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教員メッセージMessage from Professors

村主 道美

政治学科 教授
村主 道美
Michimi Muranushi
専攻:国際政治

出身地
山形県
最終学歴
Ph.D. Yale University
所属学会
International Studies Association
研究テーマ
安全保障、沖縄、ジェノサイド、北朝鮮、中国、南アジア、東南アジア、中東
担当科目
国際政治

将来の戦争

ある日突然都心で大爆発が起これば、それが遠方から飛んできた爆弾によるものか、そうでないか、それが外から来たものならば、どの場所からいつ発射されいつ着弾したものであるかくらいは容易に分かり始める。そしてその発射された場所に報復することで、被害者は相手が先制攻撃から得るメリットをある程度減らし、対抗する意志を相手に伝えることができる。だが将来のサイバーの領域の戦争においては様相が異なる。
例えば全発電所が急停止したら、それが何等かの内在的な原因による可能性もあり、また攻撃による可能性もある。攻撃が内在的要因を装う可能性も、攻撃者であるAが、自分はBであるかのように装って攻撃をしかけている可能性もある。現在はその種の攻撃には高度な技術が必要であり、実行できる能力を持つ者が限られているかもしれないが、普通の人間がその攻撃をなしうるように将来なるかもしれない。男性─女性・子供の間で起こった武器の革命─剣や大きな銃を使うには一定の体力が必要であるが、ミサイルを発射するのはボタンを押せればよい─と類似の革命が、サイバー戦争において起こる可能性がある。
Bを装うAの問題は、Cを装うBを装うAの問題にもなりえ、誰かが自分を攻撃しているのだが、それが誰かわからない、という状態が起こりうる。都心で爆発が起これば、被害を受けた瞬間にそれを察知することになるが、サイバー攻撃の場合には、保菌者の潜伏期間中に拡散する感染のように、いくつものプログラムが、気づかないままに浸食され、ある時点で同時多発的に破壊されることもありうる。
攻撃を受けた側は何をすればよいのか。攻撃者が分かったとして、報復はサイバー攻撃なのだろうか、それともサイバー攻撃に対する通常の兵器による報復なのだろうか。日本の場合、サイバー攻撃をする能力は憲法9条の認めない「戦力」に当たるのだろうか、サイバー攻撃に対して日米安保は適用されるのだろうか。サイバー攻撃を受けた日本のために戦うアメリカが、誰に対して、何をするかは、アメリカが独自に決定できる問題なのだろうか。そのとき、沖縄に集中する米軍基地は化石のようなものではないか。核兵器の不拡散のような、サイバー攻撃技術の不拡散政策は可能か?
サイバー攻撃と通常攻撃の組み合わせも可能である。A国から飛んでくるミサイルが、A国からのサイバー攻撃によるコンピューター誤作動により、B国から飛んでくるように見えたとしたら、どうすればいいだろう。
サイバー攻撃では自作自演も容易である。自分に攻撃がかけられたかのように装いその防衛の名目で他国に攻撃するときその主張の真偽を検証しにくい。証拠も消しやすいだろう。おとり捜査的に、自己の弱点をわざと晒し相手に攻撃させてから報復することもありうる。戦争の進化は難問で、経験は部分的にしか役立たないのに、学者は過去を学び続け、未来学を非学問的として蔑ろにする。

著書・論文紹介

  • 「中国のナショナリズムと西部」
    (学習院大学法学会雑誌2016年3月)

    新彊ウイグル、チベットなどの中国の西部を、現代中国の民族主義がどのようにとり込んでいこうとしているかを論ずる。

  • 「現代中国の東南アジア政策と戦国時代の秦」
    (学習院大学法学会雑誌2016年9月)

    古代からの中国の拡大史と現代とが、共通の課題と政策につながりうると論ずる。

  • 「チベットの焼身自殺」
    (学習院大学法学会雑誌2015年9月)

    130件を越えて続いてきたチベット人の僧侶や若者などの焼身自殺と、現代中国社会とを論ずる。

  • “湎甸佛教徒与穆斯林冲突対其民主改革的影响” 
    (印度洋経済体研究、2014年第2期)

    ミャンマーの改革と仏教徒によるムスリム迫害、アウンサンスーチの役割、中国のミャンマーとの資源、パイプラインなどをめぐる関係、その他の国際関係がどのように連動しているかを考える。(中国語)