る規制力の限界:利他性・規範性の後退」を担当。EUの規制力について多面的に考察した本です。私が担当した章では、利他的な立場から規範的価値を推進するというEUの開発援助政策に対する評価が、実際にあてはまるのかを分析しています。

  • “Governance of Development in African Countries under the Plural Aid Schemes: What is Emerging at the Confluence of the PRSP Approaches and HIV/AIDS Policies?”University of Tokyo Journal of Law and Politics Vol.9
    (東京大学大学院法学政治学研究科、2012年)

    現在の開発援助では、分野・テーマごとに政策決定手続きが制度化されていることに着目し、貧困削減政策(PRSPという文書にまとめられます)・HIV/AIDS対策を題材に、複数の過程が交錯する状況がアフリカの国家と社会に及ぼす影響を分析しました。