*) 学習院大学経済学部教授。内容などの連絡先:〒171-8588 豊島区目白1-5-1学習院大学経済学部,TEL(DI):03-5992-4382,Fax:03-5992-1007,E-mail:Kenichi.Tatsumi@gakushuin.ac.jp
脚注番号は辰巳(2008。45巻3号211頁以下)のそれに続けている。
5) 有益な商品情報となるコンシューマー・レポートなどが,それを可能にする。
6) 購入した製品がどういう仕組みで動くのかさえ容易に理解できない昨今の高度技術経済社会においては,製品の品質を維持し,それへの信頼性を堅持することが極めて重要になる。
キャッチフレーズ・マーケティング手法として有名な,インテル社の「インテル入ってる」,マイクロソフト社の「きょうはどこに行きたいですか?」,古くはイーストマン社の「箱の中の製品は信頼できる」という言葉は,言葉それ自体ではなく,「技術のことなど知らなくても,安心して製品を使えばよい」,というメッセージを実感してもらえるかが重要になっているのである。
7) 日本の不動産業界は,公正取引委員会の認定を受け,「公正競争規約」と呼ばれる,広告に関して一定の自主的なルールを取り決めている。物件の“デメリット”表示を広告に必ず記載しなければならないことなど具体的に定めている。また,国土交通省は2005年から三大都市圏の政令指定都市などを対象に取引価格に関する調査を実施し,06年4月17日から「不動産価格情報制度」として発表し稼働している。
8) 例えばヴァリアン(2007)pp. 638-642に解説がある。
9) 自己選択の事例は他にもいくつかある。納税者に対する青色申告控除の特典なども,この自己選択事例の一つであるという考えを聞いたことがあるが,筆者は検証された研究を読んだことはない。複数の様々な電話料金体系を用意し,利用者自らに選択させ,結果的に自己の利用動向を自主的に開示させる選択的料金制度がある。具体的には,予め指定した数カ所の通話相手先に対して,予め一定の定額料金を追加支払いすれば当該相手先への通話料金を都度割引く制度,予め定額料金を付加することでオフ・ピーク時の通話料金を割引く制度,あるいはオフ・ピーク時の区域内の特定相手先の通話については定額料金を適用する制度,等がある。ちなみに,この料金設定にはピーク・ロード・プライシングの理論も係わっているし,通信技術も大いに係わっている。
10) 日本では1999年3月に「特定融資枠契約に関する法律」が制定され,手数料を利息制限法や出資法の適用対象から除外することが認められた。2001年6月には中堅企業やSPC(特別目的会社)なども利用できるように改正がなされた。その結果,コミットメントラインを利用する企業が急増した。
11) 2008年総額2兆円の定額給付金が景気対策として提案された。定額給付金について支給対象に所得制限を設ける案が主張されたが,それを制限する方法に自己申告制度を用いる場合正直者が損をする制度になってしまいかねない。
12) 様々な仮説は拙著論文で見ることができるが,特に辰巳憲一(2006a),(2006b),辰巳憲一(2007)と辰巳憲一(2008a)を参照。
13) VCが持ち株を手離せる時期は,売出に応じた場合は公開日,あるいはその初取引日から180日経過したロックアップ終了日以降,の2つである。それゆえ,公開日から初取引日までの価格変化に注目するアンダープライシングをVCは必ずしも有効に活用できる訳ではない。
14) Bikhchandani, Hirshleifer
and Welch (1998)は群衆行動と情報カスケード理論の研究を分類しながら展望している。