北魏造像銘石片

資料情報

史料館番号:史料館286/『標本原簿』名称:魏画像石片/『標本原簿』番号:67/製作地域:中国/製作時期:北魏時代/石製/23.3 cm×31.2 cm×5.1cm/数量:1点

解説

造像銘〔ぞうぞうめい〕とは、仏像や道教像に刻まれた銘文のことである。その内容は、(1)造像の年月日、(2)発願者の名とその身分や出自、(3)誰あるいは何のために像を造ったか、(4)尊像の名称、(5)祈願する事柄、が主で、像が彫られていない空白の部分を埋めるように、石碑の正面下部・両側面・裏面などに刻まれる。

北魏から唐代にかけて、在家信者や僧尼・道士を中心に組織された集団「邑義〔ゆうぎ〕」の発願による造像が盛んに行われた。この邑義の一般構成員を「邑子〔ゆうし〕」という。

本石片は、縦23.3cm、横31.2cm、厚さ5.1cm。その正面に「□□趙小台/邑子趙慶和/邑子朱続/邑子趙方儁」の文字(楷書)と3体の邑子像のみを残す。ただし、上端と右端には邑子像の一部が見え、右側に連なる邑子像については、その衣服の裾の形から、左向きで描かれていたと考えられる。おそらく「□□趙小台」「邑子趙慶和」の間を軸として、左右対称に配置されていたのであろう。

一本一本の線は、溝の底が丸いU字の断面形になっている。これはのちに「丸彫り」と呼ばれる刻銘技法の一種であるが、何度も鏨〔たがね〕で打ち整えていく丁寧な技法で、この造像銘に温雅な雰囲気を与えている。

旧制学習院歴史地理標本室の原簿には「魏画像石片」とあり、江藤濤雄氏より大正14年(1925)8月2日に55円にて購入した。購入時に添えられていたと思しき「魏画像石片」と墨書された札も併せて保管されている。

(吉田)