克蘭経選本訳箋註 請求番号169.5/78

書誌情報

克蘭經選本譯箋註 / 劉錦標・張德純・李虞辰訳 / 1935年 / 奉天南滿站文化淸紳寺 / 1冊 / 縦24.9cm×横18.2cm / 東亜経済調査局

解説

奉天南満站清真寺鉛印、関東印書館印刷、1935年出版。クルアーンからよく詠まれる章句を摘録、漢語にて訳注を加えたもの。同様の書籍は、中国ムスリムの間では「亥聴khātam / khatm」などと呼ばれ、清朝末期より現在に至るまで各地に弘通している。

訳著者である劉錦標の自序によれば、1931年に当時南京に在った回族軍閥馬福祥の要請に応じて南下した際、馬よりクルアーン漢訳の必要性を説かれたことが、本書作成の端緒となった。以後、李虞宸・哈徳成・達浦生といった著名なアホンの助力を仰ぎながら訳解を進めたが、「満洲事変」を機に奉天の自宅へ戻り、当地在住の張徳純アホンの校訂を経て出版に至ったという。また、同自序には、「穆罕黙徳〔ムハンマド〕聖人辞世一三三九年」と記されているが、同じ劉の著書である『天道』の序(1937年)に、同書完成より2年先立ってクルアーン訳解を刊行したと記されていることから、本書の出版は1935年頃であると考えられる。

劉はイスラーム学の教授に携わった父を持ちながらも、自身は十数年ものあいだ軍職に就き、後に帰郷独居し、『易理中正論』『説中』を著して、儒家の経典に基づく独自の思想を世に問うた。本書においても、尭〔ぎょう〕・舜〔しゅん〕・禹〔う〕・伊尹〔いいん〕・孔子などの言の引用とともに彼の自説「中正」論が説かれるなど(第1章注)、当時通行していたほかの亥聴とはいささか性格を異にしている。

(田島)

(表紙)