学習院大学理論物理学講演会

ベレジンスキー・コステリッツ・サウレス転移とハルデン現象:2016年ノーベル物理学賞の奇妙な背景

7 月 8 日に押川正毅さんに下記のような講演をお願いしました。
押川さんは 5 月 25 日の物性研談話会で同じ内容の講演をされています。 これが大好評だったため、是非とも東京地区でもということになり、この講演会を企画しました。
今回は物性研談話会よりも長い時間を取り、導入部を含めて物性研では話しきれなかったところまでお話ししていただく予定です。ご興味のあるみなさんは是非ご参加ください。
田崎晴明

講演者: 押川 正毅(東京大学物性研究所)

日時: 2017 年 7 月 8 日(土) 午後 4 時 〜 5 時 45 分

場所: 学習院大学南 7 号館 101 教室 (山手線目白駅から徒歩で約 3 分)
目白駅の唯一の改札を出て右に向かい横断歩道を渡れば、目の前が学習院大学の西門。 方向感覚の悪い人でも迷いません(道順はこちら

2016年のノーベル物理学賞は、「トポロジカル相転移と物質のトポロジカル相の理論的発見」に対して、サウレス、コステリッツ、ハルデンの3氏に授与された。ハルデン氏の主要な受賞業績は、量子反強磁性スピン鎖の定性的な性質はスピン量子数が半奇数か整数かによって全く異なり、整数スピンの場合には励起ギャップ(「ハルデンギャップ」)を持つという予言である。ほとんどの教科書や解説では、ハルデン氏のこの理論的発見は、量子スピン鎖の有効的な場の理論である非線形シグマ模型が持つトポロジカル項に基づいたものとされてきた。

しかし、ハルデン氏本人の回顧や、失われていた「幻の論文」の発見によって、ハルデン氏による当初の発見の経緯はそれとは大きく異なり、同時にノーベル物理学賞の授賞対象となったベレジンスキー・コステリッツ・サウレス(BKT)転移の理論と密接に関係していたことが明らかになった。

本講演では、おそらく当時としてはあまりに斬新すぎたために奇妙な運命をたどったハルデンギャップの発見の経緯とともに、その物理的内容をなるべくわかりやすく解説したい。また、ハルデンギャップの発見がその後の物理学の発展に与えた影響についても議論したい。


田崎晴明
学習院大学理学部物理学教室
田崎晴明ホームページ

hal.tasaki@gakushuin.ac.jp