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教員メッセージMessage from Professors

若松 良樹

法科大学院 教授
若松 良樹
Yoshiki Wakamatsu
専攻:法哲学

出身地
宮城県石巻市
最終学歴
京都大学大学院法学研究科/博士(法学)
所属学会
日本法哲学会、日本倫理学会、その他
研究テーマ
法哲学、とりわけ現代正義論
担当科目
法哲学、法哲学演習

自分にとって分からないことを考えるから楽しい

私の専門は法哲学です。私自身は法哲学が大好きで、法哲学のことを考えているだけで幸せなので、ふと気づくと30年以上も法哲学と付きあってきました。これでご飯が食べられているので、学習院大学には(少しだけですが)感謝しています。
こんな法哲学バカの私ですが、法哲学とは何かを説明しようとすると、途端に困ってしまいます。法哲学は大変珍しい分野ですので、耳にしたことがない人も少なくないことでしょう。一般的にわかりやすいのは、M.サンデルさんの白熱教室で議論されていたテーマという説明でしょう。ただし、私は彼ほど雄弁ではありませんし、人の名前と顔にはあまり関心がないので、それらを覚えることが致命的に苦手です。ですので、私の講義では「マイク、君は死刑に反対だと言っていたけど、その理由をみんなに説明してくれるかい」などといった類のシーンは絶対にありません。
法哲学を説明するのが困難な一つの理由は、法哲学が明確な対象をもたないということがあります。むしろ、対象のことがよく分からないからこそ、法哲学をやっていると言った方が正確かもしれません。たとえば、死刑を正しい(不正だ)と確信している人にとっては、死刑について哲学的に考える必要はないでしょう。その人たちにとって必要なのは、自分の主張を補強する、あるいは反対説を批判するための刃を研ぐことかもしれません。
これに対して、法哲学者であれば、刑罰とは何だろうか、死刑とはなんだろうか、殺すということと刑罰とは両立するのだろうか、といった類のことを考えて、自分の確信の足下をどんどん掘り崩していくことに喜びを感じるでしょう。
もちろん、法哲学者が伝統的に取り組んできた問題のカタログのようなものは存在します。法哲学のイメージをつかむのには、それらの問題集を見ることは有益であるかもしれません。しかし、私は既存の問題集を解くことよりも、自分でパズルを作り上げ、回答するために苦闘する方が好きです。私にとって法哲学とは自分にとって分からないことを自分の頭で考えることだからです。それが何の役に立つのかはわかりませんが、私にとってはとても楽しいことです。
もし何もかもが分かってしまったら、法哲学みたいなものは不要になるのでしょうか。そのようなことは考えにくいでしょうが、その場合でも私は全力を尽くして、「分からないことがないとはどのようなことか」を考えると思います。私は謎が大好きだからです。

著書・論文紹介

  • 『センの正義論』
    (勁草書房、2003年)

    ノーベル経済学賞を受賞したA.センの理論が正義論においてどのような意味を持つのかを検討した。経済学を正義論の観点から検討する必要性を示した。

  • 『政治経済学の規範理論』(共著)
    (須賀晃一共著、勁草書房、2011年)

    第一章「原初状態再考1:なぜ確率を使わないのか」を担当。J.ロールズは原初状態において、期待効用理論を排し、マキシミン原理を用いたため、集中砲火を浴びたが、事象の独立性の不在という観点から読み直すことによって、ロールズの理論の救出を試みた。

  • 『合理性、自由、パターナリズム』
    成城法学74号(成城大学法学会、2005年)

    経済学の法学にとっての価値を検討するため、経済学によるパターナリズム批判を手がかりに、個人の選択をどのように経済学が擁護しているのか、その擁護は説得力があるのかを分析した。

  • 『自由放任主義の乗り越え方』
    (勁草書房、2016年)

    自由放任主義とパターナリズムの間の隘路を、合理性の観念を見直すことによって切り開く。