* 前者は学習院大学経済学部教授,後者は京都大学大学院博士後期課程学生。内容などの連絡先:〒171-8588豊島区目白1-5-1 学習院大学経済学部,TELDI):03-5992-4382Fax03-5992-1007E-mail: Kenichi.Tatsumi@gakushuin.ac.jp

 

1) 辰巳・桂山[12][13]には日本のそれらの数値を示した。

 

2) 例えば,Amihud[1]が使用した,ある月における 番目の銘柄の非流動性尺度 は, と定義される。ここで, は対象月の取引日数, 日のリターン, 日の売買代金を表す。

 

3) これが現物指数を構成する銘柄間に見られる場合現物指数が自己相関を示す原因となる。これは非同時取引問題と呼ばれる。現物指数と比較して指数先物にはこのような問題はない。

 

4) モメンタムとは,値動きの勢いを見る指標で,現在の価格から過去の価格を引くことにより求める。0との関係や,以前の反転のポイントなどを目安として,売買のシグナルとする。また,相場に先行するとの特徴もあると言われている。

 

5) 規模効果の分析については,規模を何で測るか,規模を分析する意義はあるのか,など議論するべき点がいくつかある。

前者については,企業資産,売上高,社員数,資金調達額などが候補になる。しかし,1つの大きな問題は,2000年の東証マザーズ,ナスダックジャパンの登場で新興市場にIPOする企業数が急増し,従来上場できなかった企業が多く新興市場に登場し,IPO企業の規模分布が大きくジャンプした事実をどう取り扱うか,である。

後者に関連するのは,資金調達額という変数は内生変数である問題である。資金調達額の少ないIPOは希少価値となり,初値が高くなりやすいと言われる。資金調達額に比例して売り出し株数も少なくなる傾向がある。上場後の株価が低く,出来高も少ない。しかしながら,小規模の資金調達をしたIPOは需要が低かったために,本来予定した金額を下げて,上場に踏み切った可能性が高い。

 

6) IPO銘柄については,簿価データを入手するのは一般に困難である。

 

7) この影響を小さくするための代案は10分類してその平均値の年率%リターンを使う方法であろう。

 

8) われわれの研究では,リスクを調整した計測をあえて行わなかった。それはリターン・リバーサルのメカニズムを解明する経済分析と合わせて実証するべきであるという考えからであった。しかしながら,図表3の標準偏差の相関係数値も,マイナスであるが低い値であるのは,リスクもリターン・リバーサルしており,しかもリスク以上にリターンがリバーサルしている証拠ではないかと,考えている。

同じような作業を,さらに,平均を標準偏差で割ったシャープ測度,つまりリスク調整後リターンでもおこなう必要もあろう。

さらに,これまではいわばパネルで調べたが,IPOがホットな時期とそうでない時期を何らかの基準(全期間の平均IPO件数を超えるかどうかでホットとコールドに分けるのが一つの方法である)によって月単位あるいは3ヵ月期間でわけ,これらの関係はどう変わるか調べる,などが必要かもしれない。ホット(コールド)過ぎると初値乖離率が高(低)くなり,36ヵ月パフォーマンスとの関係は明瞭でなくなる,かもしれない。

初値乖離率が高い時期の36ヵ月パフォーマンスは高いか低いかは,投資資金の移動という観点から意味がある。例えば,人気IPO銘柄を逃がした投資家が初取引日以降どう行動するかの問題である。しかしながら,実際は,BB(ブックビルディング)と流通市場の投資家の太宗はそれぞれ個人投資家と機関投資家で違うので,統一的な意思決定者という意味がどれだけ残っているかは,疑問である。

機関投資家は,IPOに参加できず,公開価格形成には実質的に係わっておらず,またJASDAQ銘柄は流動性が低いためシステム運用しづらいなどの問題点があり,保有割合は低くなっている。

ちなみに,JASDAQ上場企業のうち2003年度中に決算期を迎えた会社を対象にした2004年3月末株式分布状況調査によると,総株式数に占める個人の持ち株比率は49.9%,金額保有比率は50.7%とほぼ半数,他方金融機関(生・損保を含む)の持ち株比率は9.0%,外国人投資家についてはそれぞれ11.0%,10.3%だった。

2004年度は,個人の持ち株比率は17.2ポイント上昇の67.1%と過去最高となった。事業法人は1.6ポイント減の26.0%,外国人は7.6ポイント減の3.4%,金融機関は6.1ポイント減の2.9%といずれも減少した。