『友邦文庫』解説

解説

「友邦文庫」は略称で、正式には「友邦協会・中央日韓協会」文庫である。

この「友邦文庫」は、長い歴史をもっている。まず初代政務総監であった山縣伊三郎文庫(1238冊)土師文庫(247冊)を初めとする主に朝鮮総督府関係者の蔵書・資料を集めたものである。その後も、戦前に日本に帰ってきた総督府関係者―たとえば農村復興運動の時、農林局長(1932年7月~35年2月)であった渡辺忍の文書(936冊)、「予算の水田」と呼ばれ昭和に入ってから、朝鮮総督府の予算の凡てを扱った水田直昌の「帝国議会説明資料」(146冊)などかけがえのない資料がはいっている。

戦後は、総督府の殖産局長(32~41)であった穂積真六郎が積極的に資料を集め、朝鮮総督府の関係者が自分の蔵書を友邦協会に寄贈するようになり、更に穂積の提案で、友邦協会から穂積を中心に近藤釼一・渋谷礼治・岸謙の4人と学生側の姜徳相・権寧旭・梶村秀樹・宮田節子の8人が中心メンバーとなり、58年5月7日に資料の収集に重点を置くと言う意味を込めて「朝鮮近代史料研究会」を結成。以後500回に及ぶ、研究会をもち、約130人の総督府関係者の録音記録418巻のテープを録音している。2000年からはその録音を文章化し、『東洋文化研究』に掲載している。現在のように「朝鮮総督府関係の資料なら学習院」と言われるようになったのは、これ等先人の努力の賜物である。

(宮田 節子)