1) 後述する理由により,本稿では,需要曲面より求めた需要曲線を「導出需要曲線」と呼ぶ。
2) 本稿各図の作図は,Wolfram Research Inc. (2004) に負うところが大きい。
3) ここで言う均衡需要水準は,一般均衡的需要水準(general equilibratory demand level)ではなく,所与の価格に反応して市場が見せる,部分均衡的需要水準(partial equilibratory demand level)を意味する。川嶋・他(2004、2007),野呂・川嶋・平岡(2009)、野呂・川嶋(2009)は,この需要水準を「仮想均衡水準」又は「仮想均衡需要水準」と呼んだが,本稿では改めて「均衡需要水準」と呼ぶ。
4) 厳密に言えば,「均衡需要水準に関する,正又は負の外部経済性」。この外部経済性は、「『集積』の外部経済性」(Agglomeration external economies)の範疇に属する。
5) ここで言う均衡価格水準は,「注3)で述べた意味での部分均衡的需要水準」に対応する価格水準を指す。川嶋・他(2004)は,この価格水準を「仮想価格水準」と呼んだが,本稿では改めて「均衡価格水準」と呼ぶ。
6) 厳密に言えば、「均衡価格水準に関する、正又は負の外部経済性」。川嶋・他(2004)はこの経済性を「価格効用性・不効用性」と呼んだが、本稿では改めて「均衡価格水準に関する外部経済性」と呼ぶ。なお、この外部経済性は、「『高値(たかね)』の外部経済性」(High-price external economies)とも呼び得るもので、例えば見栄や辺幅を指向する、ブランド商品又は装身具類の市場、或いは美容や健康を指向し高価格イメージの伴なう、化粧品又は稀有な生薬類の市場で発現する、外部経済性として捉えることができる。
7) Mが連続である場合,需要曲面は,「無限個数の需要曲線(一般には右下がりの需要曲線)群を覆う包絡曲面」となり、畢竟同包絡曲面は,無限個数の需要曲線それら自体が形作る曲面に他ならない。
10) この外部経済性を需要曲面の視座に拠り試みる考察は、例えばWalters(1961)による「道路の交通混雑税理論」やBuchanan(1965)による「クラブの理論」の再整理に,聊かなりと寄与し得よう。
11) M=Pの条件が満足されていない点では,均衡価格水準Mと価格水準Pの間に乖離が生じるので,この価格水準Pに対応する需要水準Nは均衡需要水準にはなり得ず,設定した仮定に対して理論的不整合が生じる。
12) 「Derived demand」の略語。なお,川嶋・他(2004)はこの曲線を「均衡需要曲線」と呼んだが,川嶋・他(2007)以降では「導出需要曲線」と改めて呼んでいる。
13) 「Gross social
benefit」の略語。
14) 二次元平面に描出されるこの需要曲線は,導出需要曲線(DD曲線)ではないことに留意されたい。
15) この需要函数は,導出需要函数DD(N)
ではないことに留意されたい。
17) 「Marginal social
benefit」の略語。
18) 純社会便益は,「総社会便益から総社会費用を減じた差」として定義される。
20) 野呂・川嶋・平岡(2009)の中で扱われている,「Nに関する外部不経済性を内含する」右上がりの価格曲線を設定して試みる考察も興味深い。しかしその際の考察が辿る本筋は,価格直線を設定した考察と基本的に大きな隔たりはない。よって右上がりの価格曲線を対象とする更なる考察は,次稿以降で改めて試みることとし,本稿では割愛する。
21) 「Marginal social
cost」の略語。
22) 「錯誤の最適課税額又は最適補助金額」の意味については,文中の下記の(2)を参照されたい。
23) はdGSBG(N)/dN=dGSC(N)/dNの条件を満足し,このときに得られる純社会便益の最大値は,線分
の長さに等しい。ここで,GSBG(N) は往路総社会便益函数を,GSC(N) は総社会費用函数を夫々表わす。
24) はdGSBG(N)/dN= dGSC(N)/dNの条件を満足し,このときに得られる純社会便益の最大値は,線分
の長さに等しい。ここで,GSBG(N)は往路総社会便益函数を,GSC(N)は総社会費用函数を夫々表わす。
25) はdGSBG(N)/dN=dGSC(N)/dNの条件を満足し,このときに得られる純社会便益の最小値は,「負の符号を伴なう」線分
の長さに等しい。
26) 即ち,「最適点が往路MSB曲線上に位置する可能性」についての議論。
27) 価格直線及び同直線を表わす価格函数は,夫々,限界社会費用直線及び限界社会費用函数に等しい。
30) 例えば,Kawashima
(1980),川嶋・他(2004,2007),野呂・川嶋・平岡(2009),及び野呂・川嶋(2009)を参照されたい。
32) 価格曲線が価格直線に転化している場合には,限界社会費用直線は価格直線に一致する。従ってこの時は,四者の間の相対的位置関係ではなく,価格直線,導出需要曲線,及び限界社会便益曲線の間の(即ち,「三者の間」の)相対的位置関係となる。
33) ここで,補助金は政府から消費者への所得移転であり、税は消費者から政府への所得移転であるので、両者とも社会全体から見るとネットの費用にも便益にも計上されない事に留意しておこう。
35) 即ち,「導出需要函数 P=f(N,N)
を得べきところを」。
36) 半円頂状の需要曲面を介して求められる,右向きに凸の需要曲線に関する初期の考察については,例えば川嶋・他(2004)を参照されたい。
37) ここでの、「限界社会便益曲線を如何にして求めるべきか」との問い掛けは、「総社会便益曲線を如何にして求めるべきか」との問い掛けに他ならない。何故ならば、限界社会便益函数は、総社会便益函数を需要水準に関して微分することにより求められるからである。
38) 本稿では,需要曲面を介して求められた需要曲線を,導出需要曲線と呼んだ。
39) 本稿では,需要曲面函数を介して求められた需要函数を,導出需要函数と呼んだ。
40) 本稿(4)〜(7)式の特定化は,2009年7月に至り漸く為し得た。
41) この視座に立つオーソドックスな最近の労作として,例えば大石(2005,特に205-259頁)を参照されたい。