村松康行教授が「三宅賞」(地球化学研究協会学術賞)を受賞
第32回(2004年)地球化学研究協会学術賞(三宅賞)
受賞者:村松 康行 博士(学習院大学理学部教授)
研究題目:「環境中における安定および放射性ヨウ素の地球化学的研究」
       「Geochemistry of stable and radioactive iodine in the environment」



化学科の村松康行教授は、「環境中における安定および放射性ヨウ素の地球化学的研究」の研究業績により第32回地球化学研究協会学術賞「三宅賞」を受賞されました。
地球化学研究協会は、1972年に設立された公益法人で、毎年地球化学に顕著な業績を収めた科学者1人に対し、
同賞が授与されています。
授賞式および受賞記念講演会は2004年12月4日に東京、霞ヶ関ビルにおいて行われました。

受賞の研究内容
村松康行博士は、ヨウ素の微量分析法を開発し、地殻を構成する多数の試料 (マントル物質、火成岩、堆積岩、土壌、生物等)について精度の高い分析を行い、ヨウ素の地球化学的分布について基礎的なデータを提供した。
また、わが国の房総半島の地下から大量のヨウ素が産出(世界の3割以上を生産)して いることに着目して、129Iを用いた放射能年代測定を実施し、その結果ヨウ素の平均年代は約5000万年前と古いことを見出した。
この結果は、堆積物中の海 藻から溶けだしたとする従来のヨウ素の起源説では説明できない。この結果に基づいて、博士はプレートの沈み込みに伴い前孤域にヨウ素が濃縮したとする 新説を提唱した。さらに、メタンハイドレート産出層へのヨウ素の濃縮等につ いても新しい知見を得た。博士は、微生物によるヨウ素のメチル化、酸化、濃縮の研究を行い、ヨウ素の生物地球化学的循環像の解明にも貢献している。博士はまた、従来分析が困難であった長半減期核種である129Iについて高精度で高感度な分析法を開発し、環境中における129Iの分布を明らかにした。また、放射性ヨウ素をトレーサとし、土壌―植物―大気系における室内実験を行い、ヨウ素の環境中での移行を予測するために必要なパラメータ値(分配係数、移行係数、沈着速度)を求めた。チェルノブイリ事故に際しては、わが国に飛来した131Iをいち早く測定し、放射性ヨウ素の環境挙動の解明に寄与した。以上のように博士は精密な分析に基づいて様々な角度からの研究をすすめてヨウ素の地球化学的挙動の解明に多大な貢献をした。さらに博士の研究はヨウ素にとどまらず239Pu,240Pu, 137Cs, 235U,238Uにもおよび、いずれも世界的な評価を受けている。

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