共同研究プロジェクトについて

佐野 みどり教授プロジェクト
『中世掛幅縁起絵の総合研究』
[Prof. Midori Sano]
[Prof.Midori Sano]

1.目的・内容・期待される効果など

 本研究で対象とする掛幅縁起とは、寺社の草創や神仏の霊験、あるいは祖師等の事績など、宗教的物語を絵画化した作例の内、特に大画面のものを指している。鎌倉時代後半期から室町時代(13世紀後半〜15世紀)にかけて多数制作されており、現在も多くの優れた作品が現存している。その歴史的、思想的、美術的意義は大きいにもかかわらず、研究は未だ充分には進んでおらず、いくつかの著名な作例を巡る個別研究はあるものの、現存諸作例の全体的把握といった網羅的基礎研究すらなされていない。また、これまでの作例研究は、文学研究、宗教史研究、美術史研究と、それぞれの学問領域内での議論に止まりがちであった。そこで、関連諸分野の研究者の共同による、中世掛幅縁起絵の悉皆的調査とそれに基づくモノグラフ研究を進め、それら基礎研究の統合化を通して、縁起絵の図像・事象および宗教的世界観に関する作品横断的な総合研究を構築し、中世社会における寺社縁起絵の生成と受容を明らかにする。
 本研究の特色は2点である。第一点は、中世史、思想史、美術史の共同研究であること。第二点は悉皆調査をめざすこと、である。中世掛幅縁起絵に関しては、その美術的、思想的意義の重要性が認められつつも、本格的な研究が少ないままに30年近く経過している。国文学や宗教史においては、「善光寺如来絵伝」や「聖徳太子絵伝」あるいは浄土宗系祖師絵伝諸本など、特定主題に対して完結的な研究の蓄積がなされてきたが、つぎなる段階として、それらの成果を踏まえつつ、より多くの作例へと関心を広げた、学際的および総合的な議論を構築することが求められていよう。だが掛幅縁起絵をとりまく世界と作品内容を理解するためには、さまざまな分野の知識を統合することが必要である。今回の中世史、思想史、中世美術史の共同研究はそれぞれの分野の研究蓄積と研究ディシプリンを共有・理解する機会となり、中世掛幅縁起絵の構造的理解とモノグラフ研究の精密化という成果へと結ばれる筈であり、そのような共同研究の場で研究者個々人の力量もいっそう発揮されると信ずる。また、出来うる限り現存作例の悉皆的基礎調査を行うことで、@あらたな事例発掘も期待され、A従来特定の作例に完結してきた中世掛幅縁起絵の研究関心(水準)を拓き、B現存作例の全貌を紹介する報告書の公刊も可能となろう。本研究は、中世の社会と文化に関する諸分野の研究に裨益するところ大であると信ずる。研究成果は、縁起・伝記研究や中世絵画の図像研究に還元されのみならず、中世社会の想像力を輪郭づけることともなろう。

2.研究スタッフ

<プロジェクト代表>
・佐野みどり:学習院大学文学部教授(哲学科)

・新川 哲雄:学習院大学文学部教授(哲学科)
・加藤みち子:学習院大学非常勤講師
・原口志津子:富山県立大学助教授
・藤原 重雄:東京大学史料編纂所助手
・高岸   輝:東京工業大学助教授
・織田 顕行:飯田市美術博物館学芸員
・米倉 迪夫:上智大学教授
・阿部 美香:昭和女子大学非常勤講師(平成19年度より)
・島田健太郎:学習院大学非常勤講師(平成19年度より)
・林   東洋:芝浦工業大学高校非常勤講師
・小平 美香:学習院大学人文科学研究科哲学専攻博士後期課程
・岡本 麻美:学習院大学人文科学研究科哲学専攻博士後期課程
・茨木 恵美:学習院大学人文科学研究科哲学専攻博士後期課程(平成19年度より)
・土谷 真紀:学習院大学人文科学研究科哲学専攻博士後期課程(平成19年度より) 

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3.活動報告

平成18年度:安城市立歴史博物館、射水市新湊博物館、有馬温泉他で現地調査を実施した。 研究会・講演会も活発に開催した。また、飯田市美術博物館所蔵「聖徳太子絵伝」のトレース図版作成にも着手している。 (詳細は『学習院大学人文科学研究所報』2006年度版に掲載されています)
平成19年度:飯田市内の中近世史跡、満性寺調査等の見学、研究会等を行った。日仏国際シンポジウムではメンバー数名が報告を行った。 (詳細は『学習院大学人文科学研究所報』2007年度版に掲載されています)
平成20年度:飯田市美術博物館で「伊那谷の仏教絵画―聖徳太子絵伝と真宗の宝を集めて―」展を開催し、トレース図を公開した。研究会、見学会も 多く開催し、国内外の研究者と積極的に意見交換を行った。(詳細は『学習院大学人文科学研究所報』2008年度版に掲載されています)

平成21年度:成果報告会として、「中世説話画研究の現在―模写・トレース・復元―」と題した展覧会(平成21年12月8日〜12日)と シンポジウム(同年12月12日)を開催した。(詳細は『学習院大学人文科学研究所報』2009年度版に掲載されています) 

4.今後の活動予定

本プロジェクトは平成21年3月31日をもって終了いたしました。
ご協力下さった皆様に厚く御礼申し上げます。


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