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教員メッセージMessage from Professors

安村 勉

法科大学院 教授
安村 勉
Tsutomu Yasumura
専攻:刑事訴訟法

出身地
東京都
最終学歴
上智大学大学院博士後期課程
所属学会
日本刑法学会
研究テーマ
陪審制・参審制・裁判員制度
担当科目
刑事訴訟法

変革期の刑事訴訟法

刑事訴訟法は今、変革期です。第二次世界大戦後、現行憲法の施行に対応して、1922年制定の刑事訴訟法が1948年に全面改正されました。その後、半世紀にわたって、大きな改正は行われませんでした。もっぱら、実務における条文の解釈・運用によって、さらには裁判所の判例によって、時代に対応してきたのです。しかし、その刑事訴訟法も、1999年の通信傍受法の制定を嚆矢として、法改正の時代に入りました。それまで不動であった立法が動き始めたのです。これは、東西冷戦が終わって、国会の在り様が変わったことと無縁ではないでしょう。2000年からは犯罪被害者の保護のための法改正が続きます。とりわけ、司法制度革審議会が2001年に公表した「意見書」に基づいて2004年に新しく導入された裁判員制度は、刑事訴訟の在り方を大きく変えるものでした(裁判員裁判の開始は2009年5月)。裁判に一般市民が直接加わって有罪無罪、さらには量刑について判断する。こうした国民参加の例は、諸外国では普通のことです。しかし、たとえばフランスのように、国民が刑事裁判に直接参加する制度が導入されるには「革命」、すなわちフランス革命が必要でした。裁判員裁判の導入というのは、たいへんなことなのです。しかも一滴も血を流していません。
裁判員制度の導入に伴って、起訴前の被疑者に対しても国選弁護制度が拡大され、裁判を迅速・円滑に進めるために公判前整理手続が新設され、訴訟当事者の手持ち証拠を相手方に開示する制度が大幅に拡充され、裁判が集中的・連日的に開廷できるようになりました。検察審査会が検察の意思に反して被告人を起訴できるようになったのもこのときです。これらは、いずれも立法が沈黙していた半世紀の間、懸案事項とされてきたことです。
立法の動きは止まりません。最近では、法制審議会の諮問を受けて2011年に「新時代の刑事司法制度特別部会」が設置され、そこでの調査審議を受けて、2016年にさらなる刑事訴訟法改正が行われることになりました。捜査機関による被疑者の取調べの一部が録音・録画されるようになり、協議・合意制度や刑事免責制度等が導入されましたし、通信傍受法も捜査機関に使いやすいものへと改められました。
これらの変革は、諸外国では既に導入されている制度に倣っただけで、やっと日本の刑事司法もグローバル化への道を歩み始めた、と見ることができるかもしれません。逆に、日本の刑事司法の良さも同時に失われていく、と見ることができるかもしれません。どのように評価するかは、今後の運用を見なければなりません。そして、その評価をするのは、きっと私のような高齢者ではなく、これから大学に入って未来を背負ってゆく皆さんです。

著書・論文紹介

  • 『通信・会話の傍受』 ジュリスト増刊・刑事訴訟法の争点
    (有斐閣、2013年)

    標題に関する法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会の議論を整理した。

  • 『通信傍受法改正と捜査』 法律時報88巻1号
    (日本評論社、2016年)

    標題に関する法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会の議論を整理した。

  • 『自白事件の処理』 刑事法ジャーナル45号
    (成文堂、2015年)

    標題に関する法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会の議論を整理した。