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教員紹介Messages from Professors

政治学科 教授

庄司 香Kaori Shoji

専攻:アメリカ政治

出身地
東京都
最終学歴/学位
コロンビア大学 政治学Ph.D
所属学会
日本政治学会、日本比較政治学会、日本選挙学会
研究テーマ
アメリカの政党、選挙、市民運動
担当科目
アメリカ政治Ⅰ・Ⅱ、アメリカ政治演習ほか

アメリカ政治の「なぜ」を解く ~トランプ大統領誕生を可能にした制度的背景

 世界の人たちがアメリカの民主主義についてもつイメージは、過去数十年間に劇的に変わりました。冷戦期には、アメリカは西側の自由社会を代表する「民主主義のモデル」を自認していました。しかし、冷戦が終結すると、世界はアメリカの優越性の呪縛から急速に解き放たれていきました。2000年の大統領選挙では、開票集計もスムーズにできないアメリカの姿に、いわゆる「途上国」の人びとも含め世界が驚愕しました。2008年大統領選挙でオバマが当選すると、建国以来初の黒人大統領を生み出したアメリカを世界は少し見直しましたが、2016年大統領選挙で差別発言や誤情報をTwitterで垂れ流すトランプが当選したことは、アメリカ国内外の多くの人にとって衝撃でした。

 現代のアメリカでは二大政党のいずれかの公認候補者にならない限り、現実的には本選挙でほとんど勝機がありません。「トランプ大統領」の誕生は、候補者指名過程の究極の民主化と言われる、アメリカ型予備選挙制度によって可能になったのです。予備選挙には有権者なら誰でも投票でき、政党のリーダーたちがこの結果を無視して密室で候補を決めることはできません。では、アメリカの政党リーダーたちは、自分たちの手足をしばる予備選挙制度をなぜ導入したのでしょう。授業では、現代アメリカ政治から浮かび上がるさまざまな「なぜ」にいどみます。

 学部生用の講義では「アメリカ政治」のⅠとⅡを担当しています。「アメリカ政治Ⅰ」では、フォーマルな制度的側面を中心に扱います。最初にまず、アメリカの憲法がどのようにして形作られたのか見ていきます。現代のアメリカ政治を考えるために、建国期にまでさかのぼって憲法の成り立ちを理解しようとすることが必要なのか? と思う方もいるかもしれません。

 実は、アメリカは建国以来200年以上も(わずかな修正を加えるだけで)同じ憲法を使い続けている世界的にも珍しい国です。建国期にどのような意図で政治制度が設計されたのかを考えることは、制度が時間を超えてもつ影響力を観察し、制度設計がもたらした意図せざる結果について検討する助けとなります。

 次に、授業では「市民的自由」と「市民的権利」の概念について紹介します。アメリカの学生なら法律専攻でなくても誰もが知っているようないくつかの有名な判例を通じて、変わらない憲法の文言を根拠に保証される自由や権利のあり方が歴史的にどう変わってきたのかを概観します。

 そして、いよいよ連邦議会、大統領、官僚制度、司法府について詳しく学んでいきます。連邦議会の制度設計や実際のルールを知ることは、政治のアウトプットに生じるバイアスを理解するうえで重要です。大統領のフォーマルな権限を学ぶことで、大統領・議会関係の歴史的変遷も理解できるようになります。日本とは規模がちがう政治任用と官僚組織への影響についても、大統領や議会による民主的統制という角度から考えていきます。

 最後に、アメリカ政治においては、裁判官もまたきわめて政治的なアクターであるということを、判事の選出方法を軸に考察します。

「アメリカ政治Ⅱ」では一転して、アメリカ政治を規定するさまざまなインフォーマルな要素をみていきます。例えば、世論やメディアの果たす役割という角度から、アメリカにおける女性の政治進出(とその停滞)について考えてみます。また、移民の国であるアメリカをひとつに統合する理念の変遷や、アメリカ独特の「保守」と「リベラル」のあり方についても紹介します。

 そうした政治文化の上に成り立つ政党もまた、憲法の中には言及されないという意味ではインフォーマルな存在です。二大政党制の典型例として言及されることの多いアメリカの政党の変遷と特徴は、アメリカ政治のもうひとつの重要なアクター、利益集団との対比のなかでよりよく理解することができます。

 多様な利益を代表する多様な政治的アクターたちが繰り広げる、多様な権力関係とそれを映し出す「政策決定過程」は、これまで学んだすべてが有機的につながるひとつのハイライトです。アメリカ政治の制度や現実を知ることにより、アメリカ政治の「なぜ」を解く力がつきます。ぜひ一緒に探検しに来てください。

著書・論文紹介

『現代アメリカ 日米比較のなかで読む』(共著)

(渡辺靖編、新曜社、2014年)

「変容するティー・パーティー運動と2012年共和党連邦上院予備選挙」

法学会雑誌48巻2号(学習院大学、2013年3月)

「世界の予備選挙─最新事例と比較分析の視角─」

選挙研究27巻2号(木鐸社、2011年)

「日本の二大政党と政党候補者公募制度─自民党宮城県連の経験が示す制度のエボリューション─」

法学会雑誌48巻1号(学習院大学、2012年9月)