学習院大学 法学部 | 法学科|政治学科

教員紹介Messages from Professors

法学科 教授・法学部長

岡 孝Takashi Oka

専攻:民法

出身地
生まれは栃木県(長く生活したのは福島県)
最終学歴/学位
一橋大学大学院法学研究科博士課程・単位取得退学/法学修士
所属学会
日本私法学会、比較法学会、法制史学会など
研究テーマ
成年後見法、日独民法制定史、情報提供者の民事責任など
担当科目
法学部:ドイツ法、民法演習/法科大学院:民法入門1(総則・物権)、応用民法2(債権各論)

新たな高齢者支援に向けて

判断能力の減退とそれの対処法

 人は高齢になるにつれて判断能力が減退し、自分で財産管理(預貯金の出し入れとか賃料支払いなど)ができなくなるかもしれない。配偶者、成年の子だからといって当然に本人を代理して財産管理をすることは、現在の日本法では許されない。他人による支援ができるようにするために、財産管理については成年後見制度が2000年4月から導入されている。高齢者がすでに判断能力が衰えていて事務を処理できない場合には、民法に法定後見が規定されている。他方で、将来そのような事態に備えるために判断能力が十分なうちに契約を結んで、そのような事態になったならば代理行為をしてもらうという任意後見が特別法(任意後見契約法)として用意されている。

法定後見の問題

 ここでは法定後見を中心に述べると、判断能力の減退の程度によって、後見、保佐、補助の3類型が準備されている。判断能力が一番減退した場合の後見を例にとると、高齢者に家庭裁判所が後見人を選任すると、病院通いのためにバスに乗るとか野菜・食料品を購入するなど日常生活に必要な行為を除いて、すべて後見人が本人を代理して事務を処理することになる。

 ところが、日本が2014年に批准した国連障害者権利条約12条は他人の代理・代行を原則として認めない。そこで、この条約に適合するように、近い将来日本の成年後見制度の大幅な改革が必要となるだろう。ここで参考になるのが、2017年に成立したオーストリア「第2次成年者保護法」である。その中でも私は「任意成年者代理」という類型に着目している。これを参考にしながら日本法の改革の方向を示してみたい。

任意代理権の活用(私案)─代理とはいうが支援を中心に

 詳細は私の「主要著書・論文」を見てほしい。骨子のみ記しておこう。

  1. 意思能力の相対化
    個別の事務について他人への授権(代理権を与えること)を理解できるならば、その事務については意思能力があるとして、他人(近親者でも第三者でもかまわない)と契約を結んで代理権を与えることができるとする。代理人は当然に代理権を行使するのではなく、本人(授権者)を支援して、できるだけ本人に行為させる。身体の障害などで外出できない場合などやむをえない場合に限って、代理人が代理行為をする。
  2. 手間をかける労をいとわずに
    授権はできるだけ個別に行う。事務処理が終われば代理人の任務も終了させ、必要に応じてまた授権させる。次の3の法定後見も同様で、後見人の任期を定めるべきである。
  3. 法定後見の必要性
    判断能力が完全に衰えて、本人が自分の欲望に固執して不利益の危険を顧みないこともあろう。その場合に限って法定後見を発動させて後見人を選任し、家裁の監督のもとに後見人に代理行為をさせる(後見類型の法定後見のみ一部改正のうえ存続させる)。
  4. 任意代理人の監督
    家庭裁判所はマンパワー・事務処理の量から見てもはや監督する能力を超えている。早急に代替組織を検討すべきである。各地の成年後見センターなどに本人の意思能力、授権の適正さなどのチェック及び代理人に対する監督業務を任せるべきではないか。ただし、全国一律ではなく人材や予算に余裕のあるセンターから実施して、徐々にそのシステムを全国に及ぼしてくことが肝要である。

著書・論文紹介

「法定後見制度の見直し―オーストリアの改革案が示唆するもの―」

実践成年後見68号(民事法研究会、2017年)

『高齢者支援の新たな枠組みを求めて』(共著)

(草野芳郞=岡孝編著、白峰社、2016年、担当した章:第2章の中:論文名「国連障害者権利条約を踏まえた日本の成年後見制度の再検討―任意代理権の活用―」)