新刻読詩一得(古名儒毛詩解)

書誌情報

新刻讀詩一得 不分巻 / (宋)黄震 撰 ,(明)鐘惺 校閲 / 明末 / 刊行者不明 / 刊本 / 2冊 / 10行20字 / 左右双辺 / 有界 / 白口 / 魚尾無 / 断句無 / 縦27.7cm×横17.2cm / 框高18.8cm / 旧蔵印「静観皆直得」「蒋紹㑮(?)印」「炤清」/ 澤口東洋文化研究所旧蔵

解説

『読詩一得』は南宋の名儒黄震による詩経の読書筆記である。明末の鍾惺が『古名儒毛詩解』という叢書の一部として『新刻読詩一得』を刊行し、広く読まれるようになった。本書はこの『古名儒毛詩解』の一部として刊行された版本である。『古名儒毛詩解』は日本では他にも国立公文書館に収蔵されている。

著者の黄震は、字は東発、号は於越、私諡は文潔、余姚(現在は浙江省慈渓市)の人、宝祐四年の進士。東発学派を主導し、南宋の儒学の発展に重要な役割を果たした。東発学派は当時支配的地位にあった朱子・二程の理学を継承しつつ、大胆な批判を加えたことに大きな価値がある。本書もこのような東発学派のスタンスで書かれており、晦庵(朱熹)、程氏(程顥・程頤)、東莱(呂祖謙)らの説を継承および批判している。

本書はもと学習院大学教授 澤口剛雄(1902~1995)の旧蔵書。澤口は中国文学研究者で、唐宋の詩や楽府の分野で大きな功績をあげた。その蔵書は澤口東洋文化研究所として埼玉川口の旧宅に収められていたが、平成24年(2012)遺族により、本書を含めた一部が学習院大学の東洋文化研究所に移された。

また本書には別の旧蔵者のものと見られる「蒋紹㑮印」「炤清」「静観皆直得」という朱印が捺されているが、未詳である。「静観皆直得」は程顥の詩「秋日」の「万物静観皆自得」という部分に由来すると考えられるが未詳。

(石原)

(表紙)

(表紙)