スタッフ紹介

吉田紀子 (よしだ のりこ)
YOSHIDA Noriko
教授 西洋近代美術史・デザイン史
1967年 生まれ

吉田紀子

■ 研究分野

 フランスを中心とする西洋近代美術史・デザイン史が私の専門研究分野です。1980年代後半に美術史と出会った私にとって、折からの近代美術史見直しの流れは、幅広い研究の可能性を示してくれるものでした。様々な作品や文献を通して、自分の関心はいつしか広告ポスターへと向かっていきました。19世紀末〜20世紀初期、紙媒体のイメージが数を増やす時代と社会にあって、アーティストたちは(画家であれポスターデザイナーであれ)これとどう向かい合い、また美術行政や産業界はこれにどう関わっていったのでしょうか。パリ第十大学での博士学位論文でも論じた問題ですが、アール・ヌーヴォー、アール・デコのポスターは、同時代言説も含めて、私の学術的関心の大切な部分を占めています。
  一方、近年ではより画家の側に立って、タブロー制作とポピュラーイメージ(ポスターや雑誌挿絵等の大衆向けイメージ群)の関係を考察しています。マネやスーラは紙媒体の複製イメージに大変敏感でしたが、彼らと同じ19世紀後半の画家ジェームズ・ティソも興味深い作画を展開しています。これまでは“折衷的”な“中庸画家”と位置付けられることの多かった彼ですが、イメージの新時代を生き抜いた明敏さには驚かされるものがあります。ティソへの注目は、大学における19世紀フランス絵画史に関する講義経験、また国内外での作品鑑賞・研究交流によってもたらされたものです。私にとって現在進行形の研究テーマの一つです。

■ 所属学会

美術史学会、日仏美術学会、意匠学会、文化資源学会、日本アートマネジメント学会、ジャポニスム学会、Réseau International pour la Formation à la Recherche en Histoire de l’Art/ The International Consortium on Art History。

■ 主要著書・訳書

Regards de critiques d’art. Autour de Roger Marx (1859-1913)(共著、PUR, INHA, 2009年)、Belle Époque de Jules Chéret, de l’affiche au décor(共著、Les Arts Décoratifs, BNF, 2010年)、セゴレーヌ・ルメン『スーラとシェレ 画家、サーカス、ポスター』(訳・解説、三元社、2013年)、L'Art social de la Révolution á la Grande Guerre. Anthologie de textes sources(共著、INHA, 2014 年)、『西洋近代の都市と芸術3 パリU―近代の相克』(共著、竹林舎、2015年)、『ポスター芸術論 十九〜二〇世紀フランスの広告、絵画、ポピュラー・イメージ』(単著、三元社、2022年)。

■ 趣味等

週一回のお弁当作り、時々のマグマヨガ、映画、お菓子作り。

■ 私の授業に参加する皆さんへ

 講義科目では、社会文化史的な視点からフランス近代美術史を論じると共に、(ポスターもその一部である)装飾芸術・産業芸術・デザインをめぐる問題も取り上げていきます。知識と方法論を貪欲に習得してください。演習科目はインタラクティヴなものですから、やはり学生諸君の顔を見ながら、各人の発想に寄り添って前に進みたいと思います。1〜2年次の学生とは実際に作品に触れて、それを生み出したアーティストや社会について考えを巡らせる知的興奮を、卒業論文や修士論文を準備中の学生とは、自らの着想を学問的手続きに則って実証していくダイナミズムを共有したいですね。緊張の中にも楽しい協働の場となるようお互いに頑張りましょう。

 さらに、私はとりわけ西洋美術史を志す学生に対して、見学旅行のその先、できれば調査や留学という目的で海外の美術館、研究所、大学等に赴くことを推奨します。授業の中で、外国語文献の精読や議論の構築といった努力を重ね、国際的な研究交流に挑戦する能力と勇気を養っていきましょう。21世紀に生きる日本人が西洋の芸術に関心を持つことの意義だけでなく、現在、芸術や文化周辺の活動が各国で担っている役割についても(そして翻って我国の状況について)感じ取ることにつながるはずです。