学習院大学 法学部 | 法学科|政治学科

教員紹介Messages from Professors

法学科 准教授

長戸 貴之Takayuki Nagato

専攻:租税法

出身地
埼玉県
最終学歴/学位
東京大学/法務博士
所属学会
租税法学会
研究テーマ
租税法と企業法
担当科目
租税法、租税法演習

租税法を楽しむ

将来役に立つ(といわれる)租税法

 租税法は、租税制度についての法ルールを学ぶ科目です。高校生や大学生のみなさんの中には、親御さんや周りの大人から「大学で税について勉強しておくといい」とアドバイスを受ける方がいるかもしれません。そのようなアドバイスは極めてまっとうで、ぜひ大学では租税法の勉強をしていただきたいと思っています。

 それでは、大学で租税法を勉強するとは具体的にはどういうことなのでしょうか? よくあるイメージは、嫌になってしまうほど細かくて複雑な租税法令を丸暗記したりひたすら解読するというものです。これはとんだ誤解です。進路として税理士やタックス・ローヤーといった税のプロフェッショナルを目指すならともかく、大学の法学部で勉強するにはややストイックすぎます。

租税法=総合科目?

 法学部での租税法の勉強は、法学のいろいろな科目や、法学の外にある経済学や政治哲学などの面白い科目をつまみ食いしながら、よりよい税の仕組みを考えてみる、といういわば総合科目としての性格を持っています。大学3・4年生になって租税法の講義やゼミを履修してみると、1・2年生の間に勉強してきたいろいろな科目の知識を総動員する必要があることに驚くかもしれません。租税法は、それまでに幅広く、たくさん勉強していればいるほど面白く勉強できる科目だといえます。

 では、具体的にはどのような意味で総合科目なのでしょうか?

租税を通じて正義を語る?

 まず、租税法は、分配的正義にかかる問いを扱います。租税は、国家が、誰かのポケットに手を突っ込んで、強制的に奪い取り、それを国家運営のための公共サービスの提供に充てるためのものです。また、富の再分配のために用いられることもあります。公共サービスがなくなると困る人は多いでしょうし、富の再分配をした方がいいと考える人もいます。日本でも消費税増税の是非をめぐる議論がされ、2016年のアメリカ大統領選挙のときなどにも税制をめぐって大いに盛り上がったことを覚えている方もいるかもしれません。誰もが自分の取り分が減るのは嫌なのに、その負担の基準をどうやって決めるべきなのか。誰もが考えるのを避けることのできない問題を扱います。

租税法はビジネス・ロー?

 租税法は、取引法(ビジネス・ロー)としての性格を有しています。「取引あるところに租税あり」とさえいえるほどに、租税は取引と密接に関係します。ある取引をするにあたって、租税負担を考慮にいれないと、痛い目に遭います。民法・商法・信託法・知的財産法など、他の科目の知識をフルに活用して、タックス・プランニングをしていくという、非常にエキサイティングな問題を扱います。また、最近では、Google, Apple, Amazonなど、タックス・プランニングに一生懸命になりすぎる企業の「税逃れ」や、超富裕層のタックス・ヘイブンを用いた脱税をめぐって、OECDやG20を中心に、世界各国が協調して対応していこうとする機運も高まっています。

租税を通じて経済学をかじる?

 租税法は、経済学と密接な関係を有しています。租税法を勉強すると、法学部にいながらにして経済学を少しだけかじることができます。具体的には、ファイナンス理論や厚生経済学の知見を参照することがあります。ある人に租税を負担させようとしても、その租税が「逃れやすい」ものであれば、税収を確保するという目的は達成できません。また、同じ額の税負担であっても、なんとなく負担感が違うということもあります。合理的な人間というものを想定して、租税が人々の行動に及ぼす影響を経済的に分析したり、行動経済学のように、必ずしも人間は完全には合理的でないといった現実を意識しながら、実験や実証データをもとによりよい税制へと結びつけていくための方策を考える、という問題を扱います。

租税法を楽しむ

 私の担当する講義やゼミは、これらの、重要で、そして、実生活に大きな影響を及ぼす問題について、大学卒業後も広い意味での勉強を継続できるようお手伝いしようとするものです。1・2年生の間に租税法を楽しく学べるようにするための基礎づくりをしっかりしていただいたうえで、3・4年生になったときに租税法の講義やゼミでお会いできればと思っています。楽しく知的興奮に満ちた学びの場を提供できると思います。

著書・論文紹介

「A General Anti-Avoidance Rule (GAAR) and the Rule of Law in Japan」

Public Policy Review Vol.13 No.1(Policy Research Institute, Ministry of Finance, 2017)

『事業再生と課税――コーポレート・ファイナンスと法政策論の日米比較』

(東京大学出版会、2017年)

  • 『事業再生と課税――コーポレート・ファイナンスと法政策論の日米比較』(東京大学出版会)