教員紹介

鐘江准教授

鐘江 宏之 教授
KANEGAE, Hiroyuki
日本古代史

■略歴

 

1964 年 福岡県に生まれる
1983 年 埼玉県立浦和高等学校卒業
1988 年 東京大学文学部国史学専修課程卒業
1990 年 東京大学大学院人文科学研究科修士課程国史学専攻修了
1995 年 東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学
                東京大学大学院人文社会系研究科助手
1996 年 弘前大学人文学部講師
1997 年 弘前大学人文学部助教授
2003 年 学習院大学文学部助教授
2007 年 学習院大学文学部准教授

2010 年 学習院大学文学部教授

■研究テーマ・分野

 専門の分野としては、日本古代史(飛鳥・奈良・平安時代)を研究しています。人々の生きた営みや地方社会のあり方に関心があり、さまざまな政治事件の展開の背景にある人々の生活やものの考え方の実際を研究することを通して、その事件や文化的な営みの持つ意味を深く理解していこうと考えています。
 歴史書や命令下達の法令、さらに貴族の日記などは、よく知られたできごとの展開がわかるという点で重要なのですが、もっと人々の日常がわかるような史料のほうに、どちらかというと関心を持っています。行政組織の末端で作られる登録台帳や会計報告のような古文書、さらには日常の呼び出し命令を伝える文書などを通して、そこからわかる役人と民衆の接点がおもしろくて、古代の人々の生きた世界をできるだけ知りたいと思いながら、研究を進めています。
 人々の日常を物語る史料として、出土文字資料(木簡・漆紙文書・墨書土器)の研究にも力を入れてきました。出土文字資料のおもしろいところは、2007年に刊行した『地下から出土した文字』にも書きましたが、歴史書や律令といった伝えられた書物ではわからない、人々の実態がなまなましく見えてくる点です。1点1点の史料は小さく断片的ですが、そうしたものを丹念に積み上げていって見えてくるのが、当時の大きなできごとの背景となっている社会の仕組みであったり、文化や人々の信仰の広がりであったりするのです。

■主要業績

【著書】
2007 年 『地下から出土した文字』日本史リブレット15、山川出版社
2008 年 『律令国家と万葉びと』全集日本の歴史3、小学館
2010年 『東アジア海をめぐる交流の歴史的展開』鶴間和幸氏と共編著、東方書店

【論文・論考等】
1992 年 「公文目録と「弁官―国司」制」『続日本紀研究』283
1993 年 「伊勢国計会帳の年代について」『日本歴史』537
「計会帳に見える8世紀の文書伝達」『史学雑誌』102-2
「『国』制の成立」 笹山晴生先生還暦記念会編『日本律令制論集』上、吉川弘文館
1994 年 「平安時代の「国」と「館」」 佐藤信・五味文彦編『城と館を掘る・読む』、山川出版社
1997 年 「8・9世紀の国府構成員」『弘前大学国史研究』102
「計会帳作成の背景」『正倉院文書研究』5、吉川弘文館
「律令制形成期の往来と道制」『古代交通研究』7、八木書店
1998 年 「口頭伝達の諸相」『歴史評論』574
「7世紀の地方木簡」『木簡研究』20
1999 年 「律令国家と国郡行政」『歴史学研究』729
2001 年 「諸国正税帳の筆記と書生」『正倉院文書研究』7、吉川弘文館
2002 年 「8・9世紀における陸奥・出羽国域と北方管轄についての覚書」『市史研究あおもり』5
「公式令における「案」の保管について」 池田温編『日中律令制の諸相』、東方書店
「7世紀の地方社会と木簡」 森公章編『日本の時代史3 倭国から日本へ』、吉川弘文館
2003 年 「9世紀の津軽エミシと逃亡民」『弘前大学国史研究』114
「内舎人と地方社会」 笹山晴生編『日本律令制の構造』、吉川弘文館
「律令行政と民衆への情報下達」『民衆史研究』65
2004 年 「解・移・牒」 平川南・沖森卓也・栄原永遠男・山中章編『文字と古代日本1 支配と文字』、吉川弘文館
2005 年 「大伴古麻呂と藤原仲麻呂」『学習院大学文学部研究年報』51
2006 年 「口頭伝達と文書・記録」 上原真人・白石太一郎・吉川真司・吉村武彦編『列島の古代史6 言語と文字』、岩波書店
「元慶の乱と鹿角・津軽」 義江彰夫・入間田宣夫・斉藤利男編著『十和田湖が語る古代北奥の謎』、校倉書房
2007 年 「出土文字資料からみた東西差・南北差」 熊田亮介・八木光則編『九世紀の蝦夷社会』、高志書院
「出土文字資料から見た北日本の古代社会」 長谷川成一・関根達人・瀧本壽史編『北方社会史の視座』1、清文堂
2008年 「伊場遺跡出土木簡に見る7世紀の文書木簡利用」『学習院大学文学部研究年報』54
2010年 「郡家と庄所」佐藤信編『史跡で読む日本の歴史4 奈良の都と地方社会』、吉川弘文館
「城柵における中下級官人の痕跡」小松正夫編著『北方世界の考古学』、すいれん舎
2011年 「奈良時代の官道植樹をめぐって」 学習院大学文学部史学科編『〔増補〕歴史遊学』、山川出版社
「秋田城・払田柵跡の出土文字資料」『木簡研究』33
2012年 「隋人がみた倭の風景」 氣賀澤保規編『遣隋使がみた風景』、八木書店
2013年 「七道制」 鈴木靖民・吉村武彦・加藤友康編『古代山国の交通と社会』、八木書店

【その他】
1994 年 『山王遺跡 ―第17次調査― 出土の漆紙文書』共著、多賀城市教育委員会
1995 年 『長野県屋代遺跡群出土木簡』共著、財団法人長野県埋蔵文化財センター
2001 年 『青森県史 資料編 古代1 文献史料』共編、青森県
2002 年 「木簡・呪符・人形」 林淳・小池淳一編『陰陽道の講義』、嵯峨野書院
「廃棄された文字の世界 ―漆紙文書・木簡・墨書土器―」 赤坂憲雄ほか編『いくつもの日本U あらたな歴史へ』、岩波書店
2003 年 『青森県史叢書 青森県史資料編古代1補遺』共編、青森県
2004 年 『秋田市史 第1巻 先史・古代 通史編』共著、秋田市
2005 年 『新青森市史 資料編2 古代・中世』共編、青森市
2006 年 「城柵の北の平安時代」講演録、『学習院史学』44
2008年 『青森県史 資料編 古代2 出土文字資料』共編、青森県
2011年 「秋田城跡第54次調査出土木簡の表面観察」『秋田城跡(秋田城跡調査事務所年報2010)』
「「日本の7世紀史」再考」講演録、『学習院史学』49

■私のゼミ(学部)で学ぼうとする皆さんへ

 私のゼミ(大学の科目名としては「日本史演習」という名がついています)では、参加者全員で日本古代の史料を読みながら、古代の世界でどのようなことが起こっていたのかを考えていきます。
 現在は、『類聚三代格』という奈良時代から平安時代前期にかけての政府からの命令書が集成された法典を、時代順に読み進めています。さまざまな分野の話題が登場することと、近い時代の命令書を続けて読んでいくことで、一つの時代にどのようなことが並行して起きているのかを感じることができるでしょう。
 日本史(古代に限らず)の中で自分の研究したいテーマに沿って学ぶ場合、それぞれのテーマを明らかにするために調べる対象となるのは漢文で書かれた史料です。最初は、いったいこれをどうやって読めばいいのだろうと思うはず。その読み方、解釈のしかたといったことを、2年生・3年生の間に、ゼミの中で徹底的に学んでもらうのが目的です。そうして身につけた技量を存分に活用して、4年生になると自分の好きなテーマに沿って研究を進めていくのです。
 技量を身につけるためには、毎回自力を鍛えなければなりません。各回で読む史料は、全員予習必須、授業で誰が指名されてもよいように下調べをしておいて下さい。授業の復習を兼ねて、2年生が分担して各回の授業で読んだ史料の内容をまとめるレポートを作成してもらいます。2年生から1年間かけてゼミの雰囲気に慣れた3年生には、各回で読む史料の内容と関連するテーマを調査して、口頭報告をしてもらいます。
 最終的に卒業論文で取り組みたいと考えているテーマは、人それぞれでしょう。自分の興味を持っているテーマに絞って、最初からそれだけに取り組みたいと考える人もいるかもしれません。しかし、古代史の場合、残されている史料は決して多くはなく、対象となる史料を分析していく上では、着想の豊かさや関係するさまざまな問題への理解が、かなり必要となります。例えば、ある文化現象だけに興味があってそれだけをやりたいと思っていても、その文化現象を理解するためには、その起こっている時代がどういう状況の下にあって、どのような問題と結びついて起こっているのかということを抜きにしては、その文化現象のほんとうの姿はつかめないでしょう。そこで、ゼミでは、古代社会についてできるだけ広く知り、その中でのテーマを追究するという方向性をとっています。
 ふだんの授業以外にも、夏休みと春休みに合宿を行っています。ふだんは法令集を読んでいますので、夏合宿では歴史書、春合宿では貴族の日記など、別なジャンルの史料を読んだり、史跡見学を行ったりしています。夏合宿では、2年生は史料を読んでその内容に関する口頭報告、3年生は自分の研究テーマをさぐるために、自由にテーマを設定して口頭報告を行っています。
 毎年の合宿は、東京から離れて遠方へ行きますが、それぞれの年ごとに別々の場所で行っています。日本史を学ぶ上では、広く日本全体を見る視野を身につけて欲しいと考えますので、毎年、合宿の中で各地の史跡を見学し、それぞれの地域での古代の社会を考える機会を設けているのです。ちなみに、過去の合宿場所と主な史跡見学地は以下の通りです。

 

 

2003年夏 秋田県秋田市 : 秋田城跡
2004年春 奈良県奈良市 : 長岡宮跡、藤原宮跡、平城宮跡
2004年夏 富山県高岡市 : 高岡市万葉歴史館、越中国府推定地、
                   倶利伽羅峠
2005年春 三重県伊賀市 : 伊勢神宮、伊賀国分寺跡、夏見廃寺、
                   斎宮歴史博物館
2005年夏 長野県千曲市 : 信濃国分寺・国分尼寺跡、長野県立歴史館、
                   森将軍塚古墳
2006年春 奈良県奈良市 : 難波宮跡、四天王寺、正倉院、神泉苑、広隆寺
2006年夏 島根県出雲市 : 加茂岩倉遺跡、荒神谷遺跡、八雲立つ風土記の丘、
                   熊野神社、出雲大社
2007年春 滋賀県近江八幡市 : 安土城、近江大津宮、石山寺、
                   近江国庁跡、宇治橋碑、平等院
2007年夏 奈良県宇陀市 : 石舞台古墳、奈良県立万葉文化館、酒船石遺跡、

                  水落遺跡、飛鳥資料館、大官大寺跡、藤原宮跡
2008年春 静岡県島田市 : 藤枝市郷土博物館、志太郡家跡、浜松市博物館、

                  賀茂真淵記念館、伊場遺跡、島田宿大井川川越遺跡
2008年夏 岩手県一関市 : 達谷窟毘沙門堂、胆沢城跡、江釣子古墳群、志波城跡、

                  徳丹城跡、柳之御所跡、毛越寺、中尊寺
2009年春 奈良県宇陀市 : 元興寺、正倉院、山辺の道、高麗寺跡、山城郷土資料館、

                  恭仁宮跡
2009年夏 栃木県宇都宮市: 長岡百穴、飛山城跡、下野薬師寺跡、下野国府跡、

                  しもつけ風土記の丘資料館、下野国分寺・国分尼寺跡
2010年春 京都府京都市 : 長岡宮跡、阿武山古墳、今城塚古墳、嶋上郡家跡
2010年夏 群馬県前橋市 : 蛇穴山古墳、宝塔山古墳、上野国分寺跡、

                  群馬県立歴史博物館、伊勢塚古墳、上野三碑、

                  かみつけの里博物館
2011年春 (行わず)
2011年夏 長野県上田市 : 信濃国分寺・国分尼寺跡、森将軍塚古墳、長野県立歴史館
2012年春 大阪府柏原市 : 平城宮跡、海竜王寺、法華寺、聖徳太子廟、

                  竹ノ内街道、当麻寺、近つ飛鳥博物館
2012年夏 新潟県南魚沼市 : 八幡林遺跡、新潟県立歴史博物館
2013年春 岐阜県養老町 : 名古屋市博物館、熱田神宮、弥勒寺官衙遺跡群、

                  昼飯大塚古墳、美濃国分寺跡、美濃国府跡、

                  不破関跡、南宮大社、養老の滝、甚目寺
2013年夏 滋賀県大津市 : 大津宮跡、紫香楽宮跡、延暦寺

■私のゼミ(大学院)で学ぼうとする皆さんへ

 大学院のゼミ(これも「日本史演習」という科目名がついています)では、日本古代の史料読解について、深く掘り下げて考察することを身につけて欲しいと考えています。すでに卒業論文を書いた経験を持っているわけですから、その経験を踏まえて、さらに研究を進めるために必要な方法や知見を、多くのことに接する中から身につけていって欲しいと思います。  現在は、『日本三代実録』を分担して輪読しています。『日本書紀』や『続日本紀』と違って、六国史もこの時代になればかなり難解な長文の記事も出てきます。私も含めて、参加者全員で首をひねりながら、ああでもないこうでもないと議論を重ねてゆく中で、ようやく解釈が定まっていくことばかりです。研究する自分をお互いに磨く場として、おおいに議論しながら、互いの持っている知見をぶつけていくことができることを願っています。  夏合宿・春合宿は、学部学生とともに行っていますが、学部生との交流の場というだけでなく、学部生の発表を端緒に大学院生どうしで議論していることもあったり、おおいに知見を広げる機会として活かされているように思います。また合宿中の史跡見学を通して、博物館や発掘現場の研究者と交流を持つ機会となることを考えています。
Key words: Nara-period, Heian-period, Wooden tablets, Paper documents, Local governments


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