1 本稿の記述は,川村義則「書評 米山正樹著『減損会計』」『會計』第160巻第6号,2001年12月,943-947ページ,万代勝信「書評 米山正樹著『減損会計 ―配分と評価―』」『企業会計』第53巻第12号,2001年12月,155ページ,石川純治「書評 米山正樹著『減損会計 ―配分と評価―』(森山書店,2001年)」『経営研究(大阪市立大学経営学会)』第53巻第2号,2002年7月,185-192ページなどの書評から多くの示唆を受けた。ここに記して感謝したい。なかでも石川[2002]からは,「論壇 減損会計と利益計算の構造」『企業会計』第53巻第11号,2001年11月,4-14ページともども,評価の手続と配分の手続との関係を再考する必要性について,重要な示唆を受けている。
2 FASB, Statement of Financial Accounting Standards No.115: Accounting for Certain Investments in Debt and Equity Securities, 1993や大蔵省企業会計審議会「金融商品に係る会計基準」1999年などを参照。
3 FASB, Statement of Financial Accounting Standards No. 143: Accounting for Asset Retirement Obligations, 2001.
4 もっとも,純粋にストック評価額のリアリティーだけを追求するために評価の手続が採用されるケースがまったくみられないのかどうかとなると,話は違ってくる。年金会計における追加最小負債の計上(SFASNo.87)や,売却可能有価証券に係る時価評価などは,期間利益をどう意味づけるのかという観点からサポートするのが難しい処理といえる。「評価の手続は常に配分の手続を補完するもの」と理解することはできないのである。この点も考慮すると,両者の関係はいっそう複雑なものとなる。
5 過去に遡って価値を見積もり直すのが技術的に困難であれば,減損発生時点の利用価値を「新たな償却ベースから導かれてくる未償却残高」のサロゲートとして用いることになろう。事実,日本の「固定資産の減損に係る会計基準」(金融庁企業会計審議会,2002年)はこのような簿価切り下げを求めている。このような処理を採用すればテクニカルな問題はたしかに解決するが,本文に記した理論的な問題は解決しない。
6 例えば井尻雄士「米国会計基準とその環境:変遷75年の二元論的考察」『季刊 会計基準』第3号,2003年9月,8-29ページを参照。
7 収益力の低下した固定資産に係る選択肢としては,その継続利用(転用・配置換えを含む)と売却処分を想定できる。継続利用か売却かは,意思決定を下そうとしている時点における利用価値と時価(売却時価)との大小比較をつうじて下される。過去に遡って見積もり直した利用価値(減損後の新たな償却ベース)が,この種の意思決定に用いられることはない。
8 大蔵省企業会計審議会「企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書第四 棚卸資産の評価について」,1962年などを参照。
9 FASB, Statement of Financial Accounting Standards No.114: Accounting by Creditors for Impairment of a Loan, 1993などを参照。
10 米山正樹「貸出金減損の開示と業績測定:基準書第114号/第118号」『金融商品をめぐる米国財務会計基準の動向 ―基準の解説と検討―(米国財務会計基準〔金融商品〕研究委員会報告下巻)』財団法人企業財務制度研究会,1995年7月,235-267ページなどを参照。