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教員メッセージMessage from Professors

鎮目 征樹

法学科 教授
鎮目 征樹
Motoki Shizume
専攻:刑法

出身地
埼玉県
最終学歴
東京大学大学院法学政治学研究科
博士課程単位取得退学
所属学会
日本刑法学会
研究テーマ
刑法・経済刑法
担当科目
刑法Ⅰ、刑法Ⅱ、刑法演習、特設演習(刑法入門演習)

法学部に入学し、刑法の魅力に触れてください

私の研究分野は刑法です。法学科では、刑法Ⅰ・Ⅱという科目を担当します。刑法とは、「犯罪」とは何か、国家がそれに対していかなる「刑罰」を科しうるのかを、文字で書かれたルール(法律)のかたちであらかじめ定めておくものです。
わが国では、たとえどんな悪事を行っても、それが犯罪であると法律に書かれていない限りは処罰することはできません。さもないと、人々は自らの振る舞いが犯罪に当たるのかを判断する術がなく、常に処罰の恐怖に怯えて生きることを強いられる(=自由を失う)からです。たとえば、泥棒や人殺しは、それぞれ窃盗罪や殺人罪という犯罪にあたり処罰の対象となりますが、それは立法府である国会がそのことをあらかじめ法律で定めているからです。
もっとも、ルールとして定めるといっても、そこに、ありとあらゆることを書いておくわけにはいきません。たとえば、盗みの対象となるものは、現金、絵画、電気製品…それこそ無数にありますが、そのすべてを「盗んではいけないものリスト」として書いておくことは不可能ですし、むしろ不合理です。それゆえ、刑法(明治40年4月24日法律第45号)では、これを「他人の財物」という一般的なかたちで記述しています(「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」というのが、刑法235条・窃盗罪の条文です)。
しかし、そこから問題が生まれます。それは、上の例でいえば、「他人の財物」とは何をいうのか(これをどのように定義するか)という問いです。たとえば、ペットの犬や猫は生物ですが、それは、「財物」に含まれるのでしょうか。他人のコンピューターの記憶装置に保存された情報を無断でコピーしたら、それは「財物」を盗んだことになるのでしょうか。盗みに対して科されうる刑罰はかなり重いですが、たとえば、ちり紙1枚を盗んだ場合、それは「財物」を盗んだことになるのでしょうか。これらの問いに答えるためには、「財物」とは何であるのかをより具体的に明らかにしていく作業が不可欠です。
(一例ですが)このような作業が刑法の「解釈」です。私が担当する刑法Ⅰ・Ⅱでは、刑法が現実の裁判においていかに解釈されているのか、さらに、あるべき解釈とはどのようなものかについて学説も参考にしつつ論じ、受講者の皆さんと一緒に考えます。それは、ある行為を処罰対象とするか否かという重大な結果に直結しますから、強固な説得力をもち、誰もが納得できるものであることが必要です。そのためには、結論において妥当であるだけでなく、なぜそのように考えるのかという理由においても筋が通っていることが求められます。
あるべき解釈を提示することは簡単なことではありませんが、これまで裁判実務・学説においてはきわめて精緻な議論が積み重ねられてきました。そこには、社会的に重要な意義のみならず、知的興奮を覚える面白さがあります。
法学部に入学し、ぜひその魅力に触れていただければと思います。

著書・論文紹介

  • 「ソフトウェアの無断インストールと不正指令電磁的記録に関する罪」 
    研修792号(誌友会研修編集部、2014年)

    最近の刑法改正で導入されたいわゆるコンピュータ・ウイルス罪をめぐる解釈上の問題について検討しました。

  • 『アクチュアル刑法各論』(共著)
    (伊藤渉、鎮目征樹、小林憲太郎、齊藤彰子、島田聡一郎、成瀬幸典、安田拓人著、弘文堂、2007年)

    第1編第1章第4節、第6章第7~9節、第2編第1章、第2章、第3章第1節を担当。同年代の研究者と共同執筆した刑法各論分野のテキストです。

  • 「公務員の刑法上の作為義務」
    研修730号(誌友会研修編集部、2009年)

    薬害エイズ旧厚生省ルート事件最高裁決定を素材とし、企業が患者の生命・身体に有害な医薬品を回収しなかったことによって患者の死亡等の結果が生じた場合に、企業を監督する立場にある官庁の公務員が「不作為」の刑事責任を負うのはどのような場合かという問題を巡ってなされてきた議論につき検討を加えました。

  • 『アクチュアル刑法総論』 (共著)
    (伊藤渉、鎮目征樹、小林憲太郎、成瀬幸典、安田拓人著、弘文堂、2005年)

    第1章・第2章を担当。同年代の研究者と共同執筆した刑法総論分野のテキストです。