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学習院大学理学部 教授 西坂崇之 × ラジオパーソナリティ 小島 慶子

広大な学習院キャンパスの中でも、静かで研究に没頭できる空間。そんな「南7号館」で「精巧な装置であるタンパク質の謎を明らかにしたい」という夢を淡々と叶え続ける一人の男がいた。西坂崇之、42歳。2008年に「日本学術振興会賞」を受賞した彼だが、さらに2011年「最先端・次世代開発支援プログラム助成金」を交付されることになった。そんな夢を叶え続ける彼に、同じく夢を叶え続ける、学習院大学出身、「TBSラジオ 小島慶子 キラ☆キラ」などで活躍する、小島慶子がインタビューした。

INTERVIEW.01

西坂 「学習院出身の方が活躍されていて、とてもうれしいです。妻がいつも「キラ☆キラ」を聴いてるんですよ。本も持ってます」

小島 「ありがとうございます!学習院に来たのは16年ぶりですが、やっぱりちょっと変わりましたね」

西坂 「この南7号館もそうですが、新しい校舎が建てられました。理学部に生命学科ができて、大学全体に勢いが出てきている感じです。」

小島 「そうなんですね。…(珍しい形の水槽を指さして)あれいいですね」

西坂 「そうですね。趣味で飼っています」

小島 「あ、研究と関係ないんですね(笑) 私も熱帯魚好きなんですよ。H2とかよく行きます。若い女性の方が入ってから雰囲気変わりましたよね」

西坂 「そうそう、私はもっぱらペンギンビレッジで・・・って、よく御存じですね、お詳しい(笑)」

研究室で、調べていることは?

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小島 「立派な研究室ですよね。私は95年卒業なのですが、当時は理学部ってこんな感じじゃなかった気がします」

西坂 「ここはちょうど一年前に作られました。前の歴史ある雰囲気は無くなってしまいましたが、ピカピカの新しい建物で勉強ができて、学生達はとても喜んでいるみたいです」

小島 「西坂さんの研究室では、何を調べているのですか?」

西坂 「非常に簡単に言うと、タンパク質の動きです。…タンパク質ってどういうイメージですか?」

小島 「タンパク質は確か…えーと…DNAがほどけてガッチャンコガッチャンコやってアミノ酸をつないでいくんですよね…」

西坂 「素晴らしいですね!」

小島 「私、高校までは生物好きだったんですよ(笑) 学習院の生物の先生に感謝です」

西坂 「あ、女子高等科だったんですね。私も講義に行きますけど」

小島 「林先生とか、伊藤先生とかに習ってました。本当今でも感謝しています」

西坂 「おっしゃる通り、タンパク質はアミノ酸がつながったものなのですが、最後にはきちんとした形になります。これが生物を作っている部品になるわけです。
『この部品は、もしかすると、1つ1つが精巧な装置かも知れない。それなら、1つの装置の動きをきちんと見てやろうじゃないか。』
そういうムーヴメントが15年くらい前に起こったんです」

小島 「見るって電子顕微鏡でですか?」

西坂 「よくご存じですね! その通り、だいたいの形を見るためには、電子顕微鏡を使います。でもそれだと、タンパク質を薄い膜の上に置いて乾かさないといけない。動いているところが見えないんです。だから、水の中での本当の動きを見たくなってくる。この火付け役が大阪の柳田敏雄教授で、見ようというアイデアがうねりとなり、今ではとても重要な学問分野にまで発展しました」

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何を使って研究を?

小島 「タンパク質の動きを見るのに、なぜ水の中に入れているんですか?」

西坂 「タンパク質は水の中で働くようにデザインされています。だから仕組みを知るためには、水の中での本当の動きを見ないと、間違った答えが出てしまうかも知れません。ところで、小島さんはタンパク質はどれくらいの大きさだと思いますか? 」

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小島 「うーん・・・とにかく小さい」

西坂 「うん、確かに小さい(笑)。1ミリの10万分の1くらいです。これは長さの話しで、体積だと、さらに10万分の1のまた10万分の1になります。これだけ小さいと、タンパク質にとって、水の中というのはすごく不思議な環境になります。台風の中にいるようなもので、水分子がどかどかぶつかってくる。しかしその中でもきちんと働いている。どうしてそんなことができるのか、という根本的な問いに対する答えはまだ出ていないんですね。いつかそれが解けるといいと思っています…それで、1個のタンパク質の動いている姿を見たいわけです」

小島 「見えるんですか?」

西坂 「もちろん見えません(笑) なぜ見えないのか?という理由は簡単。大きさがすごく小さいからです。このタンパク質の動きを水の中で直接とらえるのは、これまで不可能だとされてきたことだったのです」

小島 「どうやって見えるようになったのですか?」

西坂 「見えるような顕微鏡を作るのです。うちの研究室にはいろいろな技術がありますが、いちばん得意にしているのは、光学顕微鏡と呼ばれるものです。原理から考えて、設計し、世界でここだけにしかないという顕微鏡を幾つも作っています。ほとんどは特許になっていて、これまでに3つの特許を取得しています。また最近も、学生と一緒に、水中における3次元の動きを精密に測定する顕微鏡を発明しました。これは日本学術振興会(文部科学省の機関)に認められ、世界の6ヶ国に特許出願中です」

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これまでの成果は?

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小島 「3つの特許を取得しているというのは、すごいことですね。これまでの成果を簡単に教えていただけますか?」

西坂 「タンパク質の中でも『*分子モーター』と呼ばれるものに、学生の時に取り憑かれてしまい、その動きを調べてきました。これはどの細胞tの中でもある大事なタンパク質で、様々な種類があり、細胞の中で他のタンパク質を運んだり、細胞分裂に役だったりしています。筋肉の収縮も、すべてこのタンパク質によるものです。2000年頃から、F1という名前の回転分子モーターを調べ始め、たった1個のF1の中で起きる化学反応を画像化することにも成功しました。この研究で、『*日本学術振興会賞』をいただきました」

小島 「日本の若手研究者の、最高峰の賞ですね。すごいですね。このタンパク質の中で化学反応が起こるということは、わかっていなかったのですか?」

西坂 「エネルギーがないとモーターは動かないので、もちろん化学反応は起こります。ただ、どのタイミングでどういった反応が起こるとか、そういったことは想像でしか分からなかったんですね」

小島 「なんでしたっけ。なんかが出たり入ったりするんですよね…」

西坂 「もしかしたらATP?」

小島 「そうそうそう!」

西坂 「よくわかりましたね」

小島 「アデノシン三リン酸。これが二リン酸になるときエネルギーになるとか習いました」

西坂 「すごいですよ、一般の方以上の知識ですね」

小島 「学習院女子部の生物の先生に感謝です」

西坂 「そのATPを1個だけ見ながら、しかもどの角度でタンパク質についたかが分かる顕微鏡を作りました。それが私の最初の特許です」

小島 「それで3つも特許を取られたんですね。素晴らしいです」

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西坂 「出願される方はたくさんいますが、本当の特許にまで進むのは珍しいと思います。こちらが特許証です」

小島 「特許証を見るのは初めてですが、…なんかでも、発明者の名前がずいぶんと小さいですね(笑)」

西坂 「そうなんですよ(笑) 。私も小さいと思っていたところ、去年に取ったものがこれなんですが、ついに名前が大きくなりました(笑)」

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