教員紹介

中野 隆生 教授
NAKANO, Takao
西洋近代史

■略歴

1949年 福岡県生まれ
1973年 東京外国語大学フランス語学科卒業
1975年 東京大学大学院人文科学研究科(西洋史学専攻)修士課程修了
1981年 リール第3大学第3期博士課程修了
1983年 東京大学大学院人文科学研究科(西洋史学専攻)博士課程単位取得満期退学
1986年 千葉商科大学商経学部専任講師
1988年 東京都立大学人文学部助教授
2000年 同教授
2005年 首都大学東京都市教養学部教授
2008年 学習院大学文学部教授

■研究テーマ・分野

フランス近現代史が専門です。19~20世紀フランスの労働、家族、都市、国家などを民衆の暮らしや思いに目配りして描き出すことを課題としています。最近では、パリを中心とした近現代都市の検討に力をそそぎ、そのなかで日仏両国の歴史家によるシンポジウムを主宰するといった試みを重ねてきました。こうした学的活動にも関連しますが、これからの歴史学の行方にもおおいに関心があり、この点では、地理学、建築史、人類学、社会学といった諸学との提携など、領域を超える知的交流も模索していきたいと考えています。他方では、ときに歴史研究者の協力もえてより一般向けに刊行物をつくる機会も多く、もう一つの大切な仕事の領域をなしています。なかなかたいへんな作業ですが、そこには、総合的にフランスやヨーロッパの近代像などを考える好機が潜んでいるとも感じます。

■主要業績

【著書】
1999年 『プラーグ街の住民たち―フランス近代の住宅・民衆・国家―』山川出版社
 
【編著書】
2004年 『都市空間の社会史―日本とフランス―』山川出版社
2006年 『都市空間と民衆―日本とフランス―』山川出版社
 
【共編】
2002年 『現代国家の正統性と危機』山川出版社
2002-03年 『現代歴史学の成果と課題1980-2000』I・II、 青木書店
2011年 『フランス史研究入門』山川出版社
2011-12年 『文献解説 西洋近現代史』南窓社(全3巻)
 
【共著】
1994年 『<史学概論>カリキュラムの調査研究』放送教育開発センター
1994年 『シリーズ比較家族史3:縁組と女性、家と家のはざまで』早稲田大学出版部
1995年 『世界歴史体系 フランス史3:19世紀なかば~現在』山川出版社
『講座世界史4:資本主義は人をどう変えてきたか』東京大学出版会
2006年 『結社の世界史3:アソシアシオンで読み解くフランス史』山川出版社
2011年 『増補 歴史遊学』山川出版社
 
【研究論文】
1977年 「フランス第二帝制期の労働者とその運動―パリの場合―」『社会運動史』6
1983年 「フランス繊維業におけるストライキ運動―リール、1893~1914年―」『史学雑誌』92-2
「フランス繊維業における福祉事業と労働者の統合―1920年代のリールを中心に―」『社会経済史学』48-6
1999年

"La population d'une HBM du XIIe arrondissement à Paris"『人文学報』(東京都立大学)296 

2000年 「<新しい歴史学>の現在―アナールの<批判的転回>をめぐって―」『人民の歴史学』143
2001年 「労働史研究の現在―1980~2000年(3)日本におけるフランス労働史研究―」『大原社会問題研究所雑誌』516
2005年 「膨張するパリとアン・セリエ―両大戦間期の都市空間をめぐって―」『メトロポリタン史学』1
2009年 「シュレーヌ田園都市の空間と住民にかんする一考察―パリの郊外、1926~1946年―」『年報都市史研究』16
2010年 「フランス近現代における居住空間の変遷」『学習院史学』48

2014年

“La population d’une cité-jardin de la banlieue parisienne : Suresnes, 1926-1946” 『学習院大学文学部研究年報』60 (刊行予定)


■ひとこと

 史学科の学生として大学時代を過ごさなかった私は、歴史学をちょっと変わった知的営為だと思っているところがあります。というのは、こうです。私たちは日常生活をおくるのに絶えず判断を繰り返しています。判断の対象は、衣食住にかかわっていたり政治や経済にかんしていたり外国の諸事象であったりと、文字通り多種多様に広がりますが、ほとんどの場合、さほど深く考えず、自分自身の感覚や常識や知識に依存して、先験的に物事の判断をおこないます。これを自らのものとした知覚や認識の「理論」的枠組みを援用し、次々に訪れる事態に対処しているといいかえてもよろしい。もちろん歴史理論に大きな意義を認めるのですが、できるかぎり史料に即して歴史像を紡ぎだす学的営為は、他の諸学問以上に「理論」から遠いところに位置してはいないでしょうか。そういった意味において歴史学のあり方は日常的行動様式からかけ離れているように思われるのです。たとえば私が近現代社会の膨大な資料と複雑な現実をまえにしばし佇んでしまう理由の一つも、そのあたりにあると考えています。そうした困難を、周辺諸学に学びながら、しかし歴史学固有の長所を生かしつつ、何とか克服し、近現代社会をとらえる有効な方法として、改めて歴史学を練りあげてみたいものです。

■私のゼミ(学部)で学ぼうとする皆さんへ

 いろいろな角度から自由に物事をみる力を身につけてほしいと願っています。しかし、これが実はたいへん難しいのです。そうした実力をヨーロッパなどの近現代史にそくして鍛えること、これがゼミの重要な目標だと考えます。ですから、ゼミでの話題は歴史的事柄でなくてもかまいません。また必ずしもヨーロッパを論じる必要もありません。ただ、時間の流れと空間の枠組みなかで物事を考える姿勢はしっかり保っていきましょう。専門の関係から私の話はどうしてもフランス中心になりますが、しかし、現在の社会情勢や研究状況を踏まえ、そこに様々な問題関心を反映させたいとは思っています。とくにゼミのような場では、皆さんの積極的な参加をえて、世界の諸地域の情報を提供しあいながら自由な意見交換ができれば、こんなに素晴らしいことはありません。ぜひ実現したいものです。

■私のゼミ(大学院)で学ぼうとする皆さんへ

 基本的スタンスは学部ゼミと変わりません。ただ、より以上に自分の問題意識を研ぎ澄まし、歴史学の視座や方法を磨いてほしいと考えます。感じる、聞く、読む、探す、考える、話す、書くといったさまざまな知的活動を総動員してはじめて学問は具体的な成果をあげることができます。このことは歴史学も例外ではなく、たとえば、いくら歴史の本を読んでも、どんなにたくさんの史料を探し出しても、それだけでは十分ではありません。したがって、ことに大学院では、積極的に自分で道を切り開き、物おじすることなく自らを表現してほしい。そうすることで、はじめて、専門性の高い歴史学、そしてそれを踏まえた物の見方が備わってくるはずだからです。参加してくれる皆さんをそうした方向へと巻き込むことができるゼミでありたいと考えています。

 

Key words:Urban space, Urban society, Housing for the people, Urbanism, Suburban living



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