* 学習院大学経済学部教授。CFD Trading and Nonlinear Time Series Analysis Impacts on Market Participants.

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特に宗石公喜氏など,本稿は日本,英国,米国における専門業者への聴き取りにも負っている。都度可能な限り引用している(しかしながら,CMにならないよう,あるいは全く別の脈絡での議論であったなどの理由で,名前はすべて公開しているわけではない)ように,専門業者のHPにも負っているので,感謝したい。

1)  証券会社(証券金融会社)は,このような不足株数には,生保や損保など金融機関から株を借りてきて調達し,売り方に回さなければならない。売り方はその不足の借り株に対して品貸料を負担しなければならない。これを逆日歩という。

2)  例えば,信用買いで未決済の約定数量「買い(かい) (たてぎょく)」が値下がりして評価損が膨らんだ場合,融資額と取引手数料の合計を委託保証金から差し引いた額が証券会社が定める最低保証金維持率を下回ると,最低保証金維持率が回復できるように追加保証金を差し入れなければならない。これを行わないと証券会社が建玉の反対売買を行い強制決済してしまう。委託保証金は現金のほかに,上場株式などで代用できるが,追証として入れた株が下げ相場で値下がりすると,さらに追証が必要となり,保有株を追加したり,売却して現金を用意して差し入れたりすることになる。「追証が追証を呼ぶ」ともいわれ,下げ相場で一層売りが加速する要因とされる。

3)  米国においては,空売りをする場合必ずアップティック(直近の売買が成立した値段より,次に売買が成立した値段が高い場合のことを指す)で実行することを定めたルール10a-1(通称アップティック・ルール)があったが,200776日に廃止された。

ちなみに,1937年に相場が急落した際の集中砲火的な売り浴びせで,意図的な相場の売り崩し(相場操縦)が実際に存在することが立証され,ルール10a-1が成立した。

4)  当業者が参加しない理由として日本では商社の影響が考えられる。商社は当業者に対して言わば仲介業者になり,コモディティ先物などのディーリングをしている。そして,大手商社などが直接ロンドンやシカゴの取引所でカバーしている。上の用語を使えば,DMAに徹している,と大手商社は説明する。

5)  その他の理由として,清算機構など取引所に係る内外の仕組みがグローバルの基準ではないことなどが,識者によって,よくあげられる。また,取引がバイパスされているという先の脚注の問題に対しては,他の取引所と同じ商品を上場するのではなく,世界的に需要がある,日本発の独自商品を上場するという方法で解決するべきである。

6)  不動産などの証券化では,倒産隔離などという言葉で安全性が宣伝され,格付け会社を含め誰もがそれを信用し安全性を確信したことだろう。その結果がサブプライム問題と金融危機,それに続く不況である。

7)  CRB17銘柄はGSCI24銘柄に含まれている。米国の17のマクロ経済ニュースとは,耐久財注文,非農家給与,住宅着工,工業生産,ISMInstitute for Supply Chain Management)指数,小売販売,消費者信頼(consumer confidence)指数,建設支出,失業率,実質GDP,個人所得,企業在庫,CPIPPIproducer price index),平均時間給与,貿易収支,先行指標指数,の公表である。

景気循環の山谷の時期については4種類(NBER Dating, Non-farm Payroll consecutive changes, Chicago FED National Activity Index, Capacity Utilization)の定義毎に計測が試みられ,統一的な結論がえられた。

8)  日経平均のアナウンスメント効果をもたらす公表情報のリストが待たれるところであるが,十分な研究がなされていないのが現実である。

9)  米国では,ネイキッド・ショート・セリング(裸の空売り)が金融危機とともに問題にされた。これは受け渡しが行われない決済不履行の空売り,つまり株を売却した後,決済日の営業日3日以内に買い手に株の引き渡しが行われない空売りである。そして,売り崩し行為を防ぐために,直近の約定価格を下回る水準での空売りを禁じる「アップティック・ルール」の再導入を含む空売り規制法案が提案されている。

10 受発注遅延・停止,などのシステム障害の原因はシステムの誤設定,接続不良などで,さらにはチェック体制の不備やマニュアルの記載漏れ,なども原因になる。

11 200910月に入り,規制に動きがあった。日本証券業協会は,102日に証券CFD取引ワーキング・グループの中間報告書を公表し,ロスカットルールの義務付けや再勧誘の禁止について,自主規制規則の制定の必要性を指摘した。今後,日本証券業協会において,自主規制規則が導入される予定である。

20091016日,金融庁は個人を相手にした証券CFD取引など有価証券店頭デリバティブ取引に証拠金規制を導入すると発表した。顧客の不測の損害や過当投機を避けるためである。証拠金の何倍まで取引できるかを示すレバレッジについて個別株は5倍以下,株価指数は10倍以下などとする。金融商品取引法の改正を受け,政令・内閣府令案(対象資産の1日の価格変動をカバーできる水準の証拠金確保を基本とし,対象資産ごとに,@個別株は想定元本の20%以上(レバレッッジ5倍以下),A株価指数は同10%以上(同10倍以下),B債券は同2%以上(同50倍以下)――の証拠金の預託を受けずに業者が取引するのを禁止する。)を公表した。1カ月意見を募集し,公布し,それから概ね1年後に施行される予定である。