学習院大学理学部化学科

平成13年度入学試験問題(化学)


第4問  (50点)

4−1 カルシウムを含むある鉱物を調べるために,次の実験を行った。

実験1.この鉱物5.0 gに希塩酸を加えると,発泡して完全に溶けた。この時発生した気体を水酸化バリウム水溶液に通すと,白色沈殿が生じた。

実験2.この鉱物5.0 gを別にとり,真空容器中で十分高温に強熱して,発生した気体をすべて集めた。この気体の体積は27 ゜C,1atmで1.23 lであった。

実験3.実験1の希塩酸溶液に十分な量の硫酸ナトリウム水溶液を加えて,得られた沈殿をろ過した。この沈殿を室温で乾燥したところ,8.6 gの白色固体が得られた。この白色固体は,加熱によって結晶水を失う。

以下の問いに答えなさい。数値で答える問いには,計算の過程が分かるように解答すること。ただし,気体定数Rは0.082 atm l / (mol K) である。また,原子量には下記の値を用いなさい。

  H = 1,C = 12,O = 16,Na = 23,S = 32,Cl = 35.5,Ca = 40,Ba = 137

(a) 実験1で発生した気体と生成した沈殿は何か,それぞれ化学式で答えなさい。

(b) 実験2で発生した気体の物質量を求めなさい。

(c) 実験3で得られた白色固体の化合物の化学式を書き,その物質量を求めなさい。

(d) 以上の結果から推定される,はじめの鉱物の化学式を書きなさい。



4−2 以下の問いに答えなさい。なお,以下で元素記号を一般的に書く場合は,XあるいはYと書くことにする。

(a) 周期表中のある縦の列には,元素の単体がいずれも室温・大気圧下で X2の分子式で表される分子の状態をとる元素が並んでいる。この列に並んでいる元素の元素記号を4つ書きなさい。また,それらをグループとしてまとめてよぶ場合の名称を書きなさい。

(b) 上で答えた元素は,室温・大気圧下では,固体・液体・気体のどの状態をとるか。回答用紙の対応する欄に,各元素の単体の分子式を記入しなさい。

(c) 上で答えた元素は,いずれもナトリウムNaとともにNaXの組成式で表される化合物をつくる。ここで,周期表中でXと同じ列の別の元素をYと書くことにしよう。NaXとY2を一緒に水に溶かすと
   2 NaX + Y2 → 2 NaY + X2
という反応がおこることがある。この型の反応の例を,X,Yの代わりに具体的な元素記号を用いて,反応式で答えなさい。

(d) 単体は常温で液体状態である。銀との化合物は,写真材料として重要である。

(e) 水素Hの単体は,上で考えた元素のグループと同様に,室温・大気圧下では H 2 の分子式で表される状態をとる。また,NaHの組成式で表される化合物が存在することも知られている。そのため,上で考えた元素のグループに水素を入れたいという説があるが,それに反対する意見もある。反対意見にはどのような意見がありうるだろうか。



第5問  (50点)

5−1 原子量とアボガドロ定数に関する以下の記述を読んで,後の問いに答えなさい。

質量数 (ア) の炭素原子の相対質量を (イ) と定め,これを基準にして他の種類の原子の相対質量が決められている。そして,ある元素の原子量は,その元素の同位体原子の相対質量と存在比から,平均の相対質量として計算される。たとえば,銅は質量数63の同位体(相対質量62.9)が69.2 %,質量数65の同位体(相対質量64.9)が30.8 %含まれるので,銅の原子量は (ウ) となる。  また,質量数 (ア) の炭素原子 (イ) g 中に含まれる原子の数と同じ数の同一の粒子の集まりを,その物質の量(物質量)1 molと定め,アボガドロ定数は,物質1 molあたりの粒子数として定義されている。

(a) (ア)から(ウ)の欄にあてはまる数字を答えなさい。ただし(ウ)については,それを求めた道筋を書き,有効数字3桁で答えなさい。

(b) もし仮に(イ)の数値が (a) で答えた数値の2倍だったとすると,アボガドロ定数は2倍となる。それでは,以下の量はどのように変わるだろうか。説明を加えて答えなさい。
(1) 窒素の原子量
(2) ダイヤモンドの密度
(3) 気体定数

5−2 次の会話を読んで,後の問いに答えなさい。

A君「人類が使っているエネルギーは,どれももとをただせば太陽の光からきたものだって。ほんとうかなあ。太陽電池で発電すれば確かにそうだろうけど,水力発電や火力発電もそうなのかなあ。」

Bさん「水力発電は山に降った雨を利用しているのよね。だから,エネルギーのもとは太陽の光だって言ってもよいみたい。でも,火力発電はどうかしら。」

A君「今の火力発電は,主に石油を燃焼させているんだよね。昔は石炭を使ってた。石炭はもちろん,石油も古代の生物の遺骸からできたという話を聞いたことがあるから,火力発電のエネルギーのもとは生物なのかな。」

Bさん「わかった。植物は太陽の光を受けて光合成をしているし,動物のエネルギーのもとも結局は植物だから,火力発電のエネルギーのもともやっぱり太陽の光なのよ。」

A君「なるほど。でも,原子力発電は太陽光のエネルギーがもとになっているとは思えないね。」

(a) 水力発電に用いられているエネルギーのもとが太陽の光だと言える理由を,もう少し詳しく説明しなさい。

(b) 植物が行う光合成は,二酸化炭素と水が原料となっている。二酸化炭素と水そのものからはエネルギーを取り出すことができないのに,光合成によって作られた化合物からはエネルギーを取り出すことができる。これはどう考えたらよいのだろうか。考えたことを簡潔に書きなさい。



第6問  (50点)

6−1 以下の問いに答えなさい。

(a) アミノ酸の一種であるアラニンは,C3H7O2Nの組成式をもち,さらに光学活性を示す。この化合物の構造式を書きなさい。

(b) 化学式C5H10で表されるペンテンのすべての異性体の構造式を書きなさい。

(c) (b) で考えたペンテンの異性体がすべて含まれる混合物に,ニッケル触媒を用いて水素を反応させた。この反応が完全に進行したとして,生成物のすべての異性体の構造式を書きなさい。

(d) ペンテンとペンテンの水素化生成物を,簡単な実験操作により区別したい。どのようにすればよいか。文章で簡潔に述べなさい。


6−2 以下の化合反応における原料化合物の名称,および主生成物の名称と構造式を,それぞれ,解答用紙の該当する欄に書きなさい。



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