膳場百合子は,明治学院大学心理学部(非常勤講師),社会心理学。石井晋は,学習院大学経済学部,日本経済史。

    本研究は,1998年に島谷いずみ,膳場百合子,窪田亜紀子,徳永裕幸(いずれも当時,東京大学文学部社会心理学専攻)が共同で行った調査,および2000年に膳場百合子,村上史朗,片桐恵子(所属は同前)が共同で行った調査で収集したデータの一部の分析から成っている。シナリオと質問項目の作成に際し,東京大学の山口勧教授と山口ゼミの院生から貴重なコメントをいただいた。また,郵送調査の実施にあたり,島谷いずみ氏と片桐恵子氏から手法についての貴重な教示をいただいた。ここに記して感謝したい。

    本稿は,膳場がU,Vの調査分析を執筆し,膳場・石井が議論の上,T序及びW結果の要約と考察を共同で執筆した。

 

Fincham, F. D., & Jaspars, J. M. (1981) . Attribution of responsibility: From man the scientist to man as lawyer.        Advances in Experimental Social Psychology, 13, 81-138.

 

アメリカについては,Claude S. Fischer (1982) "To Dwell Among Friends: Personal Networks in Town and City", The University of Chicago Press。日本については,大谷信介(1995)『現代都市住民のパーソナル・ネットワーク』ミネルヴァ書房。近年では,このような人的ネットワークをソーシャル・キャピタル(社会関係資本)ととらえ,その機能に注目した研究が経済学,社会学,政治学分野で量産されている。1990年代後半に世界銀行のプロジェクトとして継続的に取り上げられるようになって以来,特に開発経済学分野において,ソーシャル・キャピタルの生産要素としての可能性が注目されている。これについては,佐藤寛編(2001)『援助と社会関係資本:ソーシャルキャピタル論の可能性』日本貿易振興会アジア経済研究所。また,低開発国に限らず,高所得のアメリカ合衆国においてもソーシャル・キャピタルが重要な役割を果たしてきたことを鮮やかに描いた文献として,Robert D. Putnam (2000) Bowling Alone", Simon & Schuster。本稿の文脈では,企業・組織における共同体的な人間関係が一種のソーシャル・キャピタルとして機能しており,低学歴者はその有用性を認識している度合いが高いと想定している。

 

Hamilon, V. L., & Sanders, J. (1996) . Corporate crime through citizens' eyes: Stratification and responsibility in the United States, Russia, and Japan. Law & Society Review, 30 (3) , 513-547.

 

Hamilton & Sanders (1996) は,判断者が,自分と同じような地位にある人に同一化(identify)して免責する傾向があるとの解釈も提出している。本稿では判断者の学歴による人間像や組織観の違いに着目したが,これらの人間像や組織観に加えて,判断対象者との同一化を通じて,学歴が責任判断に影響を与える可能性もある。

 

年齢の効果を統制するために,教育年数と年齢を同時に説明変数とする重回帰分析を行った。その結果,教育年数の有意な効果が見られた項目に,◎印をつけてある。

 

重回帰分析では,教育年数(何年教育を受けたか)を学歴の指標として用いた。

 

シナリオ調査とは独立に測定した自由意思についての尺度「会社勤めの人達は常に会社の方針に従って行動する」「会社勤めの人達は会社の方針によってものの考え方が簡単に変わる」はいずれも学歴による責任判断の差を有意には媒介していなかった。自由意思を測定した質問が不十分であった可能性がある。組織の要求と成員自身の意思のいずれを優先するか,という対比の構図を用いた質問で測定した方が,より明白に自由意思の信念をとらえることができたかもしれない。

 

Zemba, Y., Young, M. J, & Morris, M., W. (2003). Intuitive logics for blaming managers for organizational harms: How Japanese differ from Americans. Paper presented at the Academy of Management Conference, Seattle.

 

川崎友巳「企業犯罪論の現状と展望(一)」『同志社法學』第474号,199511月,p257-341。及び,川崎友巳「企業犯罪論の現状と展望(二)」『同志社法學』第475号,19961月,p297-391。神山敏雄「企業犯罪」『ジュリスト』No.1155, 19995月,p177-184。板倉宏「企業犯罪と組織体犯罪概念」日本大学法学部法学研究所『法学紀要』第33巻,19922月,p7-20