教員紹介

福井 憲彦  教授

福井 憲彦 兼任教授
FUKUI,Norihiko
西洋近代史

■略歴

1946年11月26日生まれ
1965年 東京都立戸山高等学校卒業
1970年 東京大学文学部西洋史学科卒業
1974〜1976年 フランス政府給費留学生としてパリ第一大学に留学
1977年 東京大学大学院人文科学研究科(西洋史学)博士課程中退
      東京大学文学部助手、東京経済大学経済学部助教授を経て、
1988年 学習院大学文学部史学科の一員となる
2007年 学習院大学学長に就任

■研究テーマ・分野

  フランスを中心とした西洋近現代史。より専門的なテーマは、大きく括ると2つになる。第1は、19世紀を中心にしたフランスの場合を事例として、産業化や国民化の過程が、社会と文化にどのようなインパクトを与え、どのような可能性を開くとともに、またどのような問題を生みだしていったのかを、多面的に明らかにすること。これは、幕末・明治以降の日本の場合との比較対照を念頭においており、また20世紀末の現代世界がかかえている課題もまた念頭においている。第2は、第1のテーマをより具体的に、都市と農村の社会的・文化的変容に焦点をすえて、比較史的な考察を行うこと。これも、現代世界における都市開発、環境創造のゆたかな可能性を求めるという、現在の課題を念頭においている。  

【近年の主要講義・演習】

西洋史演習:西洋近代史の諸問題
基礎演習:歴史の学び方
史学概論
史資料入門

■主要業績 

【著書】
1986年 『時間と習俗の社会史』 新曜社
1987年 『<新しい歴史学>とは何か』 日本エディタースクール出版部
1990年 『鏡としての歴史』 日本エディタースクール出版部
1996年 『時間と習俗の社会史──生きられたフランス近代へ』 ちくま学芸文庫
1999年 『世界史リブレット46 世紀末とベル・エポックの文化』山川出版社
2001年 『改訂新版 歴史学の現在』 放送大学教育振興会

2005年

『ヨーロッパ近代の社会史』岩波書店
2006年 『歴史学入門』岩波書店
 
【共著】
1998年 『アメリカとフランスの革命』 中公公論社世界の歴史21
2000年 『地中海都市周遊』中公新書
『高校教科書 世界史B』 東京書籍
 
【編著書】
1995年 『歴史の愉しみ/歴史家への道──フランス最前線の歴史家たちとの対話』 新曜社
2001年 『フランス史』 山川出版社新版世界各国史12
 
【共編著】
1995-96年 『世界歴史大系 フランス史』全3巻 山川出版社
 
【訳書】
1990年 フィリップ・アリエス 『図説 死の文化史』 日本エディタースクール出版部
1992年 ロジェ・シャルチエ 『読書の文化史』新曜社

■私の授業について

 学長に就任したために、授業は兼任として大学院の西洋史特殊研究(2単位)のみを担当します。積極的な学部学生にもオープンな授業科目です。

 西洋史を学ぶことについての私の考え方を、最後に参考までに付けておきます。

 日本では明治以来、日本史と東洋史、西洋史という区分が取られてきた。では、東洋とは何を指し、西洋とはどのような範囲を指しているのか。これは、少し専門的な考え方からいえば、歴史を考察するにあたって、空間の枠組みをどのように取ればよいのか、という点にかかわっている。たとえば、オリエントの歴史といった場合、古代オリエントの場合には日本では西洋史の枠組みに入っていることが多い。けれども、ササン朝ペルシアとか、さらにイスラムが登場する時代以降になれば、古代オリエントと同様の地理的範囲にかかわっていても、東洋史に含み込まれているほうが一般的だろう。
  つまり、地理的な区分が時代を超えて一般的な定義のように通用するわけではない、ということである。日本で一般に取られてきた三区分は、近代以降の日本における、ある世界の見方とかかわっているのだという点に注意したい。だから海外に行った場合に、この種の区分が通じるとは限らない。
  さてそのうえで、日本で西洋史がカバーしている範囲とは、ヨーロッパ世界を中心にして、さかのぼれば古代ローマ帝国からさらに古代ギリシアを経て古代オリエントまで、現代に近づく方向では、いわゆる大航海時代を経て植民地支配の対象になった非ヨーロッパ地域や、南北アメリカまでを含んでいることが一般である。
  だからその範囲は膨大で、テーマを考えても、日常生活に関するさまざまなことがらから、政治支配や経済関係、あるいは異界のイメージにいたるまで、皆さんはよい時代にいるというべきか、タブーはない。しかし、これらを全部一人で研究するなどということは、神ならぬ身には不可能である。そこで各人は、自分の現在の問題関心に沿って、それぞれのテーマに取り組むことになる。
  たとえば、現在の生活の中で当たり前のように我々が使っているものがない状態を考えてみよう。いまでは、水は水道の蛇口から出るのが当たり前、電気がつくのも当たり前、電話があるのも当たり前。
  しかしいずれも、ほんの少し前までは全然当たり前ではなかった。では水道が普及するのは、どのような歴史的背景においてだったのだろうか。単なる便利さの追求だろうか、それとも衛生観念や社会秩序の考え方までかかわっていなかっただろうか。電話の普及は、人々の社会関係のあり方や行動形態をどのように変えたのだろうか。あるいはそれらの普及は、どのような技術状態や経済力、あるいは政治力を背景にもっていたのだろうか。
  このような問いは多様に広がりうるし、また、歴史的な過去を知るうえで重要であるばかりでなく、現在の我々の時代の歴史的な位置を理解するにも大切だろう。

 ではなんで日本のことでなく、西洋の歴史なのか。これには、幾種類かの答えがありうるだろう。
  第1に、日本の位置や特質をとらえるには、日本だけ見ていてもダメで、ほかの世界を正確に知って比較の目を養う必要がある。第2に、近代社会や産業社会の仕組みを生み出したのはヨーロッパであった。その限界や問題点と、可能性の双方を正確につかむことは、地球の未来にとって大きな課題である。第3に、西洋文明は善かれ悪しかれ世界の歴史の展開に大きな力を行使してきた。しかし西洋といっても、地中海と北欧とでは自然条件も違えば、人々の暮らしぶりや気質も違う。いまEUが問題となっているように、ヨーロッパにもある種の一体感があると同時に、その内部には多様な違いが含まれている。この西洋文明の歴史的な特質を、その内部の多様性や差異をしっかり踏まえ、非西洋文明世界との関係を視野においてとらえることは、やはり重要な現代のテーマだろう。
  これは何も西洋史に限ったことではないが、歴史をたずねることで現代がはっきり見えてくるようになる。これはまさに、未来にとって意味のある知の楽しみではないだろうか。

 

Key words: the industrialization and nationalization, the society and culture in 19th century's France, the comparative study of social and cultural transformation in urban and rural societies



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