経済襍録 請求番号330/514

書誌情報

經濟襍録 二十五巻 / (淸)呉傳綺 撰 / 光緒28年(1902) /刊行 永綏官書局/ 刊本 / 25冊 / 10行19字 / 四周双辺 / 無界 / 黒口 / 魚尾無 / 断句無 / 縦25.1cm×横14.9cm / 框高19.4cm / 旧蔵印無

解説

本書は、光緒28年(1902)、湖南省永綏〔えいすい〕(今の花垣県)の永綏官書局から出版された。印刷状態はそれほど良いものではなく、かすれが目立つが、日本国内としては本研究所以外の所蔵が確認できず、世界的にも稀少な漢籍である。清末には、地方政府による書局の設立と書籍出版がよく行われており、本書もその一である。題名は「経済」とあるが、今日的なeconomyの意味ではなく、「経世済民」(世を経〔おさ〕め、民を済〔すく〕う)、つまり政治や社会問題全般を意味する。

光緒27年(1901)、官吏登用試験である科挙において、従来から使用されていた形式主義的な文章である八股文の廃止と、試験科目への中国政治史事論、各国政治芸学策の導入が決定され、翌年に実行された。合格を目指す受験者は、この改革への対応を迫られることになる。

しかし湖南省永綏には十分な書籍も、書店もなく、個人レベルでの対応は難しかった。そこで、地方政府が自ら書局を設立し、当時の政治や社会問題に関する上奏文と、文章を集めて出版することにした。これが、『経済襍録〔ざつろく〕』である。中には、清末に発行された新聞紙『申報』の記事や世界地図なども含まれている。全25冊で、各册の末尾には「此書月出一册毎册工本錢六十文要者陸續來購」〔此の書 月に一冊を出す 毎冊の工本は銭六十文 要する者陸続と来購す〕と朱で記載されている。

(村上)

(表紙・第1冊)

(表紙・第25冊(最終冊))