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教員メッセージMessage from Professors

常岡 孝好

法学科 教授
常岡 孝好
Takayoshi Tsuneoka
専攻:行政法

出身地
三重県
最終学歴
東京大学法学政治学研究科
博士後期課程単位取得満期退学
所属学会
公法学会、日米法学会
研究テーマ
行政手続法、行政審判法、薬事法、森林法
担当科目
行政法、環境法

行政法を通して社会の仕組みを知ろう─耐震偽装事件の建築士に対する処分と行政法─

何年か前の話でもう忘れている人も多いと思います。建築士がウソの構造計算書を作成したため、耐震強度を満たさないマンションが多数建設され、大きな社会問題となりました。建築士は、一方で、刑事裁判に付されるとともに、他方で、建築士の業務の停止や免許の取消などの行政処分に付されることがありました。
そうした中、札幌のケースは特異な展開を見せました。偽装構造計算書を作成した札幌の二級建築士の関係で、彼に構造計算を依頼した一級建築士が建築士の免許を取り消されました。
この一級建築士は免許取消に不服で、行政訴訟を提起して最高裁まで争いました。その言い分は、業務停止ならまだしも免許取消は行き過ぎだ、また、免許取消の理由がおかしい、というものです。1審、2審では、免許取消に違法な点は無いとして原告は敗訴しました。当然の判断のようにも思えます。
ところが、最高裁で結論が逆転しました。最高裁は、原告勝訴判決を下したのです。これには関係者もびっくりです。いったいどんな論理で原告勝訴となったのでしょうか。
簡単に言うと、免許取消の際に示された理由が不十分であったというものです。「あなたは・・・北海道札幌市東区北○条東×丁目△-△を敷地とする建築物の設計者として、構造計算書に偽装が見られる不適切な設計を行った。このことは、建築士法第10条第1項第2号及び第3号に該当し、一級建築士に対し社会が期待している品位及び信用を著しく傷つけるものである。」という理由が示されていたのですが、これでは不十分だというのです。最高裁判決は、免許取消の際に処分基準を当てはめた場合の判断内容を理由として示さなければならないとしたのでした。
さて、建築士に対する免許とは何でしょうか。何のために免許制度があるのでしょうか。免許が取り消されるとどうなるのでしょう。免許取消に不満ならどうやって争ったらよいのでしょう。業務停止や免許取消に関係する処分基準とは何でしょうか。それは法律なのでしょうか。
この処分基準はパブリック・コメント手続を経て制定されたのですが、パブリック・コメント手続とは何でしょう。疑問はつきません。
これらの問題を解決するのが行政法です。行政法は、行政が様々な公的な目的を実現することを目指して活動する際に関わってくる様々な法的問題を取り扱います。行政はどのような組織になっており、どのように活動し、その際、どのような法的制約を受けるのかについて勉強します。
また、行政がこの制約を踏み外した時に被害者はどのようにして救済を受けたらよいのかについても検討します。行政法を勉強することで国や自治体の仕組みやはたらきがよりよく分かるようになり、また違法な行政活動から身を守ることができます。

著書・論文紹介

  • 「裁量権行使に係る行政手続の意義──統合過程論的考察」
    『行政法の新構想』所収(有斐閣、2008年)

    裁量権行使の統制においては各構成要素に応じた手続的統制が重要で、特に理由提示の公表システムの制度化が有益で、これにより実効的な個別統制基準の体系化が進むと論じています。

  • 『パブリック・コメントと参加権』
    (弘文堂、2006年)

    行政機関が定めるルールについて誰でも意見を述べ影響を与えることができる仕組み(パブリック・コメント制度)の下で、市民に「情報参加権」が保障されることを提唱したもの。

  • 『行政救済法(第2版)』
    (共著)(高木光、櫻井敬子、常岡孝好、橋本博之著、弘文堂、2015年)

    第3章、第4章の行政手続法、行政不服審査法の部分を担当。行政活動が引き起こす被害につき市民を救済するための法律について、同門の4人の研究者で共同執筆したもの。

  • 「司法審査基準の複合系」
    『法治国家と行政訴訟—原田尚彦先生古稀記念』所収(有斐閣、2004年)

    行政法の泰斗原田尚彦教授古稀記念論文集に収録された論考。行政法の基本概念である「行政裁量」について、司法審査密度という観点から再構成し、その適切な統制の在り方を探ったもの。

  • 「死刑確定者の発信申請信書の返戻と拘置所の規律秩序の維持」