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教員メッセージMessage from Professors

津村 政孝

法学科 教授
津村 政孝
Masataka Tsumura
専攻:刑事訴訟法

出身地
山口県
最終学歴
東京大学法学部
所属学会
日本刑法学会
研究テーマ
証拠法
担当科目
刑事訴訟法

法律家と普通の人

2009年に裁判員裁判が始まりましたが、それに先立って各地で裁判員裁判の模擬裁判が行われました。その結果として明らかになったことがあります。法律家のものの考え方と普通の人のものの考え方がどうも違うらしいということです。藤田政博先生が「論点主導型」と呼ばれる裁判官と裁判員が行う判決を出すための協議の仕方があります。その特徴は(岡田悦典ほか『裁判員裁判制度と法心理学』190頁)、
・法律家により、話し合うべき論点が呈示される、
・法律家には、各論点の議論すべき順番、論点ごとの組み合わせと最終的な結論との対応が容易に理解されるが、市民には見えていない、
・論点ごとに賛否が問われ、前の論点での結論が後の論点でとれる立場を制約する、
・論点ごとに多数決等によって裁判体の意見が決定される、
・全体の結論は、各論点の結論から必然的に決まる、
・全体の結論についての意見が問われるのは最後の段階である、
・証拠から事件全体を説明できるストーリーを構築することに重きが置かれない、
というものです。勘の良い人は気づいたでしょうが、一般の人の発想は最後に出てきた、すべての証拠をもっともうまく説明するストーリーを真実と考えるというもので、アメリカの陪審裁判の研究から明らかになりました。一般の人がものごとを全体として捉えるのに対して、法律家はいわば全体を論点という部分に分割してそれぞれについて決着をつけていきます。法律家になるということは、論点主導型の思考を身につけることでして、大学の法律学の試験で良い成績をとるためにはこうした思考ができることが必須なのです。逆に言えば、こうした思考ができれば、立派な法律家の思考といえるでしょう。しかし、一般の人の考え方とは違う。なぜ、論点主導型の思考が必要なのかを、法律家はきちんと説明しなければならないはずです。はたして、法律家はこれをなしえているか?
また、法律家は先例を重視します。あるいは重視しすぎると一般の人びとから思われているかもしれません。人びとが未来志向であるのに対して、法律家が過去に目を向けていることはある意味で真実です。しかし、これにもきっと理由があるはずです。人は公平を求めます。とくに日本人は公平を強く求めるという見方もあります。はたして、それで未来志向に徹することができるのか?
このように、法律家が当たり前と思ってとくに意識してこなかったことを明確に意識しながら、一般の人に法ないし法律学の特殊性を説明しなければならない時代になったようです。これをきちんと説明することができれば、法律や法律家を嫌う人が減らせるかもしれません。

著書・論文紹介

  • 「DNA鑑定」法学教室351号
    (有斐閣、2009年)

    新たなDNA鑑定によって足利事件の再審が開始したので、再審で用いられたDNA鑑定を説明し、有罪判決後の鑑定資料の保存や資料へのアクセスをどのように認めるかについて、アメリカの状況を説明しました。

  • 「DNA鑑定」法学教室294号
    (有斐閣、2004年)

    拉致被害者の横田めぐみさんの遺骨として提供されたものがDNA鑑定によって別人と判明したので、DNA鑑定の歴史や用いられた鑑定方法を説明し、諸外国でのDNA鑑定利用のあり方を説明しました。