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教員メッセージMessage from Professors

数土 直紀

政治学科 教授
数土 直紀
Naoki Sudo
専攻:社会学

出身地
神奈川県
最終学歴
東京大学大学院社会学研究科/博士(社会学)
所属学会
日本社会学会ほか
研究テーマ
階層意識に関する数理・計量分析
担当科目
社会学、社会学演習、政治学科基礎演習ほか

人生、迷うことばかり

私が大学を卒業してからずいぶんと時間が経ちましたが、今でもときどき大学時代のことを思い出すことがあります。しかし思い出すといっても、思い出されることは必ずしも楽しいことばかりではありません。むしろ、ほんとうはあまり思い出したくない嫌な思い出の方がしばしば胸中に去来するものです。
実際に大学時代は、勉学についても、課外活動についても、そして人間関係についても、うだうだと迷ってばかりいて、いろいろと悩み多き青春時代を過ごしました。おまけに、迷いに迷った挙句に選択したことがだいたい失敗に終わって、いつも後悔ばかりしていました。思い返せば思い返すほど、恥ずかしさで顔から火が出る思いです。
もしいま大学時代に戻って、一からやり直すことができたとしたら、勉学についても、課外活動についても、そして人間関係についても、もっとうまくこなすことができ、有意義なキャンパスライフを過ごすことができるのではないかと思っています。でもそれだけ後悔しているからといって、またかりに人生をやり直すことができたとして、ほんとうに人生をやり直したいと思っているのかというと、実は必ずしもそうではありません。失敗と後悔の繰り返し、それが私の大学生時代だったのですが、そのときの経験が今の私に役立っていることを実感しているからです。ほんとうに嫌なことだったら、きっと思い出すことなんてできないでしょう。“ああ、昔はあんなことしていたんだな”と苦笑できるからこそ、思い出すことができるのだと思います。
もし一度も失敗せずに人生を過ごすことができれば、そして何についても後悔せずに最後まで生き抜くことができれば、それはそれで有意義な人生だといえるかもしれません。でももしかすると、それは刺激がなくて、つまらない人生なのかもしれません。実際に一度も失敗しない人生なんてありえないだろうし、だとすれば一度も後悔せずに人生を終えることも難しいでしょう。多くの失敗と数えきれない後悔を含めて私の人生だし、人生の成功と喜びはつねにそうしたものとともにありました。だから失敗も後悔も自分のものとして受け入れることができます。
本当はこんな風に学生に向かって人生訓らしきものを垂れるのは好きではないのですが、でも折角だからひとつアドバイスさせてください。
“学生時代は、いっぱい迷って、いっぱい失敗してください。”
迷うことを嫌がる必要はありません。失敗を恐れる必要もありません。学生時代は、まだそれが許される時期だと思っています。むしろ学生時代は、多くの失敗と後悔からたくさんのことを学ぶ時代だと思っています。もちろんそれと同時に、キャンパスライフを充実させ、楽しい思い出もいっぱいつくってください。皆さんと学習院のキャンパスでお会いできることを楽しみにしています。

著書・論文紹介

  • 『信頼にいたらない世界 権威主義から公正へ』
    (勁草書房、2014年)

    選択肢が増えたために、かえって適切に選択することが難しくなった現代社会の状況を問題にしています。自由であることの困難を乗り越えるために、人びとが信頼によってむすびついていることの重要性を指摘しています。

  • 『自由という服従』
    (光文社、2005年)

    人は自由になったからといって、服従から解放されるわけではなく、場合によってはより徹底的に他者に服従してしまうことになると論じた図書です。出版時は新書でしたが、今は電子版で入手できます。

  • 『日本人の階層意識』
    (講談社、2010年)

    タイトルにあるように、日本人の階層意識の変化について論じた図書です。1980年代には中流社会だと思われてきた日本が、2000年代になって格差社会となった理由を人びとの意識に注目して分析しました。

  • 『理解できない他者と理解されない自己 寛容の社会理論』
    (勁草書房、2001年)

    異質な他者とどのようにして共に生きていくのかを考察した図書です。協力や信頼に関する先行研究をもとにして、理論的に他者との共生の可能性を明らかにすることを追求しました。